England's Dreaming

ロンドンの小道で出会った、麗しい春の香り。

その日私は『燃立つ6月』を観るために、ロンドンの裏道を小走りで抜けてロイヤル・アカデミーに急いでいた。

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その後、無事に鑑賞できた『燃立つ6月』。ヴィクトリア時代の画家フレデリック・レイトンの代表作ともいえるこの作品は現在ロイヤル・アカデミーで特別展示中。2025年1月12日まで。無料!

でもその足をジャーミンストリートでふと止めたのは、そこにある老舗のパフュームショップのショーウィンドウにたくさんの本が積み重ねてあったから。香りのお店のはずなのになぜ?そしてその背後に飾られている写真はこれから観に行くヴィクトリア時代の絵画の世界観とどこか重なる。本の上におかれた香水瓶のラベルには「WILDE」の文字が読み取れた。

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クラシカルな設えが素敵なフローリスのショーウィンドウ

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フローリスからこの春お目見えした香り「ワイルド」は、19世紀の作家で『ドリアン・グレイの肖像』や『サロメ』など今なお愛され続けている小説で知られる作家オスカー・ワイルドにオマージュを捧げている。『燃立つ6月』を描いたフレデリック・レイトンと同じ時代を生きた人だ。

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ヴィクトリア時代のエッセンスを感じさせる「ワイルド」のキャンペーンビジュアル

ワイルドはフローリスの顧客でもあり、洒落者だった彼は胸に一輪のグリーンのカーネーションを飾って(パリではこれは同性愛者であることを示すサインだったとか)しばしばこのお店を訪れたという。そして「ワイルド」は彼が愛用の香りでフローリスで長年の定番だった「マルメゾン」のレガシーを引き継いでいて、その21世紀版ともいえそうだ。

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ワイルドの冒険心、大胆な愛、強い意志を香りに置き換えたこのフレグランスは、まずはベルガモットと優しいシトラス・ブロッサムが、そののちにサンダルウッドやオリバナムなどの甘い暖かさに支えられて、ホワイトジャスミン、ジンジャー、そして彼のシンボルでもあるグリーンカーネーションが香る。ロマンチックでも甘すぎず、密かにセンシュアル。男性はもちろん女性も楽しめる、洗練の香りだ。

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「ワイルド」のパッケージにはオスカー・ワイルドのラブレターからの文字がフィーチャーされているのも素敵。

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その数日後、ソーホーのビークストリートを歩いていて、お店とお店との間の壁にフレグランスのサンプルが取り付けてあるのを見つけた。なにこれ?と不思議に思っていたら、そのそのすぐ横にファーンのショールームを発見。ファーンはまったく新しいアイデアを持つ香りのブランドだ。

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壁に取り付けられたサンプルのボトル。道ゆく人も自由に試せる気軽さ。

ここのオードパルファムを手に入れるのには、まず彼らの顧客リストに名を連ねる必要がある。その後は春夏秋冬の年に4回、季節ごとの新しいオリジナルの香りを届けてくれるシステムになっている(現在発送はイギリスとアメリカのみ)。フレグランスの素材はオーガニックで、パッケージは100%生分解性のサステナブルなのもうれしい。

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ビークストリートにあるファーンのショールーム。

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ショールーム内では、これまでリリースしたフレグランスにもトライできる。

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この春に登場の「Spring 24」は、旬の味覚でもある甘酸っぱいルバーブがテーマ。グレープフルーツやマンダリン、ビターオレンジの香りののちにはネロリやジャスミンの芳香が立ち上る。

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イギリスの誰もが大好きなルバーブの香りの「Spring 24」

6月に発売が予定されている「Summer 24」はトスカニーの丘をイメージしているのだとか。ブロッドオレンジやレモン、グレープフルーツなどにパチョリ、ナツメグが続くフレッシュながらもエキゾチックなフレグランスとなるそうだ。

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次作の「Summer 24」にも期待が高まる。楽しみ!

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そんなファーンに興味津々なのだけれども、現在顧客リストはいっぱい。ウェイティングリストに名前を連ねることにした。ビークストリートのショールームで販売してくれるのだけれども、せっかくならば素敵な梱包が送られてくるのを、わくわくしながら待ちたくて。

顧客リストに名が載りましたという知らせがくるのを今は楽しみに待っている。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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