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かきものに耳を傾けて。

写真家・阿部裕介が記した、45日間のインドネパール旅行記。

華恵です。人の話を聞くのが大好きです。
ブログでは、毎回、ゲストにとって大切な「かきもの」の話を聞いてご紹介していきたいと思っています。

「かきもの」。 それは日記やメモ帳などの自分で書いたもの、 あるいは誰かの書いた小説や詩集、図鑑、サインボール、場合によっては聖書かもしれません。 また、「書きもの」に限らず、地図や絵のような「描きもの」も出てきます。

今回は、4月23日に「渋谷のラジオ」で放送した、写真家・阿部裕介さんの「かきもの」に耳を傾けます。

*****

インド、ネパールをはじめとして、世界各国を旅している阿部裕介さん。
私は昨年、友人の紹介を通して知り合い、周りにならって「阿部ちゃん」と呼んでいる。

4月半ば。45日間の、インドとネパールの旅から帰国したばかりの阿部ちゃんは、ネパールのランタン谷で20日間ほど、トレッキングをしたと言う。その際、お風呂は川かウェットティッシュ。もしくは、ガスでお湯を沸かして、タオルに水を含ませて拭くこともあったそうだ。

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阿部ちゃんにとっての大切な「かきもの」は、「iPhone」。

旅をしている時に感じたことをメモすると言うので、今回の旅先でのメモを聞くと、
「すごいくだらないことだよ。
3月10日。何もやることがなく、17時47分、頭を洗い、洗濯物をして、トマトヌードルを食べて、寝た。
3月11日。9時30分バンブーカラマホテルを出発する。竹のように伸びる木の葉が風に吹かれ、素敵な音がする。さらさらさら、さらさらさら、春を感じた。」
とのこと。

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飾っていない、本当に素のメモだ。

日本に帰ってからでは思い出せないことをその場で書いておくのだそうだ。
「美化しないし、後々エッセイに寄稿する時もやりやすいの」と阿部ちゃんは言う。

「美化しない」
その言葉が強く響いた。
なぜか、後ろめたさのようなものも感じた。

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将来に対する想いも書いていると言うので、内容を聞くと、
「今回の旅の最後に訪ねたネパールのニムディ村には、2016年から通っていて、今年で3回目の訪問。かつて、カムラリという少女強制労働の風習があったところなんだけど……」と阿部ちゃんは語り出した。

一本道が何キロも続いていて、両サイドにはライ麦畑が広がっている。牛のフンと藁と泥で作った家がぽつぽつと点在し、そこにニムディの人たちは暮らしている。昼間の暑い時はゆっくりと過ごし、日が暮れてきてから麦を刈る。そんな生活だそうだ。
そのニムディで、阿部ちゃんはある女の子に出会った。

その女の子はスカーフをかぶっていた。舗装されていない道路の砂埃が激しいから、目や口に砂塵が入らないように顔も全部覆っているのだろう。しかし、なにやら布をかぶってうつむいているようにも見える……。
近づいてみると、彼女はそのスカーフの中で、スマートフォンからボーイフレンドにメッセージを送っていた。

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「これって、日本の渋谷でスマホをいじっている若い人と、やってることが大して変わらないなって。日本からすごく遠いところなのに……。次の写真展は絶対これをやろうと思った」と阿部ちゃんは言った。

行ったことのない、遠い土地の話を聞いていると、自分とは関係のない世界だと思いがちだ。でも、異世界に自分の日常と似た行為を目撃したら……
地続きだということを感じる。それでいて、こんなにも違う、という面も際立ちそうだ。そうやって、違うモノや人への興味が始まるのかもしれない。話を聞いていて、私はそう思った。

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「僕らがこうやって話している時も、ネパールでいま、あの子どもたちは、麦を刈ったりして、生活してるんだっていうように……こう、軸を3個、4個、いろんなところにおいて生活してみると、一瞬一瞬を大切にできるかもしれないと思って」

遠くに、帰る場所がある旅人の言葉だ。

阿部ちゃんはいつにも増して、迷いなく、力強く話していた。
彼の話にはいつも説得力がある。それは、体験に基づいたことを、正直に話しているからだろう。

阿部ちゃんと話すといつも、姿勢を正したくなる。
彼にはごまかしや嘘が見透かされそうな気がする。

「美化しない」。
阿部ちゃんらしくて、この日、私の中にいちばん残った言葉だ。

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Yusuke Abe
1989年生まれ。東京出身。青山学院大学卒業。大学3年春、パリで当時メゾン マルタン マルジェラのデザイナ−Toyoshima Keiに出会い、カメラマンになることを勧められ活動を始める。その後、ヨーロッパ、アフリカ、欧米、アジア諸国を行き来しながら写真を撮り、14年3月に大学を卒業後、フリーランスとして活動を始める。15年、YARDに所属。
Instagram:@abe_yusuke

華恵

エッセイスト/ラジオパーソナリティ
アメリカで生まれ、6歳より日本に住む。10歳よりファッション誌でモデル活動を始め、小学6年生の時にエッセイ『小学生日記』を出版。現在はテレビやラジオ、雑誌などさまざまなジャンルで活躍中。
Instagram:@hanaechap
Twitter:@hanae0428

  
 

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