England's Dreaming

逃避と現実の狭間で。今の私のイギリス暮らし。

年明け早々に3度目の厳格なロックダウンとなったイングランド。もう3度目ともなると慣れたもの、と言いたいところだが、寒く暗いこの時期に、ハイストリートに出かけても食材店と薬局などの限られたお店しか開いていない日々は寂しく辛い。

家のなかで出来る、気持ちをアップしてくれることを考える。

昨年から今年にかけて、前の住人が塞いでしまっていた古い暖炉と煙突を、打ち付けられた板と壁紙をばりばり剥がして発掘し、そこに薪ストーブを置いた。

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薪ストーブは最近静かなブーム。在宅時間が増えたことで新たに家に取り付ける人も多いらしい。我が家の場合は設置と壁の石膏塗りは職人さんにお願いしたけれど、それ以外はDIYでやってみた。

木が燃える香りと爆ぜる音。そして橙色のゆらめく炎を見つめていると、心が落ち着いてくる。

そして薪ストーブの上にはコレ。キャストアイロンのジャケットポテト・クッカー。家族からの私へのクリスマスプレゼントとして、昨年末に我が家にやってきた。

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薪ストーブ同様に、無骨な見た目でヘビーデュティーな働き者。

朝、ストーブに火を焼べる時に中にジャガイモを入れて上に置いておくと、ランチタイムには熱々のジャケットポテトが出来上がっている。ロックダウンによる在宅勤務とホームスクーリングで毎日家族全員が家にいるから、簡単に昼食が出来てとても助かる。

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蓋をあけると、こんな感じ。ストーブ上部から熱がクッカーに伝わって、中のおいもを調理してくれる。

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イギリスの冬のコンフォートフードの定番、ジャケットポテト。シンプルにバターの時もあれば、ツナマヨやチリコンカンをトッピングすることも。

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二階へ上がる狭い階段周辺は壁をレモンメレンゲみたいな色に塗り、ずっと昔に買ってそのままになっていたポスターを額装して飾ってみる。

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右の「ベルジェ45」のポスターは、どこかのミュージアムショップで買ったもの。左のレイモン・サヴィニャックは、彼が住んでいたフランスのトルヴィル・シュル・メールを訪れた時に手に入れた。

1日に何度も手に触れるバスルームのドアノブは、以前マーケットで見つけたヴィンテージの磁器のものに換えてみた。ころんとしたシェイプとつるんとした感触は、握るたびにちょっと嬉しくなる。

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地元のアンティークフェアで、空き箱のなかで埃まみれになっていたものを見つけて購入。家のすべてのドアノブを、これに換えられるくらいの数を買ってくればよかったとちょっと後悔するほど今ではお気に入りに。

庭には野鳥のための餌箱を置いた。すばしっこい鳥たちを写真に収めることはできなかったけれども、こんなお客さんも最近は毎日やってくる。

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人懐っこさから、どこかの家の飼い猫なのは間違いないのだろうけれども、なぜか散歩の途中に我が家に立ち寄ってくれる。

寄せてくる頭を撫でたりしながら、一緒に庭で過ごす。小さな生き物との時間は、たとえ僅かでも癒しとなる。

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イギリスではいま、暗いニュースばかりの未曾有な日々への打開策として、人々へのワクチン接種が猛烈な勢いで進められている。

病院だけでなく教会などの場所も借りて、1日に何十万人へもの供給を続け、この1ヶ月半ですでに人口の10%以上が1度目の接種を終えている(1月26日現在)。高齢者や基礎疾患のある人たちが最初に受けて、その後は順次対象の年齢を下げている。私の順番はたぶん春には巡ってくる。

もちろん受けないという選択もできるけれども、私は接種するつもりでいる。

その理由は、病気で苦しみたくないというのが一番だけれども、現在は他にパンデミックを止める方法がないこと、たとえ私一人分であっても医療機関の逼迫を回避できたらと考えること、私が感染して家族や友人たちを不安にさせたくないという思いからだ。

家で現実逃避しながらぼんやりとする一方で、突きつけられた事実を痛いほど感じている。

その二つのバランスをとりながら毎日を送る。ずっと先なのかもしれないけれども、突破口はきっとあると願いながら。

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今の季節は午後早くでも太陽の位置はこんなに低い。でも寒くて暗い時期があるからこそ、イングランドの夏はとびきり美しい。辛さの先には良いこともある。そう思いたい。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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