
リモートで考察、パリコレストリートスナップ。
パリコレが終わった。
先月予習したように(?!)デニムやスポーティな風はたしかに目についた。この大変な世の中に対して、楽しく前向きに行こうよ派と、シリアス・ダーク派に分かれそうな感じがしたが、やっぱり実際に現場に行って体感するのとは違い、デジタルではなかなかムードがつかみづらい。これから落ち着いて復習せねばならない。
ところでパリコレに行くと必ず遂行していたのが人間観察。ランウェイルックで身を固めたくさんのカメラに囲まれる有名人よりも、後ろの方の席やスタンディングにいるような独自の感覚で創意工夫をしている人たちの方に関心を持っていた。ウェブでストリートスナップをチェックすると、今季はそういうおもしろい人たちはファッションウィークにあまり参加していないようだし、皆マスクを付け、あんまり冒険をしたくない気分なのか、なんだか無難なスタイルも多い。つまんないなー、と諦めそうになったが、いや、そんな中にも誰かいるはず。そこで今回は、デジタルで見つけた気になるストリートスタイルをご紹介したい。
まずはこちらの方。
20-21年秋冬の筆頭キーカラーは断然黒だと思っているが、そこで重宝しそうなのがマトリックス的なレザーのロングコート。普通ならクールな方向にもっていきそうなところをギーク風味にスタイリングしているのに驚かされた。メガネや白いマスク、ソックス、ローファーといった優等生アイテムと女の子らしいフリルやレースを合わせるとは。自分ではやらないが、こうした何ともカテゴライズしにくいスタイルに出合えるからファッションの祭典は楽しい。
次はこちら。
『Purple』編集長のオリヴィエ・ザームと一緒だったし、Purpleロゴのフーディを着ているのでおそらく編集部の人なんだろうが、ラフな佇まいに惹かれた。気負いはないけどザ・ノース・フェイスのジャケットの小さめのサイズ感やデザイン性のあるデニム、スニーカーではなくスクエアトウのシューズ、というセレクトがこなれている。バレンシアガのバッグにも無造作に荷物を詰め込んでいて、身に着けるものを自分になじませている感じがかっこいい。
写真を撮らせて、と声をかけているうちに顔見知りになった人もいる。
アートディレクター、スタイリストのJamie-Maree Shiptonさんもそのうちのひとり。プラチナブランドに抜群のスタイルでいつもエッジーなブランドをがつんと着こなしている。今季は今年LVMHプライズのファイナリストになったチョポヴァ ロウェナのドレス姿がスナップされていた。
インパクトのあるパフスリーブや柄ミックスを難なくものにしている。存在感のあるアイテムを着るとほかを抑えがちだが、さらに柄タイツやバレンシアガのハイテクスニーカーを合わせるのもパワフルですがすがしい。
いつもお世話になっているPR会社で働くNina Le Diabatさんも見つけた。
おそらく会社の決まりでショーの案内の際は基本的に黒い服でなければならないようなのだが、いつも素材の組み合わせやシルエット、差し色で独特の世界観を出していて、ブランド物を身に着けているわけではないのにはっと目を引く。実は以前まねしたグリーン眉の発信源が彼女。今回は大胆に入れたブルーのアイシャドウが光る。
ストリートスタイルは遠目に一瞬いいなと思ってもメイクが濃すぎたり、足元が私の好みとは違うジャンルだったりして声をかけるのをやめることもある。やっぱりショー同様自分の目で見て雰囲気をつかみ取りたい。前代未聞の事態となった今季のファッションウィーク。デジタルのおもしろさや効率の良さに開眼しつつも、より一層フィジカルが恋しくなるのでした。
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