栗山愛以の勝手にファッション談義。

憧れのステラ・テナントを偲んで。

12月22日、モデルのステラ・テナントが50歳で急逝した。

何だか今年の年末はいつもより立て込んでいて、12月のブログに取りかかるタイミングを逸してしまっていた。ああ忙しいと言いながら、ドラマ鑑賞は別腹なのか?! すきま時間で全部観ていたNetflix『ザ・クラウン』シーズン4をテーマにしようかな、とようやく筆を取ろうとしていた矢先に飛び込んできたニュースだった。

な、なんと……

これまであんまり関心はなかったのだが、『ザ・クラウン』で目についてしまった、少女趣味と80年代が入り乱れたダイアナ妃ファッションについて語っている場合じゃない。即刻ステラ追悼をせねば。

ということで、今回はステラへの思いを吐露したいと思います。

よくファッションの参考にしている人は誰ですか、といったアンケートの依頼があるが、そういう時は、決まってステラの名を挙げている。理由は、「どんなジャンルの服でも着こなし、つねに品格があるから」。エレガンスの極致、シャネルからパンクまで、コンサバティブからアバンギャルドまで、ステラはどんな世界観もものにしていた。それは、彼女の死を多様なスタイルの人々が悲しんでいたことからもわかる。そういえば、1990年代コム デ ギャルソンのショーにも出ていた。

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この時のヘアもなかなかだが、彼女は突拍子のないヘアメイクやスタイリングでも決してゲテモノっぽくなったりしない。それは、お家柄が良く、品格があるからだろう。

2010年某海外誌に掲載された、祖母デボンシャー公爵夫人、デボラ・キャヴェンディッシュさんとお屋敷の前で撮影した写真でもそれは明白。madamefigaro.jpの記事によればステラはダイアナ妃の遠縁にあたるらしいが、『ザ・クラウン』でダイアナ妃に王室のマナーを教えていた祖母同様、厳格な雰囲気むんむんのおばあちゃんを隣にして、パンクな格好をしている。

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かっこよすぎ……

ステラからは品の良さと祖母への尊敬の念が滲み出ているし、クラシックなおばあちゃんからはそんなステラを許容する前衛的な精神が感じられる。
私はパンキッシュなモチーフに目がなく、トゲトゲやら、破れた服やらに手が出てしまうタイプだが、歳を重ねてもかっこよく身に着けるコツは品格にあると思っている。この時ステラは40歳。もちろんお家柄に天と地の差はあるが、その佇まいは大変勉強になった。

また、2018年春夏にバレンシアガのランウェイのトップを飾ったのも印象的だった。

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こうして時代を牽引するブランドに登場するほか、インディペンデント誌でエッジーな撮影をしたりもしていた。かつてスーパーモデルブームの中心にいた懐かしの人、ではなく、いつまでも「今」な感じを出せることも稀有な人だっだ。ベテランでありながら、軽やかな姿勢であったことがそれを可能にしたのだろうか。2020年春夏のサンローランでは幸運にも生でランウェイを歩く姿を見ることができたが、もったいぶった足取りで大御所感を出しながらフィナーレを飾ったナオミ・キャンベルとは大違いだった。

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歳を取っても「今」を醸し出し、品格を持ってパンチのある服を着る。
そんな風になりたくて後ろ姿を見ていたのに、突然目標を失ってしまった。
12月25日付の英・ガーディアン紙によれば、夫デーヴィッド・ラスネット氏と今年の初めに別れたそうだが……
本当に残念です……

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栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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