かぐわしきみなと通信

バンコクのGaggan、Amberで夢のポップアップディナー

数あるレストランランキングの中でも注目度が高いのが、サンペレグリノのAsia Top 50レストラン。今年の初めに、ある雑誌のこのランキング特集で、第4位のAmberの記事を書いたため、自分の記事の対面にあった第3位のバンコクGagganはとても印象に残っていました。

ちなみにこのランキング、1位がバンコクのNahm、2位が東京のナリサワ、5位が龍吟なのです。バンコクって最近素敵になっていると耳にするのですが、こういうところに表れてきますね。

そのGagganのガガン・アナンドが、取材以来すっかり大好きになったAmberにゲストシェフとして登場するというではないですか! これはぜひ食べなければいけない!

香港では、こちらは15位にランクインしているBo Innovationが、伝統的な広東料理をベースにした実験的でクリエイティブな料理を作っていて、フィガロ本誌11月号の香港グルメ特集でも取材させてもらっていて、それと似た流れにあることは予想できました。

スペインのエルブジで分子料理を学んだというガガンの場合はインド料理を題材にしているというので、これは私にとってはとても新鮮! Amberの名物シェフで、明るい人柄がとってもチャーミングなリチャード・エッケバスが協力しているというので、名シェフ同士のコラボというのも楽しみです。

ディナーは、シェフの挨拶とともに始まりました。 「一生懸命作ってるけど、あんまり美味しくなくても、お願いだから怒らないでね」なんて脱力なノリで笑わせてくれるシェフ! 和みました。

さてさて、今日は全部で9コース! 一品目は、いきなりタイトルが「バイアグラ」!? 実は生牡蠣に、インドの果実Kokumのリダクションとホースラディッシュのアイスクリームという素敵な組み合わせ!なのですが、残念ながら最近牡蠣があまり体に合わなくなっていたので、牡蠣抜きメニューをお願いしました(無念~)。泡にしっかり牡蠣のフレーバーを封じ込めてくれていたので、食べてる気分は味わえました。

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二品目もタイトルが面白いんです。その名も「ウィリー・ウォンカとフォワグラ工場」! フォアグラのムースに、スパイスを効かせた赤タマネギ、ラズベリーとヘーゼルナッツのプラリネが添えられている・・・・・・とメニューにありますが、実際にはこんな姿! 口に含む度に「あれ? あれ?」という驚きがたっぷりです。

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同席していたのは、ほとんど初対面の香港の雑誌編集者や新聞記者の皆さん。ゴージャス系の雑誌では、ハリウッドスターの取材があるので、「×××・××××がインタビューに1分しか時間をくれなくて、ものすごく意地悪だった」とか裏話をいろいろしてくれて盛り上がりました。

そして3品目。アルケミスト(錬金術師)のケーキ。レンティルのケーキにカレーリーフ、マスタードのタネ、ナツメ、ココナッツアイスクリーム添えなのです。実はこのケーキ、インドのカジュアルスナックであるドクラを使ったもの。ふわふわしつつもレンティルの繊維が残った独特の食感が面白く、泡になったりアイスになったりした食材の組み合わせの妙も、いとおかし。

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目にも舌にもバラエティ豊かだし、とにかく「インド料理」をどこかに感じさせる不思議な料理は面白くて珍しくて楽しくていいですね!

次のスープは「Down to Earth」。編み笠茸やアーティチョーク、アスパラガスなどの野菜がたっぷり、しっとりと溶け込んで、胃袋が温もる優しい美味しさ。そして62℃でスロークックした卵の黄身と、トリュフとチリを組み合わせた香りの高い「空気」が込められています!

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こちらはウミヒゴイ(Red Mullet)を使った、「Bong Connection」。イギリスを舞台にしたベンガル人青年が主演のインド映画のタイトルだそうです。イギリスっぽい料理に、ベンガルマスタードを使ったところが、タイトルの由縁でしょうか。プレートの上は、カリフラワーの粉やスパイスのジェルなど面白いものだらけ。イギリスとインドのつながりは確かに濃厚です。

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次は、かつてはゴアを植民地にしていて、スパイス貿易などでインドと深い関わりがあったポルトガルをテーマにした「Portuguese Connection」。イベリコ豚を48時間真空調理して、ヴィンダルーカレーのリダクションソースをさらりとかけて。文句なく分かりやすくテーマ通りポルトガルとインドを感じさせられて、豚の調理の具合も最高! 完成度の高い一品です。

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そしてプレゼンテーションもバラエティ豊か。次の品「Jhinga Nisha」は、海老を使った有名なインド料理だとか。空豆のような器は保温性が高くて、蓋を開けた途端にお馴染みのタンドーリの香りが漂いました! マンゴチャトネーも添えられて。美味しい!

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そしてメインの最後は、このフリーレンジのラムチョップ「Best Memory」。こちらも真空調理をしてあるそうですが、もう何だか訳の分からなくなるほど巧みな食感と肉の旨みで最高でした! シェフのシグネチャーと聞いて納得の美味しさ。完璧なものってシンプルなのです。

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ちなみに、なぜかこれのサイドには、焼きたてのクロワッサンが出て来ました。「えー夜の11時にクロワッサン?」「ヘビーだなー」「お腹いっぱいで入らないよ」(7時から始まって、すでにそんな時間になっていた)などと一堂ぶつぶついいながら、一口食べると・・・・・・これが異常なほど美味しい。

「こんな美味しいクロワッサン食べたことのがない」と皆、口々につぶやきつつ、一心不乱に食べ始めました(笑、まったく)。そこにAmberのシェフ、リチャードが通りかかったので「リチャード、このクロワッサンやたらに美味しいんだけど、ガガンのレシピなの?」と声をかけると、「これは僕たち(Amber)が作ったんだよ」。

おー!さすが、と本筋と違うところで妙に感動してしまいました。皮がカリッとしてるんだけど、普通より少し硬めのくせになるような食感で、表面に少しスパイスが効いていて、中はしっとりふわふわ~・・・・・・今すぐでもまた食べたいです(笑)。

楽しくも刺激的なディナーもいよいよ最後のデザートに。「Divine」というマンゴのスノーボールで、外の殻をたたきわると、なかにマンゴ味のふわふわババロアが♡。

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一品ずつ工夫とストーリーがあって、シェフのインド愛と明るくてお茶目な人柄で「ふふふ、びっくりさせちゃおっと」とでも言いながら考えたような陽気さが感じられる料理でした。

シェフの写真がちゃんと撮れなくて残念。こんな顔して「美味しくなくても怒らないでね」なんて言っているんですよ。

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いつかバンコクのGagganに行ける日を夢見て、心もお腹も満たされたディナー体験でした。

甲斐美也子

ジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、ヨーロッパ、東京、そして香港で18年を過ごす。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港の情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。2024年に帰国。

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