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基本の基が時代のニューノーマルになっていく? 人気上昇中のエコール・ブール校について。

前回パリに行っていた時に、エルメスのメンズのデザイナー、「ヴェロ」ことヴェロニック・ニシャニヤンが、オデオン劇場前の、オープンカフェに夕食に連れていってくれた。
パリもアフターコロナのせいか、みんなテラスや外で食事をする習慣がついたせいか、ほぼ満席の賑わいだった。

ヴェロとは、コロナのせいで、久しぶりに会ったので、ふたりでおしゃべりに夢中になっていると、ヴェロの知人が通りかかり「ボンソワール」といってきたりして、ナポリにいるような解放的な街の雰囲気だった。

kasumiko-murakami-00-230829.jpeg ヴェロと話していて、アフターコロナで、仕事の仕方もテレワークなどで自由な感じになってきたのは、パリも同じ。コロナの時期に、家の中に閉じこもって、手芸などをはじめた女性も多く、以前よりますますハンド・メイドに注目がいくようになった、という話題になる。

「そういえば、仮設のグランパレ、あの展示会場で手工芸の職人技の展覧会をやってるから、カスミコ、いってみたらどう?」という。

「なんだか今の時代感覚ね。いってみようかな」

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当日開館の20分くらい前にいってみたら、すでに長蛇の列ができていた。予約ができないので、万一のため早目にきたのだが、まさかこんなに並んでいるとは意外だった。

私の前には、なかなかファッショナブルで華やかな若い女の子たちのグループがいる。どうやらどこかの服飾学校、それもエスモード校やスタジオ・ヴェルソ校の生徒たちのように、おしゃれもマックスだった。

「どこの学校なの?」

並んでいるのに飽きたせいか、ちょっと変なこのアジア人のおばさんは、つい声をかけてしまった。相手も長い列にうんざりして、階段に座っていたからだ。

「エコール・ブールのクラスメイトたちと今日はきました。だけどこんなに並ぶとは思わなかった」

「そうよね。なかなか進まないし」

「職人になりたいのです。まだはっきりと職種は決めてないけど」

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どうやらヴェロのいってた通りだ。パリのおしゃれな女の子たちには、今は服飾系の学校だけでなく、手仕事の方もどうやら人気のようだ。

「これからの時代は、基本の基が大事になると思う。落ち着いたものが、ニューノーマルになるのよ」

最近友人たちとそんな話をしたけど、あながち間違ってはいないようだ。
エコール・ブールとは、国立工芸学校のことで、そこの出身だというと、フランスでは大半の人が、「いい学校だよな」というが、どうやらそこが今脚光を浴びているようだ。

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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