香港K11で空間アーティスト津田翔平さんの"MUTATIONS"始まる!
ときどき頼まれてするお仕事が、来港した日本人のアーティストやシェフなどのインタビュー通訳。
先日はちょっとしたご縁で、香港のショッピングモールK11内で個展を開くという津田翔平さんのお手伝いに行って参りました!
普段は自分がジャーナリストとしてアーティストにインタビューしているのが、通訳の時は、逆の立場から同業者の様子を見ることができて、とても勉強になります。
それと同時に、これでいいのか?と思うところでもありますが、インタビューを自分がするよりもずっと内容を理解できるような気がしてしまいます。正確に翻訳するには、アーティストの言葉を完全に把握していないとできないからでしょうか?
さて、この日の私のミッションは、複数やってくる地元のメディア向けのツアーとインタビューの通訳。
左側が津田さんです。「アーティストっぽく、かっこよく」などという、自分が言われたら困るな、というような指示をカメラマンから受けながら、しっかりこなしています!素晴らしい~
Chi K11 Artspaceという展示エリアは、地下鉄の尖沙咀駅につながる地下3階にあります。
まずは今回の展示をいろいろお見せしましょう。
入り口エリアの床には、月のような鏡の反射と、壁には謎めいた赤い映像がうごめき、左側は凹凸を付けた金ぴかの紙が壁一杯に張り巡らされています。
明るい写真だとこんな風に見えます。
日本では古い駅舎や空き店舗、空き家などを空間アートの舞台にすることが多いという津田さん。場所の痕跡や、そこに染みついた記憶なども表現の一部として生かすというのがスタイル。
それとは打って変わって、都会の大型ショッピングモールであるこの空間も、ほんの少しペンキを剥がすことが「解体」となって、少しこの場所を理解することにつながるのだそう。
ビルのオーナーにはびっくりされたそうですが、当たり前のコンクリの床に現れた「月」は、なんとも幻想的で、空間の表情をがらりと変えてくれます。
赤い映像は、自分の体にiPhoneを密着させて撮った映像(試しにやってみてください!赤くなるんですよ)。金色の壁は、香港の文房具屋さんにあった金の紙を使って製作。
会場のあちこちでは、ノイズミュージックのレーベルを持つミュージシャンでもある津田さんがキュレーションした様々なノイズが流れていて、不思議なムードを盛り上げています。
入り口エリアから次のエリアにつながる通路のような空間が、この「RAIN」。なんと8000本もの糸がぶら下げられていて、優しくカーブする道がここに出来ているのです。
この糸、実は建築学科卒でもある津田さんにとっては日常的な道具の1つだった、「水糸」という水平面を測るための糸! 蛍光色の色合いは、糸がよく見えるようにという実用的な目的からのものだそうですが、このカラフルさが、津田さんにとっての香港の印象そのものでもあるのです。
「ネオンライトの看板。人混みの喧騒。常に周りを取り囲む高層ビル。せわしなく活気づいた地下鉄。木々がうっそうと茂った山並み。香港は全てが高密度で圧倒的な量で、人と自然と高層ビルがすべて同じ場所に同居してます。そんなエネルギーや鮮やかな色遣いを僕が吸収しながら、過去のモノトーンの作品をベースにして今回の展示を作っっているうちに、カラフルでまるで新しい作品のように変化して行ったんです」
まさに「Mutations」というタイトル通り!
展示会場のいちばん奥には、巨大なトレーシングペーパーを使って作った白い山並みに、津田さんが香港や日本で撮影した映像が映し出され、長く仕事してきたという音響アーティストの友人の作ったノイズミュージックが流れています。
まさに空間の中にさまざまなイメージや音が混ざり合って、複雑なレイヤーを作り出していて、そこから醸し出される香港のエネルギーが、このK11のギャラリーの中に充満してくるような高揚感に満ちています。
津田さんの話をじっくり聞いたから感じることもあれば、何も知らずに入った鑑賞者だからこそ感じられることもある。
「日本から香港に来て僕が香港に対して感じたことを、こうして表現しているのを、香港の人が今度どんな風に感じるかも聞いてみたいですね」と津田さん。
食べるのも好きだけど、やっぱりアートも好きだな♪ と新鮮な体験になったお仕事でした。
K11 Christmas Art Playground Exibition "MUTATIONS"は、2019年1月13日までの開催です♪
ARCHIVE
MONTHLY