我想台湾

アツアツの麺線を探して。

「麺線」

たまには馴染みじゃない豆乳の店に行ってみようと、豆乳と油條、厚餅などで遅い朝食を食べ終えた後だった。

亜熱帯気候ならではの突然の雨。みるみる雲が厚みを帯びて、小粒だった雨粒が次第に大きくなってきた。スコールが今か今かと、始まりそうだ。

眠そうな娘を抱いたまま、濡れないようにと、持っていたガーゼケットを彼女にかけて、父と母とタクシーを道端で待っていた。

突然、小綺麗にした若い女性がスッと近寄ってきて、淡いピンクの傘をさしてくれた。

母と私が「ありがとう、でもお気遣いなく」と言っても、少し微笑んだまま「赤ちゃんは雨に濡れてはダメだから」と言って、私達がタクシーに乗り込むまで、ずっと傘をさしていてくれた。

母は得意げに、「台湾の人はね、心がね、あったかいのよ」と、スコールの中を走るタクシーの中で言っていた。

程なくして、阿泉麺線に到着し、お目当ての麺線を注文する。

店は屋台のような雰囲気で、店先で大鍋に麺線がぐつぐつと煮込まれている。いつもは特に注文しない臭豆腐も美味しいので頼む。

毎々多くの人で賑わっているので、店内で食べられたことはなく、いつも茶色いタイル張りの床の外の席だ。

雨はもう止んでいる。

雨の後は台湾のクラシックの街並みが少し蒸気を帯びていて、それもまた情緒が生まれ、とてもいい。

日本ではルーロウファンがメジャーだが、私たち家族は麺線が大好きだ。

レトロなプラスチックの赤いお盆の上に、小ぶりなお椀に盛られた、熱々の麺線には、細かく切られた香菜、台湾では刻んだニンニクも遠慮なく入れてくれる。

小さなレンゲで、そろり、一口食べると鰹出汁が押し寄せてくる。

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麺線は麺でありながら、レンゲでスープごとすくって食べる。長く煮込まれているはずの麺は、形も食感もしっかりと残っているから不思議だ。

スープにとろみがあるのでゆっくりと食べないと火傷してしまう。でもぬるいのはご法度で、一口目を躊躇うくらい熱くないと。

一緒に煮込まれた臭み皆無のモツの歯ごたえと旨味。

染みるう…

お椀中の麺線が半分くらいになったら、ウスターソースのような味の鳥酢と、辛い辛い辣椒油を入れる。それも味が引き締まって、また美味しい。

熱々を冷める前に急いで平らげた後は、
もう体はホカホカで温泉につかっているような気分になる。

麺線ってもはや麺泉なんじゃないの

私たち家族はいつも食べ歩きまくり、お腹いっぱいの状態で麺線を食べているので、心底お腹が減っている時に食べたらもっともっと美味しいだろうと思う。

足ることを知らねば、、、と反省しつつ
この美食の街では、また食べてしまう。

日本でも美味しい麺線にありつきたい!と
血眼気味に食べ歩いた。

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佐記麺線
沖縄アクセントの紳士が迎えてくれる。
キッチュなオレンジの容器でサーブされる
麺線は鶏肉、アサリともつ入りだ。
やや薄味でさっぱりとしている。例の鳥酢や、辣椒油、カツオニンニクで台湾感を増し増しできる。

今まで東京で食べた麺線の中では一番熱々!!
食べに伺った日は気温40度近くの猛暑日。暑い中、熱々をフウフウ、暑い熱い言いながら食べるのがいいのだ。

日本では珍しい台湾おにぎりも頂ける。すっかり娘の好物になった。

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台湾麺線
こちらはかつお出汁がかなり効いている。
日本人に合わせてだろうか、熱々ではなく
適温だが、濃い味なので食べ応えがある。
私は臭豆腐のセットでいただいたのだが、好きな泡菜が添えられていて嬉しかった。
黒酢と辣椒油で2順目を楽しむことができる。


阿泉麺線では、向かい側の席で眉間に皺を寄せて食べている男性達。

眉間の皺にはふた通り
不味くて顔をしかめる 美味しくて唸る
だとしたら、彼らのは後者だろう。

美味しいものと人の優しさはいつも心まで温かくしてくれる。

紹介したお店:
・阿泉麺線
No. 26-1, Xuchang St, Zhongzheng District, Taipei City, 台湾 100


・佐記麺線
東京都新宿区西新宿7丁目12-12 sagiya ビル 1 階

・台湾麺線
東京都港区新橋5丁目22-2 ル・グラシエルビル10 1階


台湾のお店の写真は台湾在住の姉が撮影しています。
Instagramや、ブログ「台湾で食べまくり」を書いているのでお暇な時に覗いてみてください。

 

高橋れいみ

群馬県で台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、幼少期に台湾で多くを過ごし思春期にロサンゼルスに移住。民族的な手仕事やモダニズムに強く影響を受ける。
2016年~R.ALAGAN(ララガン)を設立。亜魂洋才をコンセプトに掲げ、日本のジュエリー職人と高品質なジュエリーを制作している。

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