35歳、シングルマザーのエディターが、パリに移住してみたら

フランスの学校生活は、ケースバイケースが合言葉。

こんにちは、鈴木桃子です。パリに来て6カ月、ようやく春めいてきました。待ちに待った太陽とあって、理由もなく外をうろつく日々。フランス人が日光浴したがるのがわかった気がします。

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私もサン・マルタン運河で日光浴が日課に。

さて、私が最近はまっていたことといえば、先月の日本アカデミー賞での安藤サクラさんのスピーチを同世代の友人たちに布教活動することです。子育てと仕事の悩みを率直に発言する真っ直ぐな姿勢に、胸がじんわりと熱くなりました。子どもに求められることと、仕事で求められること、その折り合いをつけるのは、どんな人だって難しい。そんな当たり前のことを改めて感じました。

パリに来て、すぐ、ひとりの韓国人女性と友達になりました。彼女は39歳、韓国では裁判官をしていたそうですが、8歳の息子をひとりで連れてきていました。移住理由を聞いてみると、「韓国では働きすぎて、母としての時間を持てなかったから」。キャリアの第一線から外れることはとても怖いけれど、いま子どもと一緒にいたいという気持ちを大事にできるのは素敵だなと思いました。

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フランスの学校は水曜日の午後もお休み。

その点、フランス人は仕事を休んだり、変えたりすることに対して、決断がとても軽やかだなと感じています。インテリアブランドのDebongoutやジュエリーデザイナーのSisi Joiaなど、最近出会った素敵なパリジェンヌたちも、母親になったタイミングで新しい仕事を始めている人が多いなという印象でした。

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感度の高いショップで販売れている、Sisi Joiaのアクセサリー。

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SNSから始まったという、インテリアブランドのDebongout。

育休や産休が整っているわけではありませんが、起業準備手当や失業手当など、フランスは給付金を受給できる仕組みが強い様子。母親だけに限りませんが、そういった軽やかな決断ができる背景には、日本よりもセーフティネットが整っているからなのだろうか、と思ったりしています。もっとセーフティネットがしっかり貼ってあれば、人生の選択肢を広げやすくなるし、その時々で大事なものを優先しながら生きやすくなるのにな、と思うのです。

と、フランスという国を日本と比べて興味深く見つめている毎日なのですが、パリに来ていちばん意外だったのは、フランス人って思ったよりきちんとしているな、ということです。
大変恐縮ながら、フランス人は時間にルーズで遅刻も厭わない、気分次第で休みまくるというのが、私の中のイメージでした。しかし、こんなに交通機関が麻痺しやすい国なのに、みんな遅刻せず、ちゃんと学校に来ている……!

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こんな幼い頃からデモに参加しているフランス人たち。

最初、息子は学校に遅刻しがちだったため、先生から呼び出しを受けました。フランスなら遅刻に厳しくないのでは、なんて思っていた私も甘かったのです。日本の高校で呼び出しなんてなかなかあることではないので、怯えながら出向くと、遅刻の原因や状況を聞かれました。生活が落ち着いていないこと、メトロに乗り慣れていないことを話すと、「それは仕方ないから、一緒に頑張りましょう」という、あっさりとした反応。

フランスという国は、いろんな場面で「ケースバイケース」だと聞きますが、それはルールがないということではなく、ルールに縛られることなく、個人に柔軟に対応する懐の深さがあるということなのかもしれないと思ったのでした。

加えて、この面談で、私がシングルマザーだとわかると、「ひとりですべてのことをやるのがどれだけ大変なのかわかる。私も彼の面倒を見るので心配しないでね。忙しいだろうから、もう呼び出しません」と、言ってくれた先生。あまりの暖かい言葉に、目を潤ませながら帰宅しました。

そして、その2週間後、息子が水筒を忘れて来がちなので面談に来るようにと、また学校から連絡があり、おー、フランス〜と思ったのでした。

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この時期のお楽しみ、ベルティヨンの限定イチゴパフェ。

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鈴木桃子

パリ在住エディター、ライター。1987年生まれ。早稲田大学在学時、20歳で結婚&出産。出版社勤務を経て、離婚後に渡米。帰国後、2016年よりフィガロジャポン編集部のエディターとして勤務。2022年10月より、高校生の息子とともにパリへ移住し、フリーランスで活動中。
Instagram:@momoko____szk

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