
手話ができなくても大丈夫、スタバのサイニングストア。
生まれて初めて「スターバックス コーヒー」に行った日のこと、覚えていますか? 都会育ちの方ならば、意識のないうちから出入りし、なんならもうスタバがホーム、みたいな人もいらっしゃるんじゃないかとお察しいたします。
私は覚えています。上京ほやほやの18歳の春、大学で新しく出来た友達から、スタバの作法を手取り足取り教わったスタバデビューの日のことを。どの教授の授業より実践的で役に立つ内容でした。
そんな私もいまや我が物顔でカフェラテをすすり、海外でもあの緑のマークを見かけるとちょっとホッとする、そんなコナレタ自分に驚きつつ、先日、初心を思い出す経験をしました。久しぶりにどきどきワクワクしながらスタバに入ったのです。
訪れたのは、2020年6月JR国立駅にオープンした、スターバックス コーヒー nonowa 国立店。日本で唯一の「サイニングストア」です。
サイニングとは、手話で会話することを意味します。ここは、手話を共通言語とする店舗。働いているのは、聴覚に障がいのあるパートナー(従業員)が中心です。国立駅の近くにはろう学校もあり、バスに乗っていると手話で話す子どもたちもたくさんいて、比較的、日常に手話が溶け込んでいる街のように感じます。そんな理由もあって国立への出店が決まったそう。
いざ、店内へ。事前にニュースの記事を読んでいたので、「注文は指差しや筆談でよくて、手話ができなくても大丈夫」と知ってはいたものの、列に並ぶとちょっと緊張します。しかも、こっちは顔半分をマスクで覆っているし……。ちゃんと伝わるだろうか、無愛想に見えないだろうか、と余計な心配までしたりして、まるで18の私みたいに初々しい気持ちです。
そんな自分に酔っているとすぐに順番が回ってきました。
注文の手順は、他の店舗となんら変わらず、レジに置いてある指差しシートを使って丁寧かつ的確に誘導してくれます。あの(ノスタルジックな)心配はなんだったのか!
自分が何を伝えればいいか、目に見えて分かるこの仕組みに、なんならこっちの方がミスコミュニケーションを防げそう、と膝を打ちました。それに、スタバに馴染みのない、例えば高齢の方も使いやすいかも。誰もが暮らしやすい社会って、こういうところから始まるのでしょうね。
店内には、手話の世界観に触れられるアートの展示や、簡単な手話を教えてくれるデジタルサイネージも。
国立には魅力的な喫茶店やカフェがたくさんあるけれど、この「日本で一番静かなスタバ」で手話を覚えるカフェタイムも捨てがたい!と思った土曜日の朝でした。(シオニー)
東京都国立市北1-14-1 nonowa国立
tel:042-505-9223
営)7時~22時
不定休
ARCHIVE
MONTHLY