オトコが好きなファッション!? ライターの本音トーク

この男たちは最高にお洒落カッコいいぞっ。30年前とはいえども。

大好きな、とある海外の曲の歌詞に出てくる、
「When I was a very small boy,〜」
【僕が小さな子供(=少年)だったとき】
のフレーズを聞くたびにいつも、

「おれは小さな子供じゃなく、小さな大人だよっ!」

と、誰に言いたいのかも分からないツッコミを頭の中で行い、
もやもやしてるファッションライターです。

困るわ〜、こーゆーの。
純粋に音楽に浸れないじゃん。
もうさ、普通にですよ、
「Child」(チャイルド)
って歌詞にすればいいじゃん。
微妙なニュアンスの違いがあるんでしょうけども。
英語しゃべれない私には分かんないですけども。

真面目な話、私は日本語でも、
「自分が小さかった頃は〜」
なんて表現、まずしないですからね。
昔のことを語ってる感覚になれないモンで。

たまに間違えて、「小さかった頃は」と口にしたときに、
「あ、いまでも小さいんですけどっ」
と笑いを取りに行くものの、
相手が笑っていいのか困っている顔を見るときの寂しさったら。
笑ってくれよぉ。
頼むよー、立場ないじゃんかよぉ。
 

えーーーーーーーー、今回も無駄話だらけですが、本題とまったくの無関係というワケでもなく。

本題。

マッドネス(Madness)
ってバンドをご存知ですか?
知らないですよね、たぶん。
70年代後半〜80年代に、イギリスで国民的な人気だったことなんぞは。
歴史好きな洋楽ファンか、おじちゃん、おばちゃんでもないと知らないでしょう。

小さなおじちゃんの私も、もう長いこと存在を忘れてました。
でも近ごろちょいきっかけがあり、見たことのなかった昔のミュージックビデオをyoutubeで探してみたら、
この人たち、やっぱカリスマだわ!
と思ったしだいです。

当時としてもレトロな、1950〜60年代のファッションを着こなす男たちが、ゆる〜くふざけ倒してる。
でも、歌詞の内容は、庶民の暮らしぶりを淡々と物語るシンプルなもの。
ときには、重く暗く悲しく。
ただしそのメロディは、ポップで美しい。

なんでしょう、このギャップのスゴさ
大所帯のバンド全員で、これを続けてきたスゴさ
スターなのに、スターになろうとしないスゴさ
大人なのに、少年であり続けるスゴさ
苦しみを、笑いのオブラートに包むスゴさ
子供から大人まで、共感を呼ぶスゴさ

それではご覧ください〜。
フィルム時代の荒れに荒れた映像でお届けする、マッドネスです。

★最初の30秒がすべて
 

One Step Beyond

初期の代表作です。
実際の曲とは無関係な、最初の30秒にヤラれます。
音楽そのものに興味がある人以外は、このあとは見なくてOKです。

 

★ファッション、メロディ、ダンス

Baggy Trousers

黒のロングコートにブルーデニム、白シャツ。
決め手は短髪にサングラス。
短髪、短髪!
男の髪型の理想ですよ、ええ(と言い切る)。

双子のようなメインボーカルとコーラスの、ダンスというか身体の動きも最高です。
メロディもいいですよね。
歌詞は、「学校では悪いことやってたなー、面白かったなー」ってお話。
でもワルといっても、
先生にいたずらする、可愛げのあるワル。
 

★こんなにイケメンだったっけ?
 

Our House

たぶん、マッドネス最大の世界的ヒット曲。
ボーカルが、襟の細い、60年代スタイルのジャケットを着てて最高にクール。
やっぱ短髪ですよ、短髪(しつこいわ)。

メンバーの服装は、時代がもっと古く、30年代くらいですかね。
全員がハンチングを被ってますが、これは労働者階級のシンボル。
さりげなく自分たちの立場を示しております。

歌詞は、3人兄弟のいる家族のドタバタの日常について。
ほんわかした内容に思えますが、これは過去の出来事。
「楽しかった時代だった」、と末っ子の主人公が思い返しています。
実は奥深い歌詞なんです。

★この真っ黒ファッションは、イマドキなんでは
 

It Must Be Love

 

メンバーの服装は、全員真っ黒。
泥棒っぽい、怪盗っぽい。
ボーカルは、ハイウエストのルーズパンツに、タイトな黒ニット。
頭にはハンチング。
いまこの格好で、街歩いたらカッコいい気が。

歌詞は、ふつーです、ふつー。
タイトルのまんま。

★カリスマたるゆえんは、暗く重い歌詞あればこそ

Grey Day

 

80年代に、世界的にカリスマバンドと呼ばれたのが、同じくイギリスの「ザ・スミス(The Smith)」。
大きく支持されたのは、音楽の良さだけでなく、
ボーカルのモリッシーによる(彼も労働者階級)、辛い境遇を綴った歌詞によるところ大でした。
生きるために望まない仕事をしていたり、コンプレックスを抱えていたり、
日常が幸せでない人々に大きな励みになったという。

ほら、落ち込んでいる人に、
「元気出しなよ」って、上から目線で言ったところで、
元気なんか出るワケないじゃないですか。
自分も悲惨だって話でもしたほうが共感できて、
「一人じゃない」って思えますよね。
(そう単純な構図でもありませんけども)

マッドネスのこの曲、「グレイ デイ」は、最初から最後まで救いのない歌詞です。
「朝起きると身体の関節が痛い。外では雨が降っている。今日もまた、憂うつな一日が始まる」
これがサビです。

81年のUKチャートで、最高位4位。
彼らもまた、カリスマでございます。

現代において、こんな歌詞、こんなメロディをヒットチャートに送り込めるグループってあんのかなー?
とくに我が国において……。
あ、そーか、握手券つけたCD売りまくればいいのか。
何百人の男の子を集めて、「私たちは決してホストクラブじゃない」とか言ってね〜〜。
(皮肉はよせ、皮肉はっ)

ファッションライター高橋一史 過去ログ一覧

高橋一史

明治大学&文化服装学院卒業。編集者がスタイリングも手がける文化出版局に入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。担当ジャンルは、ファッション&音楽。退社後はフリーランスとして、原稿書き・雑誌編集・コピーライティング・広告ディレクション・スタイリングなどを行う。

kazushi.kazushi.info@gmail.com

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