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かきものに耳を傾けて。

幸せなオーラに包まれる、刺繍作家の小菅くみの世界。

くみちゃんとは、都内のイタリアンバーで知り合った。その後もお店でときどき顔を合わせ、SNSでも繋がり、彼女が刺繍作家をしていることを知った。

その作品は、頭や肩に猫をのせたYMOの3人や、猫を抱いているデヴィッド・ボウイなど。刺繍でここまで似せることができるのかと驚きながらも、その力の抜けたシュールな感じがすごく気になった。

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小菅くみさんのインスタグラムより

猫との出会いは、中学生の頃。当時高校生だったお兄ちゃんが2匹拾ってきたの。その猫は、すごく長生きしたな。いまでも飼ってるよ。動物病院で貰い手なかった猫を、2匹。

 

お母さんは、中学の家庭科の先生。手芸を一から教えてくれるわけではなかったけれど、ミシンなどの道具は家にあったそう。そのため、くみちゃん自身も小さい頃からよくマスコットを作ったり、図鑑を見て鳥の刺繍をしたりしていたという。それを仕事にしようと思ったのは、いつなのだろう。

最初は仕事にしようなんてちっとも思ってなかったけど、20歳くらいの時に膠原病になって入院しなきゃいけなくて。ベッドの上でちまちま作っていたものが大量になったから、それを友達にあげたりしていたの。そうしたら、友達が「これちゃんと作品として売ったらいいよ」って言ってくれて。いろいろお膳立てしてくれて、それで買ってくれる人ができて、いまに繫がっています

 

そうそう、くみちゃんのインスタグラムを見ていると、音楽関係者やクリエイター、モデルなどに囲まれて楽しそうに過ごしている様子が伺える。その写真がいつも、とてもいいのだ。仲の良さをひけらかしているわけではない、嫌みも一切ない、家族のような温かさにあふれている。

くみちゃんの大切なかきもの、ひとつ目は「図案」だ。

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クリアファイルに入っているのは、鉛筆で描かれたリアルなスケッチ。図案というより、まるでデッサンのよう。毛並みを丁寧に描いているのは、糸で毛並みを表す刺繍作品とよく似ている。

誰かのペットを刺繍する時は、真正面と横、3枚くらい写真を送ってもらうの。毛の流れがわからないと縫えないし、その子の目がきついとか、優しいとか、作る時に大切にしたくて。
あとは、似てないと心配だから、性格とか出会いも聞いたりする。刺繍に影響する気がしているし……単純に知りたいっていうのもある

 

実在するペットそのものを作っている感覚なのだろうか。目的や大義名分はいらない。くみちゃんは、とにかく猫愛が強い人なのだ。

他にも大切なかきものがあった。「新猫種大図鑑」だ。

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くみちゃんが新猫種大図鑑をパラパラとめくっていた時、ちょっと止めて!と言ってしまった。セルカークックスという、とんでもなく毛がくるんくるんしている猫に目が惹きつけられた。絨毯に目と鼻がついているみたい。

こんな猫初めて見た、と私が興奮していたら、「これ、ネットならいっぱい写真が出てくるんだろうけど、図鑑がよくて。図鑑って、持ってると誇らしい気持ちになるし、なんか好きなんだよね」とくみちゃんは言った。小学校の図書室にあったサイズの図鑑だね。ずしっとくる。これは楽しい。

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キャッキャしながら図鑑を見ていて、ふと思った。 なんだか、くみちゃんって趣味と仕事が気楽に合わさっているようだ。

趣味と仕事はめちゃめちゃ混同しているけど、元々縫うことが好きだから続けられているし、多分、仕事がなくなったとしても縫ってるんじゃないかな。友達とお茶してても、手は縫ってたりするくらい。
好きなことが仕事になっていることはありがたいなぁって思うよ。締め切りにはよく追われるけど、締め切りがないといつまでもダラダラしちゃうからね(笑)

 

この仕事がなくなったとしても、この作業をしていると思う。そう言えるものに出会っている人は、周りの人にも幸せを振りまいてくれる。 考えてみたら、くみちゃんって「仕事で忙しいです!」と言っているイメージがない。もし言っていたとしても、その時も周りに人がいて、くみちゃんは笑っていそうだ。

「そうだね(笑) なんか、人に会っちゃうんだよね、忙しい時でも」 くみちゃんはそう笑った。私のイメージ、あながち間違っていないらしい。

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最後に、いちばん聞きたかったことを聞いてみた。どうしてそんなに、楽しそうなオーラを出せるのか。ほっこりオーラ、というか、幸せオーラというか……。ひがむつもりはないが、どうしても、素直にハッピーさを出すことに私は抵抗がある。

ハナエちゃんの本も読んだけど、ハナエちゃんも幸せなこと、書いてない?

 

くみちゃん、まさかの返し。私の本を読んでくれていたなんて、初めて知った。それをひけらかさないところにぐっときた。私は、書けることを書いているだけ。書けないような、情けないことや恥ずかしいこともいっぱいあるよ、と照れながら言った。

私もそうだよ。やっぱり、病気したからかな。毎日幸せに暮らしたいし、めっちゃ長生きしたいって思うもん

 

恐れ入りました、と頭を下げたくなった。くみちゃんは、本当にピュアな「感謝」であふれている。そして、人を丁寧に見つめている。そりゃ、みんな彼女の周りに集まってくるわけだ。

小菅くみ Kumi Kosuge
1982年生まれ。刺繍作家。
刺繍ブランド「EHEHE」の刺繍を中心とした作品を製作。ほぼ日刊イトイ新聞の“感じるジャム”シリーズでは、ジャムのレシピ製作を担当している。

華恵

エッセイスト/ラジオパーソナリティ
アメリカで生まれ、6歳より日本に住む。10歳よりファッション誌でモデル活動を始め、小学6年生の時にエッセイ『小学生日記』を出版。現在はテレビやラジオ、雑誌などさまざまなジャンルで活躍中。
Instagram:@hanaechap
Twitter:@hanae0428

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