かぐわしきみなと通信

香港のAmberとシドニーのSepiaの華麗な競演

香港で美食系の記事を書くようになってから、頻繁に誘われるのが「フォーハンズ」。

4本の手・・・つまり2人のシェフのコラボで、ほぼ交互に一緒にコースを作っていくというスタイルのイベントなのです。

最近ではアジアやワールドトップ50など、さまざまな国で活躍するシェフが一堂に会する機会があるせいか、シェフ同士のネットワークもどんどん広がっているようです。

先日は、アジアトップ50レストランで今年は3位にランクインしているフレンチレストラン、Amberのリチャード・エッケバスさんが、シドニーの注目レストランSepiaのシェフ、マーティン・ベンさんとフォーハンズを開催した、とのことで、試食をさせていただきました!

Amberのダイニングルームで。左がリチャードさん、右がマーティンさん。

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本当に頻繁に海外の有名シェフとの、さまざまなコラボレーションやポップアップイベントを年に何度も行っているリチャードさん。

私がAmberで以前に体験したものでは、アジアトップ50のナンバーワンレストラン、バンコクのガガーンとのフォーハンズ、福岡のミシュラン三つ星寿司店、行天のポップアップ。その他にも、去年はペルーの名店セントラルのヴィルジリオ・マルチネスさんもフォーハンズに来ていましたっけ。とにかくいつも豪華なラインナップで、楽しみにしているファンが多数。

そんなワケで、Amberが今回組んだマーティンさんは、実はかつてオーストラリアの名店Tetsuyaで料理長を務めていた方。調理のさまざまな面で和の影響を受けているとか。

マーティンさんの奥さんで、一緒にSepiaを切り盛りしているビッキーさんが、2人の写真を撮っていました、可愛いですね♪

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5年ほど前から取材やイベントでお世話になっているAmberのリチャードさんですが、つい数週間前に、Taste of Hong Kongという大きなイベントで、九州の食材生産者を呼んだワークショップの通訳と司会という大役をご本人から頼まれて、ご一緒したばかりでした。ということで3月は、私にとってAmber月間でした!

これがそのイベントの様子です。

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福岡の恵比寿牡蠣や鰆、宮崎牛など、九州からリチャードさんが厳選した食材を使ったクリエイティブなメニューを食べていただきつつ、生産者の皆さんが、いかに精魂を傾けてこれを作っているかをお伝えする、というものでした。

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お互いの料理のハーモニーを大事にしながら、それぞれの個性を出していくスタイルのフォーハンズ。

最初に出てきたのは、リチャードさん担当の・・・・・・まさに、私が先日ワークショップをお手伝いした、福岡の恵比寿牡蠣を使った一品! これは海の恵みたっぷりだけれども波が高い玄界灘で、160本の竹で組んだ筏から海底につり下げたロープで育てるという、特別な養殖牡蠣なのです。

何だか昔からの友達に会ったような気分になりました。

ケールのジェリーやスライスの爽やかさと、ぷるんぷるんの恵比寿牡蠣の食感がまざりあい、波の音が聞こえてきそうな一品です。

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次にいただいたのは、マーティンさん自慢の一品! 細いイカの筒のように見えますが、実はイカで作った細い円を連続して並べているという、イカめしの繊細バージョン(中にご飯は入っていません、季節によってはトリュフを入れたりするとか)。

イカは70度の低温で3分間バター炒めしたそうで、生に近いような柔らかさ! イカを細く切るのは、新鮮な食感を保つために、寿司でのイカの扱いを参考にしているそう。

卵の黄身と柚で作った風味豊かな円が、円と円を組み合わせた見た目の統一感と、すっきりした味わいもアップしてくれます。

 

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ともに長身のヨーロピアン(リチャードさんはオランダ、マーティンさんはイギリスの出身)の男性が作っているとは思えない!? 詩的なシーフードのあしらい。

海外に住んでいて、四方八方から日本の調理法や食材が、どれだけ世界中で影響を与えているかを耳にするのは、本当に幸せで誇らしい瞬間です。

それに加えて、面白い!楽しい!皆さんにもっと知って欲しい!と思うのが、日本人にとって身近な食材に、思わぬ調理法を使って、文句なく美味しい新しい味がどんどん生まれていること。

こちらはフランス・ブリトニー産の鳩肉がたまらない、リチャードさんの一品。

鳩って、広東料理でも名物なので、香港に来てよく食べるようになりましたが、ものすごく旨みが強くて、癖になりますよ-。

そしてこの一品で私が感動したのが、鳩の下にあるもの。これ、実はミョウガなんです!!!

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ミョウガの独特の風味を残しつつ、ハイビスカスの甘酸っぱさが加えられて、山椒の花の香りも漂って、食べたことのないハーモニー!

この絶妙なバランス感覚が、トップシェフのセンスの良さなんでしょうね。

 

そしてもう一品は、マーティンさんの手による、鰹の料理。

鰹はパリのフレンチレストランで働いていたときに、よく使っていたそうです。

マーティンさんいわく、鰹とチキンは、肉の味やフレーバーがとても似ていて、相性がいいのだとか。備長炭で軽く炙った鰹を、ローストしたチキンを凝縮して作ったクリームに載せて、なんと上にある葉は、チキンの皮とアーティチョークで作っているのだとか。

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昨年の9月にマーティンさんがアンバーを訪れ、マーティンさんの料理をインスタグラムでフォローしていたリチャードさんと意気投合。すぐに今回のフォーハンズが決定したそう。マーティンさんの次の目標は、日本で料理をすること!

「マーティンの料理は、見た目にはシンプルで、2つぐらいの食材しか見えないけれども、その奥には驚くような複雑性があって、彼の調理技術はとても高いんだ」とリチャードさん。

キッチンの中で一緒に働くことで、シェフはもちろん、キッチンで働くスタッフも大きな刺激を受けるそう。

SNSの影響や流通の発展で、どんどん世界が小さくなっているのは、料理界でも同じこと。

そんな動向をウォッチングして、新しく生まれる美味しいものを楽しめる時代を、満喫しないと損ですね!

私の次の目標は、シドニーでSepiaを訪ねることになりました。

 

 

 

 

 

 

甲斐美也子

2006年より香港在住のジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、英国人と結婚し、ヨーロッパ、東京、そして香港へ。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港とマカオの情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。

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