35歳、シングルマザーのエディターが、パリに移住してみたら

1年で見えてきた、パリ暮らしのリアル生活事情。前編

こんにちは、鈴木桃子です。初めてのパリの夏は日本よりも涼しく、バカンスで人もごっそり消えて、なんだか街全体がすっきりした印象。私はスウェーデン、イタリア、クロアチアなど巡っていましたが、その話はまた追々として、今回は、約1年を過ごして個人的に見えてきたパリ暮らしのあれこれをリアルな生活視点で綴ってみたいと思います。

① 家事情
いちばん気になるのが、やっぱり家事情。ここでは外国人なので、希望条件の揃った家を借りることはなかなか難しいです。引っ越しも簡単ではありません。フランス人は不動産や賃貸アプリで探している人も多いけれど、日本人は日本人用掲示板や友人のコネクションで借りている人も多い印象。フランス企業に勤めている人でも、内見の行列に並び、書類選考に勝ち抜き、家を借りるのに苦労したと話していました。苦労をして賃貸を続けるくらいならばと、家の購入に至る人も多いようです。地震が少なく、地価が下がりづらいのも決め手の様子。

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賃貸物件によって、家具付きや家具なしなど、条件はさまざまです。私が驚いたのは、照明器具が天井に設置できるようになっている物件が少ないこと。私の家も天井に設置できるタイプではないのですが、なぜか壁に照明器具用のスイッチが4つも設置してあるのです。どのスイッチを押しても、パチリとも光らない。大家のおじちゃんが疲れて工事を途中でやめたのかも? 謎は多いですが、追求しないことに決めました。泥棒が多いということもあり、どの家もエントランスが二重でセキュリティコードがあり、オートロックでセキュリティは厳重。それゆえ鍵をなくすと、非常に、非常に痛い目を見ます。また、アパルトマンの地下にあるCAVEという倉庫が付いてくるのも一般的らしい。地下が発達しているというパリならではで、ちょっとおもしろいなと思いました。でもスーツケース3つで辿り着いた私にはCAVEに入れたいものなどあるわけもなく、勿体ないけれど、ザ・放置です。

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② 食事情
パリは食の豊かな街。日本食レストランも豊富なので、ラーメンが食べたくて突然叫び出すような事態にはなりません。もちろんビストロやイタリアンは豊富だし、ほか、中華料理やベトナム料理、タイ料理、モロッコ料理など、我らがエスニックレストランも多くて、食の不満は皆無です。強いて言うなら、やっぱりお寿司は日本で食べたいくらい。

美味しいブーランジュリーも近所に一軒は必ずあるので、クロワッサンからエクレアまで気軽に買えて、甘党な私たち親子には天国。ワインやシードルも安くて豊富なので、東京から遥々うちに泊まりにやってくる呑んべえな友人たちにも天国な様子。またビオ系スーパーが至るところにあり、すべてビオ食品で統一するなど、その人の食生活に応じた選択肢が身近に用意されているのも良いところだなと思います。

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日本食スーパーや中華系スーパーも多く、日本食も作りやすい環境です。米や調味料、豆腐、納豆はやや高くても手に入るし、パン粉や片栗粉など、粉類はフランス製でも代用可能。でも量り売りの肉や魚は私的には買いづらく、特にパリに来た当初は薄切り肉問題と向き合う日々でした。肉屋で「薄切りにしてください!」とお願いしてみたら、「しゃぶしゃぶ〜♪」と陽気に返され、伝わった!とガッツポーズを取ってみたものの、せいぜい生姜焼きにしかならない厚みで登場。もはや自分で薄切るしかないかと思って、自宅で生ハムを切るための機械をネットで探したりもしたけれど、韓国系スーパーの一角で素敵に輝く薄切り肉たちに出合い、それから頻繁に通っています。食べ盛りのティーンエイジャーの胃袋を満たせるようになるまでの道のりは長かった……。

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③ 生活費事情
いまはユーロが高いため、当初想像していたよりも生活費が高く、それはもうとりあえず泣くしかない。でも、もしユーロと円が同じくらいのレートだった場合、パリの家賃の水準は東京と同じくらいなのではないかなと感じています。高いけれど、べらぼうに高いわけではないという感じでしょうか。パリのアパルトマンにはガスが設置されていないところが多く、水道代は基本的に家賃に込み。光熱費というと電気代くらいなのですが、アパルトマン自体が電気を契約していて家賃に込みの物件もあれば、物件ごとに電気を契約しなければいけない場合もあります。うちは物件ごとの契約なのですが、温水シャワーのリミットがあって、冬はティーンエイジャーとの喧嘩が絶えません。また電気代が上がっている昨今、暖房代も読めないので、アパルトマン自体で契約している物件が羨ましいです。

日用品は日本よりはやや割高だけれど、目を瞑れるレベル。ハワイで8ドルのトイレットペーパーに絶叫していたことを考えると、3ユーロのトイレットペーパーはとてもとても可愛いです。野菜や果物など、生鮮食品はマルシェやスーパーで量り売りが基本。欲しいものだけ買えるし、日本より安いなと感じることもしばしば。基本的に自炊するなら、比較的安価な食費で暮らせるのではないかと思っています。

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後半に続く。

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鈴木桃子

パリ在住エディター、ライター。1987年生まれ。早稲田大学在学時、20歳で結婚&出産。出版社勤務を経て、離婚後に渡米。帰国後、2016年よりフィガロジャポン編集部のエディターとして勤務。2022年10月より、高校生の息子とともにパリへ移住し、フリーランスで活動中。
Instagram:@momoko____szk

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