
イギリスらしさ満載、愛しのリージェンシーカフェ。
今のロンドンにはモダンでおしゃれなお店があちこちにあるけれども、私はやっぱり昔ながらの「グリーシースプーン」が好き。直訳したら「油でこてこてのお匙」。その「グリーシースプーン」って?
改めて辞書を引いてみると「メニューの多くが油で揚げた、もしくは炒めた食べ物の安食堂およびカフェ」とある。アメリカだったらダイナーみたいな感じだろうか。イングリッシュ・ブレックファストやランチのオムレツやジャケットポテトを食べるような気軽なカフェのことだ。
ロンドンには名店と呼ばれるグリーシースプーンがいくつもある。そのうちの一つ、リージェンシーカフェは1946年創業の歴史あるお店だ。
リージェンシーストリートとページストリートの角に位置する。赤い小さなCafeのサインが目印。この日はお昼前だったのに、すでに外まで行列ができていた。
開店当時から変わっていない白いタイル張りのインテリアがレトロでとても可愛い。有名ファッション誌のファッションページや、映画やテレビドラマのロケーション(近年ではエルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』に登場)として頻繁に使われているというのも納得だ。
ボクシングやサッカー選手の写真が店内を飾る。それもまたイギリスらしい。
常連のアーティストたちが描いたカフェの絵も。
豊富なメニューとその美味しさでも評判が高く、2013年にはハイエンドのお店に混ざってロンドンのベストレストランの第5位に選ばれたほど。
ここでの注文方法は独特で、まずはカウンターでオーダーして自分の名前を告げ、お金を払ってテーブルに座って待つ。料理ができると名前が呼ばれるのでカウンターまで取りに行く。いつも店内は混んでいて賑やかだから、離れた席に座った時には呼ばれているのを聞き逃さないようにちょっと緊張する。
この日私は名物のイングリッシュ・ブレックファストにするかどうか悩んだ末に、ハム・エッグ・アンド・チップスをオーダー。これもまた鉄板のイギリス飯。
ハム・エッグ・アンド・チップスに、グリルしたトマトは追加。テーブルにソース類がないので受け取る時にケチャップもお願いしたら、お皿の端っこにぎゅっとたくさん絞ってくれた。
チップスとはイギリスのフライドポテトのこと。人差し指くらいの太さで外がカリカリで中はほくほくの美味しさなんだけれども、リージェンシーカフェのチップスはまた格別なのだ。
紅茶はカウンター内の大きなステンレスのポットから熱々を、ミルクをあらかじめ入れたマグカップになみなみと注いでくれる。少し濃いめで、それがミルクのまろやかさと相まって、一口飲むと心がふわりとほどけていく感じ。イギリスでは「ビルダーズ・ティー(大工さんのお茶)」と呼ばれる、気取っていなくて庶民が毎日4、5杯はごくごくと飲むような紅茶だ。ホテルのラウンジでカップ&ソーサーで飲む一杯とはまったくの別物なんだけれども、普段のイギリスを象徴しているようで大好きなのだ。
そして私はこの店にちょっとした思い出がある。それはここでフィガロジャポンの前編集長R美さんと食事をしたこと。R美さん、ロンドンに来ることがあったら連絡してください。そしてまたリージェンシーカフェで会いましょう!
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