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映画『バービー』に隠された3つの秘密とは?

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誰もが憧れるバービー。リアルワールド(人間世界)に降り着いたバービーとケンは、さまざまなジレンマを感じる。

ファッションドールとして世界中で知られる、バービー人形。その完璧なプロポーションでどんなファッションも着こなし、「You Can Be Anything(なりたい自分になれる)」をテーマに、性別や人種を超えてたくさんの人に希望と影響を与えてきた。そのバービーを主役にした映画『バービー』が日本でもついに公開された。

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写真上: オールホワイトのスーツで登場したグレタ・ガーヴィグ監督。写真下: 吹き替えを務めた高畑充希は、一見着物のように見えるドレスにシルバーのヒールを合わせて。

先日、都内で行われたジャパンプレミアには、監督のグレタ・ガーヴィグとプロデューサーのデイビッド・ヘイマン、そして主役バービーの日本語吹き替えを担当した高畑充希が登壇。グレタ監督は「日本の映画や文化が大好きで、今回の来日を楽しみにしていました。日本を紐解くには膨大な時間がかかりそうです。また来日したいと思っています」、プロデューサーのヘイマンは「この映画はひとつのテーマだけではなく、色々な意味が込められた作品になっています」と語り、グレタ監督の大ファンだと言う高畑充希は「この作品に参加できてとても光栄です。ユーモアが散りばめられていて、笑いながら収録しました」と話した。

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マーゴット・ロビー演じるバービーとライアン・ゴズリングのケンのパーフェクトなキャスティング。街中が真っピンクの完璧に見える世界、バービーランドを舞台に繰り広げられる本作に隠された秘密とは?  グレタ・ガーウィグを崇拝する、編集RFが映画の魅力に迫る。

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ハッピーでカラフルな世界から、色味がないリアルワールドに到着して、バービーは何か異変を感じる。この映画のテーマが明らかになるシーンであり、映画の世界に吸い込まれた人もきっと多いはずだ。しかし、映画の魅力はこれだけではない。要所に込められたメッセージを読み取っていこう。

アメリカ・フェレーラが導く、声を上げるということ。

中盤の山場となる、人間グロリア役を演じたアメリカ・フェレーラのスピーチはロサンゼルス・タイムズに全文が掲載されたことでも話題を呼んだが、この長台詞はこれまでの彼女の人生も交えた内容だった。
アメリカ・フェレーラは、ホンジュラス人の移民の両親のもと、6人兄弟の末っ子としてカリフォルニア州ロサンゼルスに生まれる。2002年にテレビに初出演し、2006年には人気ドラマ『アグリー・ベティ』の主役に大抜擢され、この作品でゴールデングローブ賞とエミー賞の主演女優賞を受賞。世界的な女優になる。と、一見シンデレラストーリーのようだが、人種への偏見が残ると言われるハリウッドで掴み取った成功は、決して簡単な道のりではなかった。

TED Talksに登壇したアメリカは、「15才のころからオーディションを受けはじめて、主催者はいつも私に、肌が黒すぎる、太りすぎてる、貧しすぎる、野暮ったすぎるとコメントしたわ。現実世界では、私のような外見の人が多いのに。彼らが思い描くハリウッドの女優たちは現実的ではなかった」映画というメディアを通して、理想の世界を描き、そして外見だけで判断されるこのシステムを変えたかったという。「私たちひとり一人が、基本的な価値観や信念に疑問を抱く勇気を持ったとき変化が起こる。だからこそ、私たちはいつもベストな選択ができるように慎重に行動して欲しいわ」
そして彼女は、長年の活動家でもある。ウィメンズ・マーチ、DNC(民主党全国委員会)、抗議デモ“命のための行進”などの大きなイベントで演説し、18年にセクハラの撲滅を訴える運動“Time's Up”にも参画するアメリカ。その彼女が伝えるメッセージは決して女性だけに向けられたものではない。日本人の私たちが聞くと少し非現実的なところもあるかもしれないが、このモノローグは、全ての人類に問いかける内容だった。ストーリーはグロリアの言葉によって変革が起きる。それは、声をあげることで何かが変わるかもしれないということを私たちに伝えているようだった。

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ヒューマニズムを伝える、グレタ・ガーウィグ監督作品のモノローグシーン。

