England's Dreaming

いつか再びこの目で見る時まで@ロンドンコレクション

9月のロンドンはひときわ華やか。ずっとそう思っていた。ロンドンのファッションデザイナーたちの新コレクション発表の場であるロンドン・ファッション・ウィークや、プロダクトなどのデザインのエキシビション、ロンドン・デザイン・ウィークがあって街中に洒落た着こなしの人たちがあふれるから。でも今年は違う。多くのイベントがデジタル開催となり、どこも閑散としている。たとえ人出があってもその風景はどこか寂しげだ。

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老舗セレクトショップ「ブラウンズ」があるサウスモルトン・ストリートの頭上にはこんなディスプレイが。以前は活気あったここも、今では人通りはとても少ない。

ファッションウィークもほとんどのショーがデジタルとなった。デジタルだと当たり前だけれども生のショーとはかなり違う。

インビテーションの封を切るときのワクワクに始まり、会場へ向かう道すがらの風景、集まってくる人たちの装い、半年ぶりに再会する顔見知りのプレスや編集者たちの笑顔、ショー開催直前の会場内が暗転する瞬間、スポットライト、モデルたちが歩く靴の音、衣擦れの音。そんなすべての高揚感がないのがとても寂しい。

そしてショーの最中にモデルたちの纏う服や小物のディテールが気になって、それらを目で追いたくても映像だと当然ながらカメラは私の思い通りには動いてくれない。もう一度よく見たくても画像はどんどんと流れていって、あっという間にフレームの外に消えていく。悲しい。

でもシモーン・ロシャはショールームに呼んでいただいて、21年春夏の新作を直接見せてもらった。

モデルがランウェイを歩くような従来の見せ方をした映像が多い中、シモーン・ロシャはプレゼンテーション風で一味違っていたのも好きだった。

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コレクションからのアイテムを着たモデルを実際に見て、改めて素敵さを実感。

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丸みを帯びた女性らしいフォルムでヒップやバストを強調した服が目立つ。

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襟元から裾まで流れるような大きなフリルのドレス。

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裾にはシモーンのイニシャルの刺繍が。

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真っ白なTシェツの袖にも赤でSとR。

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ところどころに童話に登場するようなお城を刺繍したロマンチックなドレス。

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シモーンの名のアルファベットをあしらったピアス。

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シモーンのコレクションを見てつくづく感じたのは「物語は続いている」ということ。

個人的に彼女のショーは昨年9月にロンドン郊外のアレクサンドラ・パレスにあるヴィクトリア時代の劇場で行われた20年春夏が特に記憶に残っている。力強くてロマンチックで、でもちょっとだけ古いお屋敷を訪れた時に感じるような不気味さも漂っていて。

それは20年秋冬にも、そしてこの21年春夏にも引き継がれている気がする。むしろもっとパワーに溢れていて、彼女は自分をしっかりと捉えて反芻しながら螺旋階段を登っていくように高く高く上昇していっているんだなあと思った。

また、別のロンドンのデザイナー、モリー・ゴダードが「ガーディアン」紙で語っていたことも印象的だった。

ロックダウンでお店が閉まり、オーダーが次々とキャンセルになった時「もう二度とコレクションを作ることはできないかもしれない」と打ちひしがれていたという。

でも再び街が少しづつ動き出した時、彼女もデザインを再開。最初はシンプルな白いドレスを10点だけと考えていたそうだが、最終的には彼女らしいカラフルなコレクションが出来上がったという。

来年2月の次のファッション・ウィークもまだ元には戻らないかもしれない。でもこうして「語り(創り)続ける人」がいる限り、私はやっぱり追いかけていたい。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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