England's Dreaming

英国スターが共演。あのクリスマスの名曲が再び!

あなたのお気に入りのクリスマスソングは何ですか?

12月を彩る数々の名曲のなかで、私にとってバンドエイドの『Do They Know It's Christmas?』は毎年聴きたくなる一曲。 

バンドエイドは1984年に行われた、エチオピア救済のための音楽のチャリティープロジェクト。この年に起きたエチオピアの飢饉を受けてミュージシャン、ボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロが「彼らは今、クリスマスだと知っているだろうか?」というタイトルのこの曲を作り、イギリスのポップシーンの最前線で活躍していたアーティストやバンドに声をかけて共にレコーディングをした。

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『Do They Know It's Christmas?』の12インチシングルのジャケットはイギリスを代表するポップアートの巨匠、ピーター・ブレイクが無償で手がけたことでも知られている。

11月末に制作して12月初旬には店頭に並ぶという異例の速さでリリースされ、音楽雑誌や大衆紙も協力して大きく取り上げたこともあり1週間で100万枚を売りあげて当時の記録を更新。これに伴いウェンブリーアリーナでは数々のスターたちの共演によるライブエイドと銘打ったコンサートも開催し、最終的には1億5000万ポンドの寄付を集めた。

レコーディングの参加クレジットを見ると、スパンダー・バレエ、デュラン・デュラン、ワム!、ボーイ・ジョージ、スティング、バナナラマ、ポール・ウェラーなど、錚々たるメンバーの名が並ぶ。いつもチャートのランキングを巡って火花を散らしていたバンドやミュージシャンたちが一堂に介してマイクをシェアをして歌っている姿は、イギリスのロック・ポップシーンが大好きだった当時の私にはとても印象的だった。

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12インチシングルのジャケット裏には参加したアーティストたちの集合写真が。

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そして今年はそのリリースから40年という節目。イギリスのTV局、BBCでそのメイキングの様子が初放映された。 

この映像を見て改めて感じたのは80年代ファッションのパワフルさ!肩のラインを強調したボックスシルエットのジャケットやトップス、大胆なストライプ柄、動くたびにふわふわ揺れる大きなヘア!そのなかでバナナラマのスタイルは3人ともとてもかわいい。

プロジェクトを聞いて最初に駆けつけたのはポール・ウェラーで、レコーディング前日からボブとミッジに加わっていたことも今回初めて知った。

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興味深かったのはボブの当時のパートナーでTVプレゼンテーターのポーラ・イェーツが録音の合間にジョージ・マイケルにインタビューしていたこと(彼の登場は28:48くらいから)。

この会話の中でジョージは当時彼が在籍していたデュオ、ワム!もクリスマスソングをレコーディングしたばかりで「Do They Know Its Christmas?」とクリスマスウィークのチャートナンバーワンを争うことになるんじゃないかと心配しているのだ。ポーラが曲のタイトルを訊ねると、その答えはなんと「Last Christmas」。さらにはポーラにねだられて曲の冒頭を披露すらしている(その後、ポーラが「ジョージが私の願いに応えて歌ってくれたのよ!」と興奮している画像が続く)。

「Last Christmas」は今ではクリスマスソングのクラシックとも言える名曲だけれども、ジョージの心配は的中してこの年のチャートでは「Do They Know It's Christmas?」に阻まれて2位止まりだった。それでも彼はワム!で相棒だったアンドリューと共に売り上げをバンドエイドのチャリティに寄付している。

14日にはBBCで「Last Christmas」のオフィシャル・ドキュメンタリーも放映される予定だとか。こちらでもこの曲にまつわる秘話が披露されるのかも。

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「Do They Know It's Christmas」は2004年、2014年と接目ごとに新メンバーでリリースされている。さらに今年はそれまでの映像と音声をフィーチャーして新たなリミックスが登場。オリジナルのメンバーの歌声とハリー・スタイルズ、エド・シーラン、サム・スミスらがハーモニーを奏でている。

1985年、2004年、2014年ヴァージョンはすべてクリスマスの週のチャートナンバーワンになったけれども、今年はどうだろう?

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そして私にとってこれを聞かずにクリスマスはやってこないというほどに大切なもう一つの曲がある。それはジョン・レノンとオノ・ヨーコの『Happy Christmas (War Is Over)』。

 

争いごとがなくなり、誰もが心安らかに年末年始を迎えることができますように。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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