かぐわしきみなと通信

NFT付きボックスで贈る最高級食材ギフトとは

2021年は保有資産が約30億円超えの超富裕層が世界最多の1万人だったという香港(東京は6800人で世界三位だそう)。人口約750万人のうち資産約1億5000万円以上という富裕層も50万人以上いるそうで、確かに日々、お金持ちのレベルと密度が何だかすごいなと感じさせられることがよくあります。

そして香港と言えばやっぱり食い倒れの街。美味しいもの、珍しいものを常に求める気持ちが強いのです。

先日、食通のお友達に連れて行ってもらったショップ兼カフェは、まさにそんな層をターゲットにしていて、何となく保守的なイメージがある日本のお金持ちとはまた違う、先進的な視野を持った超富裕層ならではの文化が確かにあって、目からウロコが落ちっぱなしでした。

そのお店は「REIGN」と言いまして、香港で今最も豪華で最先端なモールのK11 MUSEAにあり、アワビ、キャビア、トリュフなどの最高級食材を柱にしています。そう聞くと、昔からの得意客に長年同じものを納めているような、これも保守的なビジネスをイメージしていたのですが!

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超富裕層同士でギフトを贈り合うとなると、最高品質で最高級なことは当然として、相手を唸らせたり驚かせたりできることが大きなポイントになるのです。扱っている食品は世界中から集めた素敵なものばかり。たとえば自社工場で調理加工されるアワビ、スペイン産のフローラルな香りに癒やされる蜂蜜、特製アワビを使った麻辣XO醤、最高級キャビアやトリュフ、スイスのミシュランシェフがREIGNの食品に合わせて厳選したシャンパンやフレンチワインなどなど。

ちなみにお持ち帰りで一番の売れ筋は、この超豪華キャビアケーキ! 先日は香港で5本の指に入る大富豪のお嬢様がお父様の誕生日にシャンパンと共に買っていったとか。お値段はこのハート型ケーキ1ホールが1万6800香港ドル(約27万円)なり! とにかくゴージャスでテーブルが華やぎ、しっかりと美味しく、確かに甘いものより喜ぶ方が多そうです。

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超高級食材をプレゼントするとなれば、もちろんパッケージが大事になりますよね。もともとREIGNでは、ゴッホ、モネなど日本でも人気の高い印象派画家の代表作のアジアでの版権を所有していて、それらの作品を美しくプリントした麗しい化粧箱を選べることが評判でした。最近価格が高騰しているという中国のお酒「茅台(マオタイ)酒」もモネの『睡蓮』を使った美麗ボックス入りで販売しています。通常の茅台の箱はとても地味なので、贈り物にはこれは喜ばれそう。4面で続き柄になっているので、複数あれば並べて飾ることができますね、ということでコレクター心をくすぐるのでしょう。

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しかし、同じところに安住していては、世界最先端を日頃から見ている顧客に満足してもらえなくなります。そこで考案したのが、今や伝統的と呼ばれるかつての革新的芸術家達の作品をベースにして、モダンなビジュアルアートを組み合わせたNFT付きボックスシリーズ。

たとえばこちらはヴァン・ゴッホxスペースインベーダー!

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こちらもゴッホの風景画に眼光鋭い動物の目が! とてもかっこいいです。

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ピカソも人気です。こちらは元の絵とより溶け合ったタイプで、口にくわえたバラが追加されています。

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モダンアートの方は、スイスのデザイナーグループが担当しているのだそうです。

これがどのようにNFT付きになるのかというと、箱を購入した人または贈られた人、つまり箱の所有者になる人が、その箱に使われているアートのNFTの所有者になるのです。ちなみにNFTは付けないで箱だけ欲しい/贈りたいという場合は6000香港ドル(約9万円!)、NFT付きだと40万円以上になるという価格の違いがあって、同じデザインの箱は4個までしか作ることを許されません。ブロックチェーン上のNFTに加えて、実際の箱が限定数のみ存在するというのは、NFT価格を維持するのに有利なのだそう。

なるほど、NFTと言うと玉石混淆というのか、何がより価値を持つのか中々分かりづらい世界ではありますが、アートそのものにしっかりとした価値があり、なおかつ新奇性もあって、投資としての可能性もあるという面白いバランスで、とても好評なのだとか。

もちろん食品としての品質の高さは前提の上ですね。
アワビの場合は、東西で調理法もまったく異なりますから、好みで選べるように、西洋スタイルの場合はスイスのミシュランシェフJean-Marc Soldat氏が、広東スタイルの場合は香港伝説の名人、譚シェフが監修。

私も色々な食材を食べていますが、アワビほど調理法によって食感や味が変化する食材も珍しいのではないでしょうか。

カフェ&レストランでは、こちらの食材を使ったメニューをいただけます。この日は東西両方のスタイルを試してみました。フレンチスタイルは、南アフリカ産アワビを、アワビから出る汁で6時間スロークックしてあるそうで、さっぱりしつつもコラーゲンと風味が封じ込められて味わい濃厚。冷製でいただくのに最高の食感で、シャンパンにぴったりでした! この日はわさび醤油でいただきました。

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調理済みでこの食感を保ったまま日持ちするので、袋から出してスライスすればOKなのだとか。ちなみにSoldatシェフは、「ゴ・エ・ミヨ」で16/18ポイント取得の実力派シェフで、スイスエアのファースト&ビジネスクラスの食事監修もしているそうです。コロナ前は頻繁に香港にいらしていたそうです。


東洋版は、超高級なレンジでチン食品になっていまして、白飯と特製ソースを温め、調理済みアワビを載せ、海苔を散りばめます。アワビはもちろんですが、譚シェフ秘伝のこのソースが味わい濃厚でご飯が止まらなくなります。

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こんなボックス入りでした!

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その他、今や美肌食材の女王である魚の浮き袋や、価格が急騰している中国のお酒マオタイなど、ターゲット層に刺さる厳選された食材が揃っていました。

正直、今まで前を通り過ぎても、どんな店だかあまり分かっていなかったのですが、実際は、通りがかりのお客が買っていくというよりは、得意客のためのショールーム的な役割なのですね。ちなみに同じモール内に並ぶ最高級ブランド店も得意客で、VIP顧客へのギフトとして何百箱をオーダーしたりなどということもよくあるのだとか。

定型的ではない、目の肥えた人を相手にする世界でのギフト事情を垣間見る、刺激的なるひとときでした。


 

 

甲斐美也子

2006年より香港在住のジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、英国人と結婚し、ヨーロッパ、東京、そして香港へ。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港とマカオの情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。

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