Editor's Blog

青森の現代美術がすごい。<十和田編>

2022年となりましたね。年始は久しぶりに帰郷できた編集MIです。本年もフィガロジャポンをよろしくお願いいたします。

コロナも収束せずなかなか日常が戻ってきませんが、一時期落ち着いていた昨年12月に訪ねた青森の美術館が素晴らしい内容だったので、ご紹介します。
みなさん、青森へは行ったことはありますか? 青森にはなんと、現代アートを取り扱う美術館が5館も存在するのです。こんな県はほかにはありません。今回、十和田市現代美術館、弘前れんが倉庫美術館の2館を訪れたのですが、それぞれ特徴があり、充実の展示内容でした。

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十和田市現代美術館。訪れた日は快晴で、ぽかぽか陽気でした。左の作品はチェ・ジョンファの『フラワー・ホース』、壁面にはポール・モリソンの『オクリア』。

まずは十和田から。
大きなニュースとしては、2021年12月にレアンドロ・エルリッヒの作品が常設され、新たな展示室が増設されたこと。レアンドロ・エルリッヒは、ブエノスアイレスとモンテビデオを拠点に活動するアーティスト。弊誌でも以前、彼が新潟を訪れた際に取材をしています。日常にあるあたりまえのことに対してまた新たな視点をくれる彼の作品は、観ている私たちを楽しく巻き込んでくれます。

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レアンドロ・エルリッヒ『建物―ブエノスアイレス』

今回設置された作品は、『建物―ブエノスアイレス』。建物の壁面に人がぶら下がっていたりするユニークな光景を、みなさんも目にしたことがあるのではないでしょうか。2017年に森美術館で開催された『レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル』でも『建物』シリーズが展示されていましたね。この『建物』シリーズが常設展示されるのは世界初なのだそう。十和田、すごいです。私も当日、もちろん作品の窓にぶら下がってきました。やっぱり楽しい、インスタレーションです。

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塩田千春『水の記憶』

話題はまだあります。塩田千春の作品が、21年4月から常設作品となっています。塩田は遠隔で十和田という街をリサーチし、その目線は十和田湖へと着地。十和田湖にあった古い木製の船を使用し、10日間かけて、水のようなモヤのようなイメージで糸を編んでいったそうです。そう言われると、床に落ちる糸の影がまるで水面のようなモヤのような、ミステリアスな雰囲気。

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壁や床に落ちる影も美しい。

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まだまだ話題は続きます。あの名和晃平の“鹿”の作品も、23年9月までの期間限定で寄託展示されています。球体を覗き込んで見ると、また違う世界が広がります。

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名和晃平『PixCell-Deer#52』

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別世界が広がります。

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訪れた日は『インター+プレイ』展 第2 期が開催中で(1月10日に終了。22日から第3期が開催)、トマス・サラセーノの作品が展示されていました。トマス・サラセーノは、生物にとって生きるためになくてはならない物質である空気や人間以外の生き物の生態系など、身の回りの環境をさまざまな方法で体感できる作品やプロジェクトを展開。なかでも特に印象に残った作品がこちら。

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トマス・サラセーノ『混成 単独に半社会的に SAO 80113:セネガルジョロウグモの独唱 – 2週間、オワレスズミグモの六重唱 – 1週間、90度回転

セネガルジョロウグモ、オワレスズミグモという二種のクモの巣が重なりあったこの作品は、それぞれがつくるクモの巣が幻想的な姿を描き出しています。ミズグモに関しては映像作品『大気の海の底に棲む』も展示され、水中に生きるその珍しい暮らしぶりが映し出されていて見入ってしまいました。

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常設作品でいちばんお気に入りだったのは、こちら。

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栗林隆『ザンプランド』

栗林隆は境界線を軸に、日常に異空間を出現させ驚きの世界を私たちに見せてくれます。頭も心も身体もすべてを揺さぶってくれるその作品は、私たちに遥かなる想像力の素晴らしさを実感させてくれます。
この作品、アザラシが天井裏に頭を突っ込んでいますが……真似して私たちも
テーブルの上に上がり、椅子に立ち天井裏を覗き込むと……(まだ観たことがなくてこれから十和田へ行く予定がある人は、この先は観ないほうがいいかもしれません)

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湖、森、空が広がっています。

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霧が立ち込める植物の世界。

天井裏に広がる異世界に引き込まれて、ずっと見入ってしまいました。1時間くらい軽く観てられます、私は。

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ほかにも常設作品が所々に点在し、見所がたくさん。

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か、かわいい……。山極満博『あっちとこっちとそっち/ぼくはきみになれない

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おなじみの巨大な作品。ロン・ミュエク『スタンディング・ウーマン』

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マリール・ノイデッカー『闇というもの』

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カフェのスペース。マイケル・リン『無題』

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美術館の前庭に、鈴木康広『はじまりの果実』。こちらはArts Towada十周年記念『インター+プレイ』展の展示作品。

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館の壁面にはこちら。ラファエル・ローゼンタール『RR Haiku 061』

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館内の階段も、こんなふうに作品が描かれています。ぜひ階段を上って移動するのをお勧めします。フェデリコ・エレーロ『ウォール・ペインティング』

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屋上へ上がると壮観! フェデリコ・エレーロ『ミラー 』

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屋上から美術館を見下ろすと……。奈良美智『夜露死苦ガール2012』

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カフェのカレーもおいしいです。

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ソフトクリームも!

こぢんまりとした印象の展示室がいくつも連なるつくりでそれぞれの展示作品の世界にどっぷりと浸れ、館内いたるところのさまざまな展示方法やあしらいにわくわくさせられる……個人的にはとても見やすく楽しめる美術館でした。屋外にも作品があるので街を歩きながら楽しんでみてください。
次回は弘前編をお届けします。

十和田市現代美術館
青森県十和田市西2番町10-9
tel: 0176-20-1127
開)9:00〜17:00
休)月(祝日の場合はその翌日)
入場料:一般¥1,800(企画展閉場時¥1,000)
https://towadaartcenter.com

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