England's Dreaming

アニヤ・ハインドマーチの、ロンドンの「ヴィレッジ」。

もしもイギリス人が自分の家がある場所を「ヴィレッジ」と形容する場面に遭遇したら、それは不便な田舎に暮らしているという謙遜ではなく、ご自慢のエリアにお住まいなのだなと解釈したほうがいい。

「ヴィレッジ」とは、ご存知の通り「村」という意味なのだけれども、イギリスではそこにネガティブな意味はあまりなく、むしろ非常に良いイメージで語られることが多い。

交通網が張り巡らされて沢山の店舗が並ぶ、都会的な便利さや派手さとは無縁でも、小さな集落ならではの独自のキャラクターと住民による温かなコミュニティがあり、足るを知り、のんびりと暮らせる場所。そんな感じだろうか。カントリーサイドの暮らしを好むイギリス人には、それはとても魅力的なのだと思う。

そんな「ヴィレッジ」はロンドン内にもある。すぐに思いつくのはハムステッド・ヴィレッジやダリッチ・ヴィレッジ。ちなみに、どちらも市内で屈指の高級住宅エリアだ。

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ロンドン中心部のベルグレイヴィアには、デザイナー、アニヤ・ハインドマーチによる「ザ・ヴィレッジ」がある。ポント・ストリートの一角に、彼女の店五軒を並べた「村」。

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信号を渡った先の黒い外観の店が「ビスポークショップ」。隣のピンクの店が現在はネイルサロン「アニヤズ・カラーセレピー」となっている「ヴィレッジホール」。信号機に付けられた目にも注目!

もともとフラッグシップショップだった場所はビスポークショップ。こちらはその名の通り、パーソナルオーダーによる、自分だけの一品を注文できる店だ。

その向かいにあるのは、プラスチックショップ。アニヤの有名な、ペットボトルをリサイクルされた素材で作られた「I Am A Plastic Bag」のバッグから展開されたコレクションを揃える。

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プラスチックショップの奥には、おなじみの「I Am A Plastic Bag」の文字が。

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さらにはオーガナイズのためのバッグやポーチを扱う、ラベルドショップも。

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「ヴィレッジホール」と名付けられたスペースは、数カ月ごとに店舗内容が変わる。これまではヘアサロン、クリスマスストアなどになり、現在はネイルサロンのアニヤズ・カラーセラピーに。4月9日からは犬にまつわるイベントストアになるとか。

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ネイルサロン、アニヤズ・カラーセラピーのウィンドウに飾られたポスター。わざわざこれを作るほど凝っているのもアニヤらしい。

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そして、アニヤ・カフェ。かつてイギリスのあちこちにあったレトロなカフェを思わせるインテリアで、朝食からアフタヌーンティー、夕刻のカクテルまでが味わえる。選りすぐりの素材を使っているから味はもちろんのこと、アニヤならではのプレイフルな演出が楽しい。

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一見普通のクラシックなカフェ。でも店内はアニヤならではのユーモアで満たされていた。

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ケーキやビスケット、チョコレートの箱も可愛い。

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どれにしようか迷ってしまう、キュートなケーキの数々。

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砂糖がけの甘いパンは笑顔、ラテには切手柄のアイシングビスケットを添え、お砂糖の包み紙には目が付いていて、ナプキンにはYUM(美味!)の文字。
奥では二人のご婦人がおしゃべりに興じていた。

いわゆるイギリスの一般的な「ヴィレッジ」とはちょっと違うけれども、パンデミックでネットショッピングが当たり前になったいま、こうして「アニヤ村」で実際に品物を目にしてのショッピング(たとえウィンドウショッピングであっても!)そしてお茶の時間は、忘れかけていた楽しさを思い起こさせてくれた。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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