かぐわしきみなと通信

新隠れ家レストランで白トリュフ三昧!

フランスやイタリアの食文化の存在感が年々高まる香港で、ここ数年、トリュフのシーズンはレストランで特別メニューが組まれるなど、トリュフ絡みの話題に事欠きません。

中でも野生でしか採れないため、黒よりさらに貴重という白トリュフは、秋がシーズンです。イタリアンレストランの取材が多かったせいか、今年は何度かいただく機会がありました。

しかし先日、密かに話題の新オープンのレストラン、Neighborhoodで、一生分の白トリュフを食べたのではという贅沢ディナー(しかしお値段はとてもリーズナブル)を体験しました。

このレストランは、ビストロノミークやLot 10などの愛すべきフレンチレストランをオープンさせてきた名シェフ、デビッド・レイさんの新店です。かつてはアラン・デュカスの下で働いていたという香港人の彼は、香港の食通の間で高く評価されている人。

住所はHollywood Roadという大きな通りの61番ということで、簡単に見つけられると思って訪ねたところ・・・・・ない?あれ?61番がない?? お店に電話したら、近くの細い路地を入ったところにあるのだとか。これは地元の人でもまず見つけられない隠れ家ロケーションで、他の参加者を待っている間に、住所片手に迷っている見知らぬ香港人何人もに、「もしかしてNeighborhoodに行くの? あそこの小径の奥だって」と私が教えてあげたほど(笑)

DSC08185.jpg

店内は、シンプルでミニマルながら、ほの暗くスタイリッシュな雰囲気。

今日はお店のお勧めをお任せでお願いしていましたが、オープン記念に白トリュフを格安で提供中(1gで27香港ドル)とのことで、これもニンニク大(50g)1個を、9人でシェアすることに。普通だと香港でも1g100香港ドルはするのだそうです。

最初は「えー1個で1000ドル以上?高くない?」などと喧々がくがくだった一堂。後で「あの時、本当にけちらなくて良かったね」と、しみじみ思い返すことになろうとは。

まずは、エンジェルヘアっぽいシンプルなパスタの上に削ってもらいました。

DSC08137.jpg

コーンフレークではありません(笑)白トリュフどっさり。ニンニクに似た良い香りが充満します。

DSC08142.jpg

すごーい!と歓声をあげていた私たち。しかし実際にすごかったのは白トリュフの量だけではありませんでした。

テーブルクロスもなく、「シェアしたら?」とあちらから勧めて下さるようなカジュアルな雰囲気の店内で、あっさりしたプレゼンテーションの料理・・・・・・なのですが、目の覚めるほどの美味しさ!

たとえば、この蒸し野菜に添えられたドレッシングがもう絶品なのです! アンチョビとオリーブオイルがメインの材料とのことですが、「何なの、この美味しさは?」と一堂大騒ぎ。野菜も一つ一つが新鮮で風味豊かで。

DSC08132.jpg

こちらはカエルの足のフライ。これもまた添えられた自家製オランデーズソースが絶品。カエルも柔らかくてとっても美味しい。

DSC08134.jpg

分子料理のブームもあって、最近はとにかく度肝を抜くような、華やかなプレゼンテーションの料理が当たり前になっている香港で、あえてこのシンプルさ――逆に野心的で大胆不敵に感じます。

実は今年の初め頃、デビッドさんに別の店でインタビューしたことがあり、その時「最近流行の料理の傾向には心引かれない。シンプルだけど魂のこもった、奇をてらわない料理を作って、近所の人たちがしょっちゅう食べに来たくなるような、気軽だけれども、とびきり美味しい店にしたい」と話されていたことを思い出しました。

店の名前もまさに「ご近所」。ああ、そういうことなんだな、とここで胃袋と脳がつながって納得。最近観た映画『The 100 Foot Journey』(マダム・マロリーと魔法のスパイス)を思い出したり。

この2つのソースをパンにつけて食べるだけで十分に幸せ♪ と話しているところに、次々に素敵な料理たちが。

このリゾットも美味しかったです。これにもたっぷり白トリュフを載せました(それでもまだ半個残っている)。

DSC08146.jpg


お次にやって来たのは、ロールキャベツ風の一品。豚や牛などの合い挽き肉で、一番中心部にチキンレバーが使われています。外には1 枚だけぶ厚いキャベツとベーコンが。このキャベツが焦げてはいないのだけれども、きれいな焼き色と最高の風味。添えられたキューブにも、ときどきレバーが隠れています。

「何なのこれ?美味しい」← この夜、いちばん多かった発言。

DSC08153.jpg

途中で照れくさそうに写真を撮らせてくれたデビッドさん。男気のあるジェントルマンな料理人です。

DSC08156.jpg

ここで「じゃあ、メインは何にしますか?」と聞かれ、「今まで前菜だったんだ」とびっくりしつつ、私はブイヤベースを注文。またしてもこのスープがもう素晴らしくてびっくり。シーフードの出汁がたっぷり染みこんでいます。

DSC08159.jpg

こちらは他の方達が頼んだラム! 見ただけで美味しいことが分かります。

DSC08163.jpg

さあ、本当にお腹いっぱいなところで、まだ半分残っている白トリュフ。「アイスクリームとチョコケーキにかけてみる?」とのサーバーの方の提案で、お願いしてみました。

これでもかっ!と白トリュフを削りまくります(笑)。とってもピュアな風味のバニラアイスクリームとこれが合うんですね!

DSC08166.jpg

「最後のひとかけまで残さず削るのよ」というマダムたちの厳しい突っ込みに、冷や汗をかきながら削り続けるサーバーさん。チョコレートケーキにも白トリュフの花びらが。

DSC08175.jpg

最後の〆には、こちらも自家製のミニサイズのカヌレが! 

DSC08183.jpg

胃袋が温まるような優しく豊かな料理をさんざん楽しみ、珍しい白トリュフ体験をこれでもかとして、ワインも3本空けたのに、お会計がチップを入れても1人600香港ドルで済んでしまったのにも、再び驚き。9人でシェアさせてもらったので、ますますお得感が高まったようです。

どこにあるのか簡単に分からないような店で、オープンしてまだ2カ月弱ですが、お店は満員。なんと料理を1週間おきに入れ替えるそうで、毎週通い始めている常連が早くも出来てきているのだとか。

楽しいお喋りと美味しい料理。まさにこれは食いしん坊万歳といいたくなる!?香港の夜でした。

甲斐美也子

2006年より香港在住のジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、英国人と結婚し、ヨーロッパ、東京、そして香港へ。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港とマカオの情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。

ARCHIVE

MONTHLY

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories