かきものに耳を傾けて。

エンタメの裏に潜む、サムギョプサル和田の信念。

「おはこんばんちーん! あやまんJAPANのサムギョプサル和田です。はい、ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー!」

 

ラジオの第一声から明るい空気を作ってくれたのは、あやまんJAPANのサムギョプサル和田さんだ。
あやまんJAPANの主要メンバーは現在、あやまん監督、サムギョプサル和田さん、そしてたまたまこさん。

他にもユースメンバーが全国にいる。その数は50人、いや3万人いるとも言われている(サムギョプサル和田さん談)。グループ名に聞き覚えがなくとも、「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」という曲を聴いたことがある人は多いだろう。

 

 

現在あやまんJAPANは、全国各地の宴会や新年会、結婚式などを盛り上げる活動をしている。クラブやライブでステージパフォーマンスも行っており、最近はYouTuberとしても活動中。

盛り上がる場といえば……近年セクハラ問題がシビアになっている世の中。あやまんJAPANのメンバーともなれば、やはり大変な場面は多いのではないだろうか。

んー、基本、問題ないですよ

 

本当かな……和田さんの答えを信じきれずにいると、彼女は付け加えた。

あやまんJAPANは全員フォワードと呼ばれていて、守りがいなくて全員攻めなんです。わたしたちに攻められすぎて、みんなたじたじになっちゃう、みたいな。
そうやって乗り越えてきました。攻めが、最大の防御のようなところがあるかもしれないですね

なるほど。わたしは深々と頷いた。

わたしの友人にも気の強い女子は多いが、だからといって、そういう人たちが乙女じゃないわけでは、もちろんない。
強くあろうとするから、アグレッシブな性格を演じている子は多い。

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サムギョプサル和田さんとの出会いは、ラジオ番組に出ていただく1ヶ月ほど前。恵比寿BATICAのイベント「ひつじTOKYO」で、彼女はDJをしていた。

お客さんたちは大いに笑い、楽しんでいた。そして彼女は自分の出番が終わると、他のアーティストのステージもフロアから盛り上げていた。惜しみなく周りに元気を与える彼女に、わたしは話を聞きたくなった。

サムギョプサル和田さんがあやまんJAPANに入ったのは、とある六本木のパーティへ行ったことがきっかけだったと言う。その場にほとんど友達はおらず、少し酔ってBIGBANGをノリノリで歌っていたら、そこへあやまん監督が来ていた。

突然メールアドレスを聞かれて、「明日暇?」って言われて。わたしその時、ちょうどフリーターだったんですよ。全然時間はあったので、次の日に会いに行きました

 

その時、あやまんJAPANのことは知っていたのだろうか。

もちろん知ってました。わたしが大学生の時に超絶ブームを迎えていたので。
ただ、尊敬しながらも、あやまんJAPANなんかに負けないしって思って大学4年間を過ごしてきました。そのあやまんに会うことになって、やっぱ、めちゃ感動しましたね。そこに入れるってなった時も、これが大学のとき負けないって気持ちでいた相手だわって

 

そんな和田さんの大切なかきものは、「寄せ書き」だった。

まず、高校時代に所属していた軽音学部の後輩たちからの寄せ書き。

楽器ができなくてボーカルをやってました。わたしがDJでかける曲は、Underworldとか、その頃から好きな曲です

 

きっと後輩に慕われる元気で楽しい先輩だっただろう。

大学の頃は、ダンス部に入ってヒップホップをやっていて。その後輩たちからもらった寄せ書きもやっぱり好きで。たまに見るんですよね

 

やはり、前に、前に、立っている。クラスのヒエラルキー的には高いところにいそうだ。いいな。眩しく感じた。

寄せ書きが、色紙ではなくアルバムになっているものもあった。それを抱えて、和田さんは話し出した。

わたし、婚約してたんですよ。もう5年前。それこそ、あやまんJAPANに入る前ですね。会社を寿退社して、名古屋に嫁ごうと思っていたんです

 

そんな時、あやまん監督に出会った。名古屋にいた彼に、「面接に受かったらあやまんJAPANのメンバーになる」と伝えたら、応援できないと言われたそうだ。

わたしはあえて聞いた。なぜ彼は、あやまんJAPANは応援できないと言ったのか。

いやーなんか、世間体が気になるって言われて

 

苦笑いを浮かべ、言葉を選びながら和田さんは言う。

3、4年くらい付き合ってた人で、わたしの人となりは知ってたはずなんで、それも受け入れてくれるかなと思ってたんです。だけど、やっぱりそこはちょっと違ったみたいで。別れることになりました

 

そのとき、和田さんは彼を説得しに名古屋まで行ったりしたのだろうか。

いや、そのときにパッと冷めちゃったんですよ。あやまんJAPANのメンバーであるわたしも受け入れてくれるような人じゃないと、うまくいかないんじゃないかと思って

 

なるほど、気持ちの中で何かがはっきりしてしまったのだろう。

それからはもう、あやまんジャパンに身を捧げる形になっちゃっいました。アッハッハ!

 

和田さんはそう言って笑う。そして、彼女は胸に抱えていた寄せ書きのアルバムをわたしに開いて見せた。会社に勤めていたとき、寿退社をするからと、もらった寄せ書きだそうだ。

開くと、「いい奥さんになってね」、「結婚同期として、頑張っていこうな」、「寿退社なら仕方がないね。幸せになってね」などといったメッセージが並ぶ。

この時の人たちは、もちろん結婚するからやめたと思ってるんで、いまね、何を思っていらっしゃるのかなって思うんですよね

 

見返して辛くならないのだろうか。

仕事できついときとか、まぁそんなにないけど、これ見返して頑張ろうってなりますね。もう一回踏ん張ろうって

 

意外な言葉だった。

いや、これがね、意外とバネになって。でも、次の人と結婚したら捨てます! なーんて、うそうそ(笑)

 

わぁ、強さだ。バネとなる大切なかきもの。

たしかに、寄せ書きをくれた人たちに恥じぬようにしなければならない、と思わせられそうだ。逃げたい時には、きっといちばん避けたいかきもの。それでいて、頑張っている時には胸を張って向きあえるかきものに感じる。

これが古い歴史にならずに、いつまでもみなさんに紹介できるものとして残っていることがうれしいです

 

あやまんJAPANの現在を見てくれ。和田さんのそういう思いを感じたような気がした。

あと、まだ結婚していないので

 

と和田さんは付け加えた。
あれ? あやまんJAPANは、結婚は自由なんですか?と聞くと、

全然OKです。フリーセックスなんで!

 

彼女は豪快に笑った。この人、本当に笑顔と笑いが似合うし、気持ちいい。

サムギョプサル和田(あやまんJAPAN)
製薬会社営業を脱サラし、婚約破棄を乗り越えて現在はグループのおっぱい担当、プロパリピ、DJ、Youtuberなどで活躍中。

華恵

エッセイスト/ラジオパーソナリティ

アメリカで生まれ、6歳より日本に住む。10歳よりファッション誌でモデル活動を始め、小学6年生の時にエッセイ『小学生日記』を出版。現在はテレビやラジオ、雑誌などさまざまなジャンルで活躍中。

Instagram:@hanaechap

Twitter:@hanae0428

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