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世界が注目するパリ左岸セルジュ・ゲンズブール記念館。

フレンチ・ロック界に過激な革新をもたらした伝説のミュージシャン、セルジュ・ゲンズブール記念館「メゾン・ゲンズブール」が、いよいよ娘シャルロット・ゲンズブールの手で、今春オープンになるという。

「タイム・アウト」誌では、「今年2022年に世界が注目する22の楽しい出来事」のトップにこの「メゾン・ゲンズブール」を挙げている。
オルセー美術館の裏手にあるヴェルヌイユ通り5ビスにある一軒家の灰色の壁面に、セルジュ・ゲンズブールやジェーン・バーキンの似顔絵、「あなたを愛しているといいにきました」といったグラフィティーが所狭しと乱雑に描かれたところがあるが、彼はそこに住んでいた。当初はジェーン・バーキン、ケイト・バリー、シャルロット・ゲンズブールも住んでいた家族の家で、ジェーンがふたりの娘を連れて家を出た後も、1991年に亡くなるまで彼はそこに住んでいた。
ピアノも彫刻もヴェネチアン・グラスのシャンデリアも、当時の雰囲気のまま時が止まったようにそのまま残されているが、今回その秘密の扉が開いて、内部を一般公開するという。同じ通りの向かい側には、ブックショップや昼間はカフェ、夜には「ゲンズバー」というピアノバーになるところもオープンするというし、世界中が注目している、というのもたしかに頷ける。

企画全体をシャルロットが手掛けているし、恐らく今年最高のパリのおしゃれスポットになるのは間違いない。ブックショップでは、パリ土産にしたいグッズも売られるようだし、まん延防止策などが一段落したら、ぜひ訪れてほしい。
すでに「メゾン・ゲンズブール」のサイトやインスタグラムも立ち上げていて、工事中の現場の写真をアート感覚で見せたりして、いかにもシャルロットらしいピュアで繊細な感性に溢れている。

 

 

初めてあの館を訪れたのは20年位前で、当時パリに住んでいた私は、シャルロットとケイト・バリーと3人でいったのを覚えている。その頃から「父の記念館にしたい」といっていたが、私もなんとかして手伝いたいと思いながらも、なかなか難しかった。
黒い床に黒い天井、足の踏み場もない位ピアノやギターやレコードジャケットなどが溢れていたし、2階の浴室には絢爛たるシャンデリアが下がっていて、魅了されたものだ。

昨年は母ジェーン・バーキンとの対話を、東京、パリ、ブルターニュの海辺の別荘、NYで撮影したドキュメンタリー映画「ジェーン・バイ・シャルロット」を初監督作品としてカンヌ映画祭で上映されたし、このところシャルロットの活躍が止まらない。
「パリにこないの?」とシャルロットからメールがきたけど、いきたいのは山々なのよ。

 

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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