白い秋の台湾
五行思想では四季に色をつけて人生の時期を表現する
若々しい少年期を青とし、青春
燃えるような朱は青年期〜中年期、朱夏
澄んだ、冴えた白は中年期後期、白秋
黒に赤を混ぜた茶は晩年、玄冬
諸説あるものの、私はこの捉え方が一番好きだ。
秋といえば紅葉の赤を想像するのは日本人だけかもしれない。
物憂げな秋は白色なのだ。
そもそも白という色がとても好きなのだが、特に白い食べ物には目がない。
白い秋を食べ尽くそうと思い立った時に、国際薬膳師のちゆきさんも「白は秋の色だから」と、この秋は白い食べ物、「豆乳と台湾おにぎり」を出すとか。
真っ白な服に真っ白なエプロンという出立で、眩しい笑顔で迎えてくれるちゆきさんを目にするだけで、癒されてしまうのは私だけではないはずだ。
青磁とみまがう皿に添えられた小さなレンゲ、豆乳と台湾おにぎり、それに大粒の茹でピーナッツ。
豆乳のなめらかな旨みを楽しんだ後、さっぱりとした味付けの台湾おにぎり、と交互に食べる。
台湾おにぎりには、きゅうり、蓮根、卵、白胡麻、それに甘辛く煮た大豆ミート。
思い切り頬張るほどに英気をいただける。
残しておいた豆乳と、優しさ溢れる小皿のお酢を、私の親指ほどの小さなレンゲで、さっと混ぜるとシャントウジャンに。
何を最後に口に含んで、舌にかすかに残る味と鼻腔に残る香りを楽しむか……を考えるのが密かな私の楽しみなのだが、
この日はバロックパールのようなフォルムの大粒のピーナッツを最後に食べた。茹で加減が絶妙で、ピーナッツの優しい香りが柔らかに残っていた。
そういえば、下の娘が生まれた時、背を向けて寝ている姿を見て、まるで台湾ピーナッツのようだと思ってしまった。
愛おしいフォルムだった。
その若々しい成長ぶりを日々目にして、私もずいぶん歳をとったなぁと思っていたが、私はまだ朱夏にいる。
白秋に向けて天命を知り、玄冬でようやく完成すると言うことは、まだまだ学ばなければいけない事は多いようだ。
温まる白い秋を存分に食べてその準備をすることにしよう。
CHIYUKI ARITA
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