
心をぽっと照らしてくれる秋の味覚、イギリスのりんご。
待ちに待った、りんごの旬がやってきた。
木箱いっぱいのりんご。種類が違えば色味も異なる。
ファームショップやマーケットでたくさん売られていて、その光景にわくわくする。大きな庭を持つ家では、りんごの木があることも多い。たくさん取れすぎたのか「ご自由にお持ちください」と書いたりんごを入れた箱が門の前に置いてあることもしばしば。木がなくても、お隣から伸びた枝にたくさん成っているから、「いくつか失敬する」なんて話もあったり。
イギリスのりんごは手のひらにのるくらい小さいものが多い。食べきりサイズだから、ひとりの時のおやつにもぴったり。
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りんごの品種は世界中で7500もあるという。私の家のそばの小さなお店でも、これからの季節は少なくとも3、4種類が常に店頭に並ぶ。
1827年にコックスさんという人が開発してから現在までずっと広く愛されているコックスズ・オレンジ・ピピン。見た目は日本の梨のようで香ばしさが魅力のラセット。強い酸味があるので砂糖をまぶしてアップルパイにすると格別においしいブラムリー(これは例外的に大きなりんご)。これら定番の品種は、21世紀に入ってから開発されたジューシーで香り高い人気種ジャズなどに比べると、甘さだけでなく酸味も強くてちょっと野生的。もちろん、どのりんごもも大好きなのだけれども、私が食べてほっとするのは、昔からあるりんごのほう。それはきっと、私がイギリスに来たばかりの頃に味わった、懐かしさがあるからなのだろう。
ファームショップの店先にあった、それぞれのりんごについての説明書き。「いちごみたいな味」なんて説明を読むと、思わず試してみたくなる。
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「A was an Apple Pie」とマザーグースに歌われるように、りんごのお菓子の筆頭はなんといってもアップルパイだと思うけれども、それよりも手軽で我が家でよく作るのはアップルクランブル。いちょう切りにしたりんごをオープン皿に敷き詰めてシナモンをまぶし、小麦粉とバターとお砂糖で作ったクランブルで蓋をしてオープンで焼いたデザートだ。
レシピ本をみると大体はりんごの皮は剥いてとあるけれども、華やかな赤い色を切り落としてしまうのが勿体なくて私はいつもそのまま使う。そしてクランブルにはオーツ麦を混ぜる。小麦粉の半分を全粒粉にすることも。焼く前にさらにオーツ麦をトッピングして、その上にザラメ糖を一さじふりかける。りんごの皮、オーツ麦、そしてザラメ糖の、ぎゅっぎゅっ、もくもく、かりかりとした、さまざまな食感が楽しくて好きだから。
我が家のアップルクランブル。色味がなくて不愛想なのも、イギリスのデザートならでは(笑)。
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お皿に盛りつけたあとはイギリスのデザートのお約束、熱々のカスタードソースを主役のアップルクランブルが見えなくなってしまうくらい、なみなみと注ぐ。
アイスクリームを添えてもおいしいけれども、イギリスらしさにこだわるのであればカスタードソースは外せない。
暗くグレーの日々が続くイギリスの秋と冬。その間この可愛い赤い実は、お守りみたいに私のキッチンにいつもいくつも並んでいる。
りんご果実園にも行ってみたけれども、すでに収穫を終えたあとだった。残っている実は鳥用かな?
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