猫ごころ 巴里ごころ

オーヴォワール ピーター!

リンダ・エヴァンジリスタ、シンディ・クロフォード、ステラ・テナント、ナジャ・アウアマン、ナオミ、ケイト・モス。そうした煌びやかな1990年代のスーパーモデル時代を築いた生みの親とも言えるのが、モード写真界の大御所、ピーター・リンドバーグだった。

 もともと写真が好きだった私は、当時パリに住んでいて、フィガロジャポンのパリ支局を任され(その前も日本の某出版社の支局に)、いま考えれば贅沢なことだが、その頃の写真界の売れっ子だったマリオ・テスティーノやパオロ・ロヴェルシー、そしてピーター・リンドバーグたちとファッション撮影をしていた。

 当時の私は渋谷文化村の写真展のアドバイザーもしていたので、東京でのピーター・リンドバーグの写真展も手伝っていて、そのために撮影だけでなく、ピーターの自宅に何度も行って親しくしていた。

9月4日、パリでピーターが亡くなったことを知る。74歳、いまの時代まだまだ活躍できる年齢なのに。

 ピーターとの撮影時、いつもメイクは魔術師ステファン・マレ、ヘアはオディール・ジルベールだった。写真展で来日の際、フィガロジャポンが東京で撮影することになり、パリで撮影隊を組み来日したが、その時もふたりが同行した。

 今回そのステファン・マレのインスタを見て、涙が出そうに。フランス語の「さようなら」は、亡くなった人には永遠の別れ「アデュー」というのに、「オーヴォワール(また会おうぜ、の意味)ピーター」となっていたからだ。

 ステファンの優しさが感じられる。

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 ところがそれから数日後、またもうひとつの訃報をきいた。

 キュートで、幻想的なバッグのデザイナー、オランピア・ル・タンの父親、といった方が分かりやすいかも知れないけど、彼女の父ピエール・ル・タンは、「ニューヨーカー」や「ヴォーグ」などの名物イラストレーターとして有名な人だった。パリのスノッブな人たちの間では、究極的な美意識を持った人として、とてもリスペクトされていた。ノーベル賞作家のパトリック・モディアーノとも親しく、彼の本の表紙を描いている。繊細な線画は、とてもノスタルジックで、私もすっかり心を奪われていた。

 そんなピエールが、9月17日にパリで亡くなったという。

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 パリにいた頃、「銀次」という猫がわが家にいて、いつか銀次が毛糸で遊んでいる姿を、ピエールがイラストで描いてくれたことがある。

 いまではそれが宝物だ。

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。新刊『おしゃれなマナー AtoZ ~パリで暮らして知ったミューズたちの素顔~』(CEメディアハウス)が2026年3月30日に発売予定。現在Amazonにて予約受付中。食べ歩きがなによりも好き!


Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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