赤い薬膳台湾
台湾では赤は縁起のいい色とされ、春節が近づくと街は赤く染まる。
それらを目にすると、胸の奥が盛り上がるような、駆け出したくなるような情熱が湧いてくるのは、何故だろう。
赤子
血液
太陽
そうか、赤は生命の色なのではないか。
すっかり不養生して体を壊してしまったこの夏、私には反省と共に、「赤」が必要だ。
それを知ってか知らずか、後輩が「国際薬膳師のちゆきさんが作る台湾薬膳粥を食べに行きましょうよ」と誘ってくれ、学芸大学のカフェ「WR」さんで、毎週水曜日の朝だけ食べられるというそれを目掛けて行ってきた。
一目彼女にお会いして、その風通しの良さそうな話し方と佇まいに「ああ、きっとおいしい優しいご飯を作る人だろうな」と思ってしまった。
薬膳粥はお休み中とのこと、暑い夏に火照りすぎた体を冷ます赤い麺が食べられると言うのだから、これはいただくしかない。
しばらくして運ばれてきた赤い麺には、体に優しい要素しか見当たらない。
山芋、茹でたこ、キクラゲ、紫蘇……どれも私の好物ではないか〜
トマトを丁寧に裏漉しされたであろう美しいスープは一口いただけば、「あ、もう全快しました」と言いそうになる癒しの味。
先程の山芋、茹でたこ、キクラゲの奏でるそれぞれの食感の弾むような楽しさと、全体を引き締めてくれる紫蘇の香り、そうめんの完璧な茹で具合。ひとつゆも残さずいただいた。
玄米甘酒もいただき、すっかり顔色の良くなった私は、後ろ髪引かれながらWRさんの美味しいコーヒーもちゃっかり持ち帰った。
もう一つ、夢中になりすぎてなんだか怖い気持ちすらする薬味、それがこのPalindromeさんの薬膳辣油である。
昨年の冬に友人が紹介してくれたのだが、それからというもの切らさないようにオーダーしている代物だ。
いままで食べた中でも最も惚れ込んでいる辣油!
数種の新鮮な薬味、花椒の華やかさと切れ味、雑味のない油、程よく品のある辛さにすっかり虜になってしまった。いくら食べても後味はさっぱり。
おすすめのいただき方は、ラード、オイスターソース、すりおろしたニンニク、鶏ガラ出汁を絡めた油麺にパクチーとこの薬膳辣油を乗せていただく。
慌ただしい平日の昼間の一人の食事すら、鮮やかで豊かなものにしてくれるのだから、ありがたいではないか。
台湾の親戚に会うと決まって「ジャパーボエ?」と聞かれる。意味は「ご飯食べた?」
とにかくたくさん美味しいご飯を食べて、健康でいなさいと言う台湾の教えは、脈々と私の遺伝子に刻み込まれ、ついついララガンのスタッフ、友人や家族には「ご飯いっぱい食べて!」と言ってしまう。
日々の食事、食べ物から得られる英気や知恵をありがたくいただいて、薬食同源の精神をたずさえ、晩夏を乗り越えたいと思う。
“命は食にあり、食誤れば病いたり、食正しければ病自ずと癒える”
そうだ、赤は治癒の色なんだ。
CHIYUKI ARITA
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WR
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Palindrome 薬膳辣油
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