本作は、主演兼プロデューサーを務めたマーゴット・ロビーがグレタ・ガーウィグにラブコールを送り、最強タッグが実現した。グレタは、女優としてキャリアをスタートさせ、早くからその才能を開花させてきた。いまのパートナー、ノア・バームバックと2012年にともに挑んだ『フランシス・ハ』から脚本に携わり、19年『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で第92回アカデミー賞6ノミネートされるなどで注目を集め、キャリアを積んできた。先述した通り、本作ではグロリアの圧巻のスピーチがとても印象的だったが、グレタ監督の作品には、必ずスピーチのシーンがある。ここでは名シーンをプレイバックしてみようと思う。

『フランシス・ハ』(2012年)では、主役のフランシスが恋人(人)との理想の関係、そして人生について話すこのシーンは、個人的にもかなり心に響いた。もはや魂レベル(?)の関係を語るフランシスが想い描く人間関係をぜひ観て欲しい。

母と娘の関係を描いた『レディ・バード』(2017年)は、自称レディ・バードと名乗る、高校生のクリスティーン。喧嘩別れをした母親へ、何かを成し遂げるために向かったニューヨークから電話をかけるシーン。母への感謝と故郷の想いは、思春期真っ盛りのクリティーンの性格を鑑みると、逆に留守番電話だから伝えられたのではと思う。

名作「若草物語」をリメイクした『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019年)は、幼少期からずっと仲良く過ごしていた姉妹たちが離れ離れになり、実家に唯一残されたジョーの心境を語ったものだ。このシーンは、『フランシス・ハ』の全体の内容を詰め込んだようで、ひとりの少女が女性へと成長していく瞬間が描かれている。

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ビリー・アイリッシュが『What was i made for? 』に込めた想い。

物語の終盤とエンドロールに流れる、ビリー・アイリッシュが映画『バービー』のために書いた『What was i made for? 』。彼女は、その制作過程を下記のように語っている。

「1月にグレタが私とフィニアス(ビリーの兄)に未完成の映画のシーンをいくつか観せてくれた。私たちはどんな映画なのか全く想定していなかったんだけど、とっても感動したの。それで次の日に書き始めてこの映画がどれだけ素晴らしかったのか、という話がやめられなくて、その夜に書き上げたわ。本音をいうと、私にとって本当に必要なときに、書けた曲だった。だから、これを作れたことにとても感謝しているわ」今回、MVのディレクションも務めたビリーは、「このビデオをみてると自分も泣けるの。みんなも同じ気持ちだと嬉しい。これ以上言うことはないわ。これを観たら伝わると思うから」
エンドロールで使用されたこの楽曲は、暖かなバラードと圧倒的な歌詞の存在感で、映画『バービー』を優しく包み込んでいるようだった。世界中で名の知れたビリーとバービーだけが分かり合える彼女たちの痛みなのかもしれない。

Apple Musicで語ったビリーの想い。こちらのインタビュー動画もぜひ観て欲しい。

 

女性としての喜び、そして生きる喜び。

230818-barbie-002.jpgSNSで話題になっているマーガレット・ロビーとライアン・ゴズリングのダンスの練習風景。完璧なダンスシーンを観ていると、私ならば永遠にこの世界で生きる選択をするのになと現実逃避してしまう。

バービーランドと人間世界を真逆に描くことで、当事者意識を感じさせ、多くの人が自分事として捉えることができる本作。女性たちの団結を示す、シスターフッドを描き、何にでもなれることを応援するが、ただのキャリア映画に終わらないのがこの作品の素晴らしさだと思う。終盤、バービーを誕生させたマテル社の創業者ルース・ハンドラーから“本当の”命を与えられ人間世界に引っ越したバービー。スーツを着て緊張したその様子は、ジョブインタビューに向かうように見えたが、到着したのは婦人科だった。自信のあるその笑顔は、女性であること、そして母になることへの喜びを感じた。ポップで可愛い視覚に隠されたメッセージを感じ取ってもらえたらと思う。

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『バービー』
●監督・脚本/グレタ・ガーウィグ ●脚本/ノア・バームバック ●出演/マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、シム・リウ、デュア・リパ、ヘレン・ミレンほか ●114分 配給/ワーナー・ブラザース映画. ●8月11日(金)から全国で公開中。
https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/
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