栗山愛以の勝手にファッション談義。

ファッションから観る、韓国ドラマ「愛の不時着」。

引き続きの外出自粛でNetflix視聴頻度がますます増している。
めぼしのものはだいぶ制覇してしまい、次は何を見ようかしら、と考えあぐねていたところ、韓国ドラマ「愛の不時着」がおもしろい、という情報を目にした。韓国ドラマは2000年代前半、「冬のソナタ」が大ヒットした時にちら見した程度。最近韓流マニアの方から勧めていただいたドラマも途中でノリについていけなくなった。いやー、これもくじけるんじゃない? とタカをくくって見はじめたところ、見事にハマってしまったのでした。

いやはや、とにかく主役のヒョンビン氏がかっこいい。
ビジュアルを見ただけでは食指が動かなかったものの、歳のせいなのか?! 少女マンガに出てくるイケメン並みの絵に描いたような立ち振る舞いにいちいちときめいてしまう。同じ東洋人という親しみがありつつ大陸のダイナミックさを兼ね備え、なじみのない外国語を話すというのも魅了される要因なのかもしれない。ほんのちょっとヒロインの手に触れたり、肩を抱いたりするだけでキャーキャー、キスシーンで大騒ぎである(幼い頃親しんだ少女マンガ同様ベッドシーンは出てこない)。恋は盲目、現実にそんなことある?! まだ続きがあるの?! と突っ込みつつも無事全話乗り切り、同じくNetflixで配信中のヒョンビン氏主演作『アルハンブラ宮殿の思い出』も完走。奇想天外な発想、伏線を張り巡らす構成はなかなか韓国ドラマできるな、とすっかり見直しているところだ。ただのヒョンビン効果なのかもなのだが……

時を戻そう……
さて、「愛の不時着」。
思わずヒョンビン愛を語ってしまったが、こちら、北朝鮮から報復を受けたりしないのかな、と心配になるくらい北朝鮮と韓国の文化の違いをおもしろおかしく描いている。ファッションにも触れられていて、いろいろ気になるところがあったので、今回はそれを取り上げたいと思ったのでした。

たとえば、ヒョンビン氏が演じる北朝鮮の軍人、リ・ジョンヒョクが韓国へ行き、ファッションの会社を経営する財閥令嬢のヒロイン、ユン・セリにスーツを見立ててもらうというシーン。
エンジ色のスーツを着せられ、ユン・セリはうっとり、「この色を着こなせる人はそうそういませんよ」と店員に絶賛されるのだが、そもそもこの色のスーツ、ひと昔前感があるのですけど……たしかにヒョンビン氏に似合ってはいるのだけどもこれを着こなしたところでどうなのか……数年前のドラマなのかもと念のため調べたが、韓国では昨年末から今年の初めまで放映された新作である様子。韓国のお金持ちの価値観ではよしとされるセンスなのかな……

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北朝鮮では、髪型がいくつかに決められていて、美容院ではその中から選ばねばならないらしい。ひょんなことで北朝鮮に来てしまったユン・セリは周りになじむためにしぶしぶその中から縦ロールの「さようなら髪」を選び、「ださい」とさんざん毒づくのだが、当初のコンサバなヘアスタイルとそんなに変わらないような……

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ユン・セリが北朝鮮の軍人の奥様に、「ニュートロ」というワードを教えるシーンもある。2018年頃から使われている、「New」と「Retro」を融合させた韓国の造語らしい。14〜15年ごろから辺境ジョージア出身のデムナ・ヴァザリアや、ヴィンテージ風味を好み、ナードな雰囲気を醸すグッチのクリエイティブディレクター、アレッサンドロ・ミケーレが打ち出しているようなことなのか。全体に北朝鮮のファッションがそれに相応するような見せ方だったのだが、モード界ではもう当たり前になっているし、わざわざ声高に言うことではないかも……

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そして、韓国にいる時のユン・セリや、北朝鮮在住のリ・ジョンヒョクの婚約者、ソ・ダンは、ルイ・ヴィトンやヴァレンティノといったハイブランドの新作をとっかえひっかえしている。が、それがモードに見えづらいのだ。お金持ち然としたヘアメイクのまま着ているからそうなってしまうのだろうなあ。いまをときめくボッテガ・ヴェネタも2着登場するのだが、レザーを組み合わせたトレンチコートなどは、「女ボス」を表現するための衣装としてサングラスとともに用いられ、使い方もなんだか間違っているような。

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というわけで、ファッションの点ではあんまり共感できないのだが、それでも見ちゃうのが韓国ドラマなのである。
いまは、「梨泰院クラス」を視聴中です♡

栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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