35歳、シングルマザーのエディターが、パリに移住してみたら

フランスの学校と日本の学校の違い、子どもを海外留学させるタイミングとその理由。

こんにちは。フィガロジャポン3月発売号はパリ特集です。この1ヵ月、撮影したり、ホタテにあたったり、原稿書いたり、ファッションウイークに参加したり、友人とごはんを食べたり。そんなこんなでバタバタと動いているうちに、あっという間に1ヶ月が経ってしまいました。

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パリ特集の撮影中に出会った可愛すぎるクロネコ。

前回まで、フランス留学を決めてビザの申請をするところまで綴りました。フランスのビザは進まないとは聞いていましたが、その噂は本当で、ビザが届いたのは、なんと出国予定日の2週間前!そこから東京の家を引き払って、仕事もすべて抱えたまま渡仏。息子とふたりで合計スーツケース3つという身軽さでパリに来ました。引っ越し、仕事、渡仏準備、息子の学校手続きと、気が狂いそうな日々。いや、おそらく狂っていたと思います。パリで荷物を開けたら、スーツケースから口紅が10本出てきて騒然としました。医薬品や食料品、あんなに頑張って減らしてきたのに!

さて、息子の学校手続きも、なかなか大変だったのですが、そもそも、なぜ高校1年生の夏というこのタイミングだったのか?そのあたりを少し綴ろうと思います。

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三寒四温な日々。春よこい。

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息子は海外教育の方が合うのかもしれないと思っていたものの、コロナ禍もあり、気づけば中学校生活も終盤でした。いろんなことをスムーズに計画することが難しくなったこの時代、まずは日本で高校受験をさせようと思いました。この先、海外に出てうまくいかない事態になった時、日本の高校に籍があったという実績があった方が良いと思ったのです。そして、本人に合う高校に恵まれて、楽しい高校生活がおくれるようなら、それはそれで日本で過ごしたらいいと思っていました。

しかし、受かったのは、あまりにも厳しすぎる高校。入学式で、やたら坊主頭の子が多いなと思っていたら、前髪の長さは眉毛の上でないといけないという校則があったのです。息子は、美容室に行った翌日、「もう一度髪を切れ」と言われて帰ってきました。「昨日切ったばかりです」と、そのまま登校し続けていると、「美容室の予約ができないなら、自分で髪を切れ」と言われ、最後には「この髪では学園祭の舞台に出さない」と言われる始末。リーゼント?金髪?一体どんな髪だったの?って、お思いでしょうが、いたって普通の黒髪、横の髪は耳の上、前髪は眉毛ギリギリのライン。前髪が眉毛の上か、眉毛ギリギリかって、何がそんなに問題なのか?息子は、なぜ?誰が決めたの?な日本の学校ルールにまたもや躓き始めました。

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癒される春の花たちを水切り。

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そして私自身も、諦観していた中高時代を思い出しました。ミッション系女子校の中高で、謎の校則やルールは数え切れないほど。なかでも腑に落ちなかったのは、中高で一度きりだった修学旅行での出来事。ガムを噛んでいたとか、夜にホテルのドアを開けたとか、そんな謎の理由の積み重ねで、私たちの班は謹慎処分になり、沖縄の海を眺めながら、バスの中でずっと反省文を書かされたのでした。「私はこの学校を卒業してから、十年後二十年後に、このことを思いだして、やっぱり先生たちのやり方は不当だったと思うとおもいます」(『海がきこえる』)反省文なんてやってられるかと、この言葉を丸パクリした記憶があります。そして、本当にこの言葉どおり、20年経ったいまでも、やっぱりあの時の学校の対応は不当だったと思っています。そんな風に学生時代におかしいと思っていた校則やルールが、20年経っても変わらないままあることに愕然としました。

あの頃、先生に何度も怒られたスカート丈の3ミリが、その後の人生に何か役に立っているだろうか?息子の前髪の3ミリが、彼の人生にどんな影響を及ぼすのだろうか?私が学生時代に対峙した不条理を息子にも味わわせないといけないのだろうか?そんなことを考えて、変わらない場所なら自ら変わるしかないと思い、このタイミングでのパリ移住に迷いがなくなりました。

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ファッションウィークで、何度も見たこの景色。

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また、日本の詰め込み型教育に疑問を感じていたことも後押しになりました。息子の高校の入学式で驚いたのは、大学合格の実績と推薦に必要な成績の話ばっかりだったこと。いま高校合格して、勉強から解き放たれたばかりだけど!?と唖然とし、日本の詰め込み教育も20年以上変わっていないことを知りました。

月曜から土曜まで学校に行って、塾に行って、勉強をして何になるのか、何に向けて勉強しているのか、そんなことを考える余裕もないまま、ひたすら勉強する日本の子どもたち。将来が見出せず、大学が目的化し、なんとなく大学に行って気がつけば就職活動。社会に出て、本当に自分に必要なスキルに気づいた時には、もう学ぶ時間やお金がない。私自身もそんなひとりだし、そんな風に大人になった人たちをたくさん見てきました。

一方、フランスの学校は月曜から金曜まで、水曜は昼までで帰宅。バカンスは多く、宿題は少なく、いわゆる学習塾というものも存在しません。休むことや遊ぶことも子どもの勉強だよ、と言わんばかり。中学と高校の卒業時には卒業認定試験がありますが、高校や大学の入学試験はなく、面接や普段の成績で決まります。普通教育、工業、職業など、高校によっては大学に入る道を失ってしまうため、ある意味厳しいですが、その分、普段から自分の進路や将来を意識せざるを得ないようです。中学生や高校生が気になる会社にインターンに行ける制度が整っていて、どんな大手企業や有名企業も、インターンの受け入れを拒否できません。ちなみに、フィガロ社もインターンを受け入れていて、中学生の女の子たちが撮影現場を見にきていることもあるそう。いいなあ。

詰め込み教育でも、しっかり将来の目標を見据えている子は道を作るし、真面目にコツコツと勉強することで身を結ぶ子もいると思います。しかし、やりたいことがいろいろあって、全部体験してみないと将来を絞れない気がする、とぼやく息子には、日本の教育制度では消化不良になるだろうし、フランスのインターン制度はピッタリなのでは、と思っています。そして、あの会社も、この会社も、いろいろ打診してみようと、私自身が張り切っているのでした。

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中学生の時にフィガロ社のインターンやりたかった!

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鈴木桃子

パリ在住エディター、ライター。1987年生まれ。早稲田大学在学時、20歳で結婚&出産。出版社勤務を経て、離婚後に渡米。帰国後、2016年よりフィガロジャポン編集部のエディターとして勤務。2022年10月より、高校生の息子とともにパリへ移住し、フリーランスで活動中。
Instagram:@momoko____szk

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