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お直しをしたらリサイクル奨励金? フランス政府の優しい政策。

肩書きに「おなおし」と書いてあるのを初めてみたのは、横尾香央留さんの名刺だった。もう10年以上も前のことだ。最初はちょっとよく分からなかったけど、たとえば刺繍やかぎ針編みで、虫食いセーターの穴の中から象が顔を出していたり、花が咲いていたりしていて、地球に優しいリサイクルに寄与していることを知り、とても魅力的だと思った。
修理する職人技というより、それはもうアーティストの領域で、横尾さんも、青山のアートギャラリーや地方の美術館で展覧会をするようになり、アートの領域どころか、アートそのものになっていった。

2020年からランウェイでコレクションを発表しているジュザベル・コルミオのブランド「コルミオ」も、刺繍やステッチの手仕事の感じが残っていて、あたたかい雰囲気のニットで、人気のようだ。1回目からグッチの前デザイナー、アレッサンドロ・ミケーレに見出されているし、刺繍、デザイン、シルエット、フェミナン、といった要素が、バランスよく仕上がっていて、ヴィンテージの感じとフォークロアが混ざり合い、今の時代感覚に溢れている。

 

刺繍はイタリアで消えようとしていた伝統的な職人技を、活性化させているというし、ニューヨークにも拠点を持ち、パリでも最近注目を集めていて、今後ますますブランド力を高めていきそうだ。

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「わああ、ユキコさあん、ありがとう」

私も大好きな「サカイ」のカーディガンが虫食いでボロボロになり、困っていた時に、近所の古民家のユキコさんが、細かい花を散らばめた素敵なニットに再生してくれてすっかりうれしくなった。
※  山田有樹子さん(090-1556-5532 )。とても丁寧な方で、お直しお勧めです!職場は目黒

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リサイクルを奨励しているフランス政府は、お直しにかかった代金には、奨励金を出すといっている。政府の環境問題対策というのは、ともかく大掛かりなものが多いけど、フランスではそんな細やかな対策までしてくれるの? 素晴らしい政策だと思う。

新しいものを買う前に、自宅のクロゼットの中に虫食いセーターがないか、もう一度見直してみたい。

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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