
レッドカーペットからSNS?
「ゼブラのミニドレス、似合ってたよ」
カンヌ国際映画祭のオープニングの日、スペシャルゲストとしてハビエ・バラデムとレッド・カーペットを歩く、サンローランのミニドレス姿のシャルロット・ゲンズブールに、SNSを送る。
「そう思う?メルシー」
しばらくして返信が来た。映画祭の渦中にいたのに、携帯を持っていたのだろうか。
「これからカンヌに行くところ。ベラ・ハデッドと一緒よ」
今度はパリにいるスタイリストの女友達からも、カンヌに行くという連絡がくる。翌日から華やかなセレブ、ベラの派手なドレスが話題になっていた。
タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハイウッド』やアルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』、ジャームッシュのゾンビもの『ザ・デッド・ドント・ダイ』がオープニングに特別上映された。
そうした華やかな作品ではないけど、テレンス・マリックの『ア・ヒドゥン・ライフ』は、会場内で感動の喝采が止まなかったという。ナチスの徴兵に反抗して処刑された、実話の農民の姿を静かに描いた秀作だという。
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初夏の陽気みたいな日が続き、散歩日和だ。東京ミッドタウンの檜町公園に、近所に住むソフィー・ドゥ・タイヤックと愛犬の豆柴くんを誘って散歩に出た。公園の一画に白いテラスのカフェ「グープ」が、新しくできている。
「グープってなに?」
「ほら、グウィネス・パルトロウがやっているライフスタイルのお店よ」
ソフィーは何でも知っている。その脇には雑貨とかファッション・グッズも売っていた。
ミッドタウン内にはロンハーマンもあるし、グープはカリフォルニアからきたブランド。なんだかいつのまにか、ミッドタウンは西海岸スタイルに?
「かわいい、豆柴!」
白いテラスに座っていたら、たちまちソフィーの愛犬の周囲には、若い女の子たちのギャラリーができた。私たちはパンプキン・スープを啜りながら、それを眺めながらおしゃべりをする。
「この庭園は、白い花だけなのね」
ソフィーがそう言うので見直してみたら、たしかに白い花ばかりだった。
数日後今度は家の中で、ぐでぐでしているうちの猫ピカビアにリードをつけて、久しぶりに散歩に出てみる。その日も「グープ」に入ろうとしたら、お店の人に呼び止められた。
「あ、だめです。猫はだめです」
え? 犬はいいのに、猫は入れないの? 差別なんてひどい。すぐに文句を言いたかったけど、ぐっと我慢する。柔らかい黄金色の光が降りそそぐ気持のいい昼下がり、そんなことで雰囲気を乱されたくない。
その先にあったベンチで、ピカと日向ぼっこをしていると、通りすがりの人たちが寄ってきて、「かわいい猫がいる」と言い出した。子供たちのグループが駆け寄ってくると、ピカはびくっとしていた。
その時ちょうどワッツアップの着信があったので、見てみるとマルティーヌ・シットボンからだった。南仏イエール国際モードフェスティバルに行ってきたという。今年はオランダのふたり組、リュシュミィ・ボターとリズィ・ヘルブルーが優勝したそう。
帰国して10年以上経ったけど、まだフランスでの出来事が気になる。
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