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パリのファッションリーダーが考えるアフターコロナは?

「これからはミニマリストの時代です。装飾より本質的なものが主軸になってくると思います。モードの世界では、たとえばアライアのドレスを一着持っているだけで、オールシーズン着ることができるし、そうしたものが重要視されるようになるかと思うのです」

アフターコロナについて、いろいろなジャンルの人たちが意見を言っているけれど、J.M.ウエストンのディレクターで、ガリエラ美術館の館長だったオリヴィエ・サイヤールがアフターコロナのファッションについて語っている言葉は、なぜかストレートに入ってきた。ファッションだけでなく、ライフスタイルも自然を取り入れたミニマリストになっていくと思うし、量よりは必要最低限の時代になっていくのはたしかなようだ。

そうだとしてもアライアのドレスだけは、自分のボディに相当自信のある人しか着れないような気がするし、アライアでなくとも、ゆったりしたロング丈ドレスでもいいのでは、と思ってしまうのは私だけ?

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それにしても、コロナ禍の不安要素はなかなか消えないけれど、こうした世紀の苦難から私たちを救い出してくれるのは、もしかしたら豊かな感性から生まれたアートの領域かもしれない。アートやオペラや演劇、新たなミュージシャンとの出会いやライフスタイル、または家族や友人との絆、それとも自分自身がアーティストになるとか?

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いずれにしても自分が好きなものを見つけるということが、以前よりも大事になってきているようだ。情報を受け取るだけの時代は終わって、インターネットもユーザーの趣味趣向を掘り下げる、垂直スタイルになってきているのでは?

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数日前に、現代美術のアートコレクターとして知られる桶田俊二、聖子さん夫妻のご自宅を訪れる機会があった。

エントランスから草間彌生に迎えられて、名和晃平、村上隆、奈良美智といったコンテンポラリーアートのスターたちの作品に囲まれた優雅なアパルトマンで、ご夫妻とアペロにシャンパンをいただく。どれもご夫妻がひと目惚れされた作品ばかりだというし、その美意識の高さには驚嘆してしまう。

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『Mr. DOB Comes to Play His Flute』2013 年キャンバスにアクリル、アルミフレームにマウント100 x 100 cm ©2013 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin

「おふたりのご意見が違う時は、どうされるのですか?」と聞くと、「そんなことはありません。ふたりとも、同じものが好きなのです」と聖子夫人。なるほど、夫唱婦随のようだ。

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『PixCell-Deer#48』2017 年 ミクストメディア210.9 x181.3 x 150 cm Photo: Nobutada OMOTE | Sandwich Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

この桶田コレクションは、コロナ禍にもめげず、7月23日から8月10日まで、表参道のスパイラルガーデンで一般公開されるという。マスクや手指の消毒などをしたうえで、静かに心豊かなひとときを過ごすのにぴったりでは? 入場無料だそうです。11時から20時まで。

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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