
台湾薬膳粥をつくる会
春の清水が 岩陰から湧き出し
静かに揺らめく
大地の鼓動は 大きなうねりとなり
水を揺り動かすが
水面は静寂そのもの
映画「青いパパイヤの香り」のクライマックスでムイが読み上げる詩
「光と風が通る家」で行われた、国際薬膳師である有田千幸さん主催「お粥をつくる会」にお邪魔した時のこと
千幸さんの熱心な薬食同源の教えに耳を傾けていると、どうしてもムイの詩と映像が頭の中で再生されてしまう
"眠れるミューズ"のような高貴な顔だち
穏やかたる表情
落ち着きに満ちた声
台北の漢方薬局では、「血虚」やら「気虚」に陥りやすいと診断される私のからだ
「虚」で満杯になっていた頃、千幸さんのお粥を食べた私は、深く深く感激したのだ
それで「薬膳粥を作る会」に飛び込んだと言うわけだ
千幸さんオリジナルレシピの粥は、私の知るクラシックな台湾薬膳粥とは違い、ブラッシュアップされたもの
思い出すだけで喉がぐるると鳴る
それほど美味しく、どうしても作り方を知りたかった!
おかゆと一緒にいただく薬膳の教えを反映させた春のおかずたち
菜の花とスナップエンドウのナムル、蕪と黄金柑の和物、ほうじ玄米茶の煮卵、ヴィーガン肉味噌、と腐乳
野菜は少しの手間をかけることでみずみずしく甦ること、虚を満たす食材の組み合わせ、中医薬膳学からみたお粥とは、などを丁寧に教えていただいた
千幸さんの良い「気」が込められた美食を皿の底が見えるまで、一滴も残さず食べ尽くした
目は開き
鼻は香りを思い出し
脾胃はふたたび流れはじめ
手足はすみずみまで温かさを取りもどす
私の心も清らかで透明感に溢れ
日々訪れる大きなうねりにも負けない
水面のように静寂そのものになった
「田に有る千の幸」
その名の通り、自然が恵む豊かな食材から得られるたくさんの幸を多くの人々に与える有田千幸さん
またいつの日か、心も体も「虚」で満ちてしまったら、千幸さんの薬膳会にお邪魔しようと思う
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