旅するミュシャ#8 「モリゾ」に抱っこしてもらう

島 やぁミュシャさん、個展お疲れ様でした。YouTubeライブペインティングで旅するミュシャを始めて、まさか一年で個展を開催する事が出来るとは、本当に驚きだね。

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ミュシャ わたちは画伯がちゃんとライブペインティングを一年続けられた事にびっくりちてるわ。

 ほんとだね(笑) これもいつも応援してくれる方々のおかげだね。

ミュシャ そうかもちれないわね、あたちも一層お肌の手入れ頑張らなきゃ。

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中島健太『旅するミュシャ-モリゾに甘える-』2022年。油彩喪服を着ているという説と、モリゾをスペイン人として描きたかったマネが目の色を含め黒で統一したという説があるらしいにゃ。モリゾの目は本当は緑なんだそう。

 さて今回は、個展にも展示させて頂いた、エドワール・マネ作『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』をミュシャさんには旅して頂きました。

ミュシャ なんだかとっても優しそうな女性だったけど、モリゾさんはマネさんの恋人なのかちら?

 お、ミュシャさん、鋭い。実際のところはよくわかってないのだけど、ふたりは恋愛関係にあったと考える人が多いようだね。ただ、マネがモリゾと出会った当時、マネには内縁関係の女性が既にいたんだって。いまのご時世だったら炎上必至だね(笑)

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制作過程(原画はすみれの花束がほとんど見えない)

ミュシャ まったく、芸術家ってろくでもない人ばっかりね。

 ごもっとも(笑)。ちなみに、不思議な事にモリゾはその後マネの実弟と結婚するんだよ。研究者のなかにはマネへの当てつけだ。なんて考える人もいるらしいのだけど、ミュシャさんはどう思う?

ミュシャ あら、弟さんと結婚するのの何がいけないのかちら?魅力的で、お互いが良ければ何も問題ないじゃない?

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 なるほどなるほど。確かにモリゾは結婚後、子どもにも恵まれて家族をモデルにしたすごく暖かい作品をたくさん描いているんだよね。当てつけだと考えるのはちょっとモリゾに対して失礼かもしれないね。女性の心を読み解くのは、まだまだ僕には難しいなぁ。

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ベルト・モリゾ『庭のウジェーヌ・マネと娘』1883年 マルモッタン美術館蔵

ミュシャ 画伯、あなた本当に誰かの心を理解できるなんて思っているわけ?普段から、自分と絵を描くことにしか興味がないじゃない。

 う……。厳しいご指摘……。ところで、いまでこそオルセー美術館でマネの代表作として飾られているこの作品、マネの死後、モリゾ自身がコレクターから数百万も払って買い戻したそうなんだよね。そんな逸話を聞くと、やっぱりモリゾもマネに対して何らかの想いを抱いてたのかな?なんて想像せずにはいられないよね。

ミュシャ 当たっているかはともかくとして、画伯の想像したお話を聞きながら改めて作品を眺めてみるのもなかなか面白いかもちれないわね。

 好きな作品に出会って、そしてその作品にある背景を知る。そうすると作品の見え方ってほんとうに彩りを持って色んな見え方をしてくるよね。
次回は印象派で4番目に有名な画家「シスレー」の世界をミュシャさんには旅して頂くよ。

ミュシャ 4番目…。微妙だわ…。

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あたちのおめめは黄色。寝っ転がっても画伯のために福は招いてあげなきゃね。

中島健太

1984年生まれ。画家として情報番組コメンテーターやドラマの美術監修など多方面に活躍。今まで描いた作品1000点以上が完売している事から「完売画家」と呼ばれる。 全国で個展を開催。YouTubeでライブペインティング「旅するミュシャ」を放送中。ミュシャにはちょろい同居人と思われている模様。著書『完売画家』(2021年、CCCメディアハウス刊)が全国書店で発売中。現在はTOKYO MX「バラいろダンディ」の火曜コメンテーター(隔週)としても活躍中。
YouTube: 画家 中島健太
Instagram: @painterkenta
Twitter: @oilpainternk

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