かぐわしきみなと通信

宮崎の「きんかん」が麗しきアフタヌーンティーに

香港でもっとも大きなお祝いである旧正月が近づいてきました。縁起をかつぐのが大好きな香港では、見た目に黄色や金色、丸は縁起の良いものの代表格ですから、旧正月の飾りとして一般的なのが、たわわに実ったきんかんの木。

今年の旧正月まであと3週間ほどになったいま、街角でこんな風に販売され始めています。

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私自身にとっては、きんかんと言えば甘露煮というイメージがあるくらいで、印象の薄い果物だったわけですが、香港に来てから日本のきんかんがとても美味しいということを知りました。何しろ皮が柔らかくて、丸ごと食べられて、苦みが少なくてほどよい甘みがあるんです。

さてさて、私はもちろん本職はジャーナリストで、そこからのつながりで取材などのコーディネーターも長年やっています。最近はそれがまた広がって、日本と香港の間でいろいろな関係をつなぐ役割を頼まれるようになりました。

その1つが、宮崎県のきんかん! 香港での認知度を高めるお手伝いということで、まずはきんかんを使ったアフタヌーンティーをコラボで作りたいという相談を受けました。

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誰にお願いしようと考えたとき、まっ先に頭に浮かんだのが、フォーシーズンズ香港のエグゼクティブ・ペストリー・シェフ、リンゴ・チャンさん。

実はこのブログにも、いろいろなイベントで彼が作ったスイーツが登場しているんですよ(先日は「世界は愉快」のコーナーで、リンゴさんが作った、クリスマスのテイクアウト用アフタヌーンティーも紹介しています)。

こちらはリンゴさんが作ったテイクアウト用クリスマスのアフタヌーティー!

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今回フィーチャーしたきんかんは、全国のきんかん生産量7割を占める宮崎県でも最高品質の完熟きんかん「TAMATAMA」。温室で実を210日も完熟させてから収穫するなど、ものすごく手間ひまをかけて育てられていて、直径2.8cm以上、糖度16度以上のものだけを厳選しており、口に含むと、深みのある甘みが優しく広がっていきます。

日本の果実が大好きだというリンゴさん(もちろんリンゴも大好きだそう、笑)、相談を持ちかけて数日後に快諾いただいたときにはすでに、ほぼ完成形のメニューが上がってきたのには大変驚きました。

先日、その試食会をフォーシーズンズ香港で行いました。

コロナ禍の影響で、ただいま香港では1卓に二人まで、テーブル間は1.5m以上離すというルールがあるため、ボールルームでゆったりと、これはこれでアフタヌーンティーならではの贅沢な雰囲気になりました。

こちらは楽しそうに説明をしてくださるリンゴさん。

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これがその宮崎きんかんアフタヌーンティー!

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なんと1セットに15個分のきんかんが使われています。このようなセットでありがちなのは、スイーツ3種位だけが新作で、あとは普段のセットと同じというものなのですが、なんとこれはスイーツだけでなく、セイボリー(塩辛いもの)も含めたほぼ全アイテムに、きんかんがふんだんに使われているのです。

こちらに使っているTAMATAMAきんかんには、柔らかな甘さと、爽やかさを醸し出す苦みや、皮を噛んだときの心に残る食感など、いろいろな魅力があるわけですが、バラエティ豊かな食材の組み合わせや調理法の工夫で、それら1つずつが浮き上がってきて、きんかんだけでこんなに楽しめるなんて、と驚くばかり。ちなみに名物のスコーンは定番のものでしたが、きんかんジャムが添えてありました。

プレス写真撮影中のリンゴさん。カメラマンさんは、フィガロの香港記事での撮影もお願いしたことがある人なんですよ!

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たとえばスイーツ。きんかん果汁を使ったパフェクリームを入れて冷やしたモナカ、ほうじ茶ときんかんを合わせたスイスチョコロールケーキ、きんかんトライフルと塩ミルクチョコレートクリームなど、すでにこれだけでバラエティがばっちり。チョコレートとオレンジが合うので、きんかんも合うことは予想できるのですが、きんかんならではのすっきり感が味の深みをアップさせています。

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そして意外な組み合わせが、ほうじ茶ときんかん! 共に日本食材ながら、なかなか日本人が思いつかないことを海外のシェフはさらっとやってのけます。ほうじ茶のウッディな風味ときんかんの苦みは決して喧嘩せず、爽やかさをさらに引き出すのです。

切るとこんな風になっています!

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こちらはきんかんコンポートに、バニラ&ミルク寒天を浮かべ、上には紫蘇の花。日本を意識して日本食材を使い、その風味を生かしながらも和風にはならならず、独特な世界観になるところが、こんなコラボの面白いところ。

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意外性豊かで、なるほどと唸りっぱなしだったのが、セイボリー。

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フォアグラときんかんをミルフィーユに挟んで柚子のゼリーを載せたり、ダークサワードウにハムときんかんのピクルスを合わせたり。トリュフ入りブリーチーズときんかん+蜂蜜のジャムとクルミのパフ、サーモンのタルタルときんかんの皮というのもあっと驚く組み合わせの妙。甘酸っぱさがほどよくて、いろんな素材と相性が良くて、きんかんって落ち着きのある大人の風味なんだなと改めて教えてくれました。

こちらがサーモンときんかんのタルト! 

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さらに、このセットと一緒に楽しめるのが、きんかんモクテル(ノンアルコールカクテル)。フォーシーズンズにいる仲良しのバーテンダー、イメルダの作品で、ノンアルコールジンで有名なSeedlipときんかんジャムを合わせたこのホットドリンク。ジンに使われているジュニパー独特の芳香ときんかんのコンビネーションが最高にマッチしていて、タイムなどのハーブの香りも混ざり合い、とても高度な風味なのです。

もともと風邪にの時にいい食べ物とされてきたわけですから、ビタミンCがたっぷり。体に優しく全身が温まります。

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いつもは試食に同席している、たくさんのメディアやインフルエンサーの皆さんが来てくれて、みんなあまりの美味しさに興奮気味。メディア試食が盛んな香港では、皆、過去にとんでもない数のアフタヌーンティーを食べて来ていますから、めったなことでは驚かないのですが、そんな百戦錬磨の食通たちを虜にしたのは、TAMATAMAの質の高さとリンゴさんの実力のなせる技だと思います。このマッチングを考えついた自分もついでに褒めてあげたい(笑)

最後にリンゴさんと私、イメルダ、宮崎県の香港PR担当の木邨さんと!

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毎朝1個ビタミンC補給にきんかんを食べるのが習慣になりそうです。
 

甲斐美也子

2006年より香港在住のジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、英国人と結婚し、ヨーロッパ、東京、そして香港へ。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港とマカオの情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。

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