リアル『秘密の花園』を訪ねて
4月から9月の間、普段は一般公開されていないイギリス各地のプライベートガーデンが開放される、詮索好きな人間にとって非常にありがたいオープンガーデンというイベントが展開されます。毎年情報解禁の時期になると、今年はどのお庭が開放されるのか?とわくわくしながらウェブサイトをチェックするのですが、あの児童文学の名作『秘密の花園』の舞台になったお庭が一般公開されるって言うじゃないですか。しかも題名に倣っているのか、公開日は平日の二日間のみの13時から16時とかで難易度が高く、小学生の頃この『秘密の花園』の感想文で賞をいただいてステージ上で読まされた辛い思い出が蘇ります。
ケント州の南にある村 Rolvendenは聞いたこともない小さな村だけど、こんなど田舎にも歴史あるマナーハウスがドン!と存在するのが旧大英帝国の醍醐味。長屋門を彷彿させる立派なエントランスを潜り抜けると、これまた巨大なお屋敷がお出迎え。
作者のフランシス・バーネットは、長男が19歳で夭逝した後このグレート・メイサム・ホールに引っ越してきて9年の歳月を過ごしました。当時、荒れ果てていたこの塀の中の庭を手入れしながら、子供を失った深い悲しみを癒していたそう。
本の中では100部屋あるお屋敷、と描かれていた
そしてこちらが秘密の花園への入り口の扉。
塀に囲まれたそのお庭には数多くの花々が咲き乱れて、まるで楽園のような美しさに満ちていました。が、全体の構成はどこか雑然としていて、バランスや色の調和をあまり考えず自由奔放に庭づくりしたような風情。良い意味で素人っぽくもあるお庭です。
帰りの車中、一緒に行った友人と『秘密の花園』のストーリーの擦り合わせをしたところ、大分記憶が怪しくなっていたので40年ぶりに手に取ってみました。
両親を亡くしてもらわれてきた女の子と母親を亡くした病弱な男の子との二人がこのお屋敷の中で出会い、荒れ果てていた秘密の庭を再生させる過程で次第に癒されていく物語。作者はこの二人の子供に自らの姿を重ね合わせて描いていたって訳ですね。そして、東京のホテルで出会った所在ないアメリカ人二人が異国で心を通わせていく「ロスト・イン・トランスレーション」にも似てるな、と思ったり。
来年の一般公開の時は、本を持って行って花園の中のベンチに座って読もうと思います。
ARCHIVE
MONTHLY