猫ごころ 巴里ごころ

パリ=東京のジェンダー・ギャップとマナーを考えてみると。

20年間のパリ暮らしから日本に戻ってきた時、正直驚いたのは、女性に対する男性のマナーの違いだった。パリでは建物に入る時、前を歩いている男性は、後ろの女性がくるまでドアを押さえておいてくれたけど、こちらでは目前にドアがバタンとはね返ってくる。

重い荷物を両手に持って、ドアを開けられないでいても、男性は知らん顔で通り過ぎていくけど、幸い優しい同性は、駆け寄ってきて手伝ってくれる。飛行機の中でも、頭上の荷物を降ろすのに手こずっていたら、手を差し伸べくれたのは大抵いつも女性だった。

伝統的に男性優位の国だったので、日本人の男性には、そんなことをするのに抵抗があるのかもしれない。だけど今は21世紀、グローバル化の時代、ネットでは瞬時に日本の情報は海外を駆け巡る。いつまでもそんなことばかりいっていられない。日本の女性の地位が、世界と比べて121位という事実を、もっと深刻に受け止めたい。

どんなに素晴らしい海外ファッションブランドを着ていても、マナーがついてこなかったら、まるで台無しになってしまうし、お洒落な格好をしていても、連れの女性の扱い方を知らないのを見たりすると、がっかりしてしまう。

道路を歩く時は、男性が車道側を歩いて女性をエスコートするし、階段では男性が先に上がり、下りる時も男性が先に。ちょっとしたことでも、とてもスマートに見えるのに。

五輪前会長の女性蔑視発言が話題になっていたけど、言葉だけでなく、日頃からこうした女性をいたわる気持ちが身についていたら、そんな表現をする筈がない。

それにしても東京にいるフランス人の中には、アジアの女性にはマナーは不要と思っている男性がいて、ちょっと不快な気分に。

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うちの本棚には『ル・ギッド・デュ・ヌーヴォー・サヴォワール=ヴィーヴル』(新マナー読本)というのがあって、時々それを開いてみると懐かしくなる。

やりすぎはうんざりするけど、自然に、ほどほどに気を遣ってくれるのって、幾つになっても心地いいもの。 

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村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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