35歳、シングルマザーのエディターが、パリに移住してみたら

1年で見えてきた、パリ暮らしのリアル生活事情。後編

こんにちは、鈴木桃子です。前回に続いて、個人的に見えてきたパリ暮らしのあれこれをリアルな生活視点で綴ってみたいと思います。

④コミュニティ事情
フランスは、やはり個人主義の国だなと感じています。道を歩いていても、カフェでお茶していても、フランス人って人を気にせず、自分は自分というスタンスで生きている。ハワイで米袋を抱えて歩いていると、ジョークとともに声をかけてきて助けてくれる人が現れたりしたものですが、パリで米袋を抱えて歩いていても誰かに気に留められることはありません。テーブルや洗濯機も息子と自力で運びましたが、行き交うフランス人はスルー。とはいえ、駅の階段でスーツケースを持ち上げられず困り果てていると、ひょいっと一緒に運んでくれる人が現れるし、本当に困っていると察知すると助けてくれるから不思議です。

パリは英語が通じる人が格段に増えているため、英語だけでもある程度暮らせます。とはいえ、少しでもフランス語で会話すると、朗らかな対応に変わることが多いなと感じます。そして日本人も多く暮らしているので、困ったことを相談したり、愚痴を言い合ったり、そんな日々の息抜きも気軽にできる。語学や文化の下地があって、同じくらいの解像度で会話できる友人が近くにいるのって本当にありがたいこと。そういう意味では、パリは海外暮らしの孤独に陥らずに暮らせる場所だなと感じています。

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それに何より、パリは小さな街ながらクリエイティブな人たちが集まってくる場所。会いたい人に会おうと思えば会える、やりたいことに飛び込もうと思えば飛び込める。特に若い世代にとっては、そんなチャンスが広がっているなと思います。

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⑤学校事情
水曜日は昼まで、土曜日は授業なしが基本、夏休みは約2ヶ月、他に年末、2月、春休み、秋休みと、バケーションだらけ。昼ごはんは、給食や弁当持参、自宅に戻って食べるなど、さまざまで自由。校則の自由度が高く、身なりや持ち物で厳しく問われることはない。学校の宿題やテストも少なく、息子いわく、日本に比べると圧倒的にゆとりがあるスクールライフなようです。

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フランス語が母国語でない生徒の場合、公立の小学校から高校まで、用意されたフランス語補修クラスに入ることができます。国の教育機関で試験を受けて、その生徒の適性や住居地によって学校が決まります。私立の場合は自分で学校を見つけてアプローチする必要あり、年齢が上がるほどに入学できる学校が限られるなと思いました。

高校の後は、専門学校や大学、グランゼコールを目指す組、就職組など、進路が分かれていきます。でも高校卒業時に取得するバカロレアが進路に大きく関わってくるので、高校の時点で、ある程度進路が見えている子たちが多いんだろうなという印象。大学に入るための入試はないけれど、バカロレア取得のためにみんな必死で勉強しています。息子にはバカロレア取得のハードルが高いため、フランスで教育を受けてきた子たちとは違う形での大学への道のりを検討中です。

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⑥個人的な問題点
兎にも角にも、役所の手続き系が遅い。そして何度も提出を求められます。そのうちに、次の手続きがやってきて、ほぼ一年中何かしらの手続きを抱えて生きていました。あとは、やはり日本に比べると不便な点は多いのが実情です。宅急便がきちんと届かなかったり、適当にポストに突っ込まれていることが多く、あまり通販は使いたくない。アパルトマンの何かしらが故障しているのもしょっちゅうで、エレベーターは月に数回止まるし、部屋のシャッターが開かなくなったり、トイレが故障したり。そして修理に1ヶ月くらい時間がかかるため、不具合がないことがもはや稀。フランス人が「C'est pas grave(大したことではない)」と言う意味がわかってきました。

⑦個人的に好きな点
働く時は働く、休む時は休む。パリは、仕事と暮らしのバランスがとりやすい環境。街の中に公園やベンチが多く、散歩したり、ピクニックしたり、フランス人は素朴な日々の楽しみ方が上手だなと感じます。美術館やギャラリーのソワレ、ブロカント巡りなど、個人的にも好きなことがたくさん広がっているので飽きません。

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コロナも終わり、フランス留学を準備中の人も増えてきていると思います。どなたかの何らかの参考になれば嬉しいです。

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鈴木桃子

パリ在住エディター、ライター。1987年生まれ。早稲田大学在学時、20歳で結婚&出産。出版社勤務を経て、離婚後に渡米。帰国後、2016年よりフィガロジャポン編集部のエディターとして勤務。2022年10月より、高校生の息子とともにパリへ移住し、フリーランスで活動中。
Instagram:@momoko____szk

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