England's Dreaming

創る喜び。ルシアン・デイの「シルク・モザイクス」

ロンドンのマーガレット・ハウエルのお店で現在開催されている「ルシアン・デイ:シルク・モザイクス 1975-1993」がとても素敵だ。

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モダンなインテリアの店内で、ルシアンの作品が際立つ。

ルシアン・デイはグラフィカルで大胆なテキスタイルデザインで知られる、イギリスのミッドセンチュリー・デザインの立役者のひとり。才能溢れる彼女は布だけではなく壁紙や陶磁器、テーブルリネンなど多岐に渡って手がけたが、1970年代後半から1990年代の終わりには小さなシルクを縫い合わせて作る壁飾りの制作に力を注いだ。

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ルシアンと彼女の夫でやはりイギリスの名デザイナーのロビン・デイについての本「ロビン&ルシアン・デイ パイオニア・オブ・コンテンポラリー・デザイン」はずっと大切にしている一冊。

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その裏表紙から。ロビン・デイとルシアン・デイ。

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今回の展示でロビン・デイも愛情(?)出演。ルシアンの作品に並んで飾られているキャビネットは、裁縫道具や素材の収納用にロビンがルシアンのために手作りして贈ったもの。

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彼女がそれらを「シルク・モザイクス」と呼んだ。それは作品を作り出す絹地の断片一つ一つはとても小さくて、さながらローマ遺跡にあるモザイク画を構成する小片のようだったから。そしてまさにモザイク画に負けないくらい、限りない美しさと力で溢れていた。

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大作から小さなものまで、どれも明るいリズムに溢れていて観る人の心を踊らせる。

手縫いのステッチ、裁縫箱と布の断片や型紙、隅に施されたイニシャルのL。これらは手を動かす楽しさ、物作りへの情熱、完成で得る達成感をダイレクトに伝えてくれているようで、ぐっとくる。

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手で作り出されたものやそのための道具って、どうしてこんなに美しいのだろう。

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70年代になってからイギリスのテキスタイル産業が衰退し始めてデザイナーとしての制作の場が制限され始めた頃、作り続けるためにルシアンが確立した「シルク・モザイクス」。彼女の類い稀なる才能と制作への限りない意欲、溢れんばかりの創る喜びを私に語りかけてくるようだった。

帰りがけにマーガレット・ハウエルがこの展示に合わせてつくった2025年のカレンダーを買った。来年はルシアンの「シルク・モザイクス」が私の壁を飾ってくれる。とてもうれしい。

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2025年が終わっても、きっとずっと取っておくと思う。このカレンダーは日本でも11月中旬から2750円(税込)でマーガレット・ハウエルのお店で販売される予定だそう。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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