我想台湾

もうひとつの玄冬台湾甘味

玄冬の台湾甘味をもうひとつ、ふたつ

家族の健康を気遣って、台北に訪れるたびに姉が連れて行く苦い健康茶の店があった

あまりの苦さに一気に飲みほす苦茶の味はもう思い出せないが、客人や父母の苦渋に満ちた顔は絵に描いたようなそれで、可笑しくて思い出し笑いをしてしまう

私のお目当ては、苦茶の後に食べる白きくらげと蓮の実の甜湯だった

砂糖を水に溶かしたスープにほのかに甘い蓮の実と歯触りがいいきくらげが入っている

おやつながら心身ともに養生できる台湾ならではの甘味だ

最近では台北でもなかなかお目にかかれないが、西早稲田の「甘露」にそれがある

甘露は中国ベースの喫茶だが、台湾でも馴染みのある甘味がいただける

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古くは冬瓜糖で作られていたという甜湯は、甘露では氷砂糖だ

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白きくらげの他にクコの実、なつめ、アカシアの実と、桃の樹液を固めたという珍しい桃膠まで入っている

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それぞれの食感、独自の旨みをひとつずつ、温かくほんのり甘いスープと一緒にスプーンに乗せて、なんとも幸せな面持ちで、うっとりとしながら口へ運ぶ

ひとつ、ふたつ、みっつ...

飲み込むたびにごくりと喉が鳴る

香ばしくほんのりと甘い黒胡麻糊も好物で、糊という名にふさわしい、このドロっとした独特の舌触りがクセになる粥のようだ

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食した後は鏡を見ることをお忘れなく

あっという間に平らげ、心までも癒すという甘露オリジナルの養生茶をほうっといただいた

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甘露を教えてくれたのは中国人の友人だ

彼女と私の間には、甘味と養生茶、温かい会話しかなく、そこには人種や国境、政治における云々などは介在しない

甜湯湖に浮かんだ小舟で、ゆらりゆらりと二人佇んでいるような穏やかさに浸りながら、それぞれの国の行末を平穏なものとなるように願った

紹介したお店

甘露
www.kanro.tokyo

高橋れいみ

群馬県で台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、自然とともに育ち、幼少期に台湾で多くを過ごした際に民族的感覚を培い、思春期にロサンゼルスに移住した事でモダニズムやヴィンテージに強く影響を受け、2016年~R.ALAGAN(ララガン)を設立。日本のジュエリー職人と妥協しないジュエリーを制作している。

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