我想台湾

謎めく台湾ドーナツ

台湾ドーナツって食べたことあったかな?

このお店に行ってみたい、私のあんちょこを見せながら、家族に問うと、母が、それよりも四角いドーナツが食べたいと言った

「四角いドーナツって具体的にはどんなもの?」

「ええと、なんか四角が二つ、ついているような、でも丸い感じで、揚げたてがすごく美味しい」
母の説明はいつもこんな感じで肩透かしをくらう

キュビズムを地でいっている代表格とも言える存在だ

母の手料理は絶品で、どうにか伝授してもらいたいと思いレシピを聞くが、「醤油はだいたいこれくらい」とか、火入れのタイミングとかそう言った最も大事な部分は、全て曖昧なのだ

レシピを話す母を見ているとピカソのドーラの肖像を思い出す
こうして、姉と私の四角いドーナツの大捜索が始まった

タクシーの運転手さんも最近見ないねえといった返事ばかり 

文明の機器、検索にかけてみる
「四角い 二つ 台湾ドーナツ」

ヒットしない

何度か試した後なんとなく、双子、と末尾に入れてみる

雙胞胎というドーナツの写真が出てくる 出てくる

夜市かある屋台でしか食べられないと言うドーナツをめがけて、家族で大移動した

二枚の小さな生地をねじって揚げた雙胞胎は、揚げているとき、二枚の生地が少しずつ分離していくことから、中国語で「双子」を意味する雙胞胎という名前がつけられたとか

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いた!!

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路上の小さな屋台で、優しそうなおばさまが1人でドーナツをあげている

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揚油は澄んだ黄金色をして、美しい

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手際良く紙袋にいれてくださった揚げたてをその場をいただく

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ほのかに甘い、さっくさくでふっわふわのドーナツの美味しさは、大検索からの大移動の苦労も吹き飛ばすそれだった

サクッとしながらかみごたえがあり、中に行くほどふわんとしている

油切れもしっかりされているのか、思いのほかさっぱりとしていて、塩気と甘味のバランスが最高である

でも、おばさまのドーナツは双子じゃなかったので、二個食べて良しとした

そうそう、これよ、と満足そうに、顔を傾けて頬張る母

その横で同じ角度で頬張る娘

この日、母が子供時代の好物は、私の好物にもなり、娘の好物にもなった

そうして、四角くて丸い、二つの、揚げたてが美味しい謎のドーナツの旅は終わった

紹介したお店

双胞胎 甜甜圏 阿伯車攤

https://maps.app.goo.gl/6qZ4r7kvhq8XE3hw6

高橋れいみ

群馬県で台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、自然とともに育ち、幼少期に台湾で多くを過ごした際に民族的感覚を培い、思春期にロサンゼルスに移住した事でモダニズムやヴィンテージに強く影響を受け、2016年~R.ALAGAN(ララガン)を設立。日本のジュエリー職人と妥協しないジュエリーを制作している。

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