イギリス総選挙どう思う？英国人6名に聞きました

７月４日にイギリスで総選挙が行われて、14年間政権を握っていた保守党が大敗して労働党が圧勝。キア・スターマー党首が、正式に新首相となりました。

このスターマー首相、車で20分のOxtedという街の生まれ育ち＆昔ロックバンドに所属してたそうなので、前のボリス（貴族）とかスナーク（億万長者）よりは親近感が持てる人。

チャールズ国王の戴冠式の時にもランダムな英国人をピックしてご意見拝聴したのですが、今回も市井の英国人の感想を聞いてきました。

質問内容は：

❶ 労働党の勝利に導いた要因はなんだと思いますか？

❷ 政権を取った労働党の今後の課題はなんだと思いますか？

❸ 現在のイギリスの状況において、労働党に何を期待しますか？

です。

ダイアナ　40代　ヨガ・インストラクター

❶ 国民が保守党に痺れを切らした結果でしょうね。１４年間も続いた政権で国は数十年来で最悪の状態になって、多くの人々が変化を求めていました。生活費危機は多数の人に打撃を加えているし、NHS（国民医療サービス）は史上最長の待機リストで崩壊寸前。社会福祉も教育にも改革が必要だし、経済も苦境にあります。どこを見てもお先真っ暗なのに、保守党は自らの利益しか考えていないようだった。リフォームUK党が保守党の票を割り、労働党に助け舟を出した感じですね。

❷ 上述の国家の壊滅的な状態と財政不足が労働党政権にとって大きなチャンレンジですね。多額の資金と時間と信頼が必要でしょう。

❸ キア・スターマーを首相とする労働党が国益を最優先して、英国経済を成長させて国民に希望を取り戻すことを願っています。

アーサー　40代　フリーランス

❶ 『労働党の勝利』というよりは『保守党の敗北』、と行った方がしっくり来る結果でしたね。労働党は、選挙運動中に国民を投票に駆り立てるようなことを故意に避けていた感じ。あれは「明の壺（Ming Vase）」と呼ばれた労働党のキャンペーン（『古くて壊れやすい壺』を死守するようにデリケートなアプローチ）のお陰で、第三の政党への票の分散化をさらに進展させて勝利に導いた。みごとな戦略だったと思います。

❷ 結果は大勝利でしたが、党の路線は期待を抑えるように計算されている気がします。その抑えたアプローチを持続させることができれば良いのですが。

❸ 過去10年間、知り合いの労働党支持者の間でずっと話題だったNHS、警察、住宅、そして地域の均衡化などのインフラの改善が見込めることを願っています。もうイギリス国民は「個性派政治家」にはうんざりしているので、キア・スターマー氏みたいに「フツーの人」が成果を上げてくれるのを期待しています。

ジェシカ　60代　公務員

❶ イギリスの選挙制度は過半数制度ですからね・・・スコットランドでのスコットランド国民党の衰退が労働党に議席を奪還させ、リフォームUK党が保守党からの票を奪った結果でしょうね。

❷ 経済成長の達成を試みる中で、労働党はイギリスの将来についてかなり楽観的な気がします。ウクライナや中東での戦争、そしてトランプ氏が再選された場合、スターマー氏は苦労するでしょう。

❸ スターマー氏は敏腕な政治家だと思っているので、イギリス政治が穏やかなムードになることを期待しています。

クライブ　70代　会社役員

❶ 一部の有権者を不安にさせたかもしれない社会主義的なメッセージを避けたのが功を奏したと思う。EU離脱投票の時と、その後の保守党の完全な無能力さも、労働党に票が傾いた一因だったと思います。

❷ 資金不足と公務員の怠慢さ、国際情勢の発展など。

❸ 控えめで、安定した有能な政党に期待しています。

メラニー　40代　教師　

❶ 14年間続いた保守党の統治、（保守党が遂行した）EU離脱選挙の時の混乱、など理由はいろいろあると思いますけど、労働党に政権が交代したからと言ってこれから政治がガラッと変わるとは期待できません。

❷ 労働党にしろ保守党にしろ、それほど権力がある訳ではなくて、実際の権力は官僚たちが握っています。どの党が政権を握っていても、その人たちはずっと同じ面子。実際に変革を起こすには時間がかかるので、労働党が複数期連続で政権を握らない限り変化が起こるとは期待できませんね。大企業やグローバル機関が政府の意思決定に与える影響は、労働党が政権にあっても保守党だった時と同じである現実にも向き合わないといけません。

❸ 労働党は本来、労働者階級の人々を代表するはずだけれど、そういう訳ではないです。富裕層に対する税金を引き上げて低所得者層により資金を分配する改革をすると言っているけれど、既に存在する税金と社会保障の負担の問題を解決しなければならないし。

ロバート　40代　教育者

❶ 労働党が勝利した要因の一つは、保守党が長期間政権を握り続けて、党内分裂していたこと。絶え間ない内閣の交代や投票なしでのリーダー交代に国民が本当にうんざりしていたと思う。

❷ 労働党の主な問題は経済全般です。大富豪や大企業がもっと税金を払うべきなのに、保守党は彼らにもっと税金を払わせることを推進しなかったため、億万長者が増えまくった。そして今、高齢化社会が進んで、税金を払わずシステムから多くを引き出す年金受給者が増えています。多くの高齢で健康状態の悪い人々が巨額の費用をかけて介護されているけれど、どの政党もこの問題について語っていません。政党がこの問題を話題にしないのは、年金受給者が主な投票者層だからな訳で。

❸ 労働党が富をより効果的に分配してくれることを期待していますけど、現実的には、彼らが最初の年に多くを達成することはないでしょう。秋の予算が彼らの計画の最初の兆候になるでしょうね。

保守党のボリス・ジョンソン元首相が「ＥＵ離脱こそが経済繁栄に繋がる」と喧伝して、イギリスがEU離脱したのが4年前。国際通貨基金（IMF）によると、イギリスの国内総生産（GDP）は今年更に0.3％減少する見込みで、経済的制裁を受けているロシアを含む主要20カ国地域（G20）の中で最も大きな落ち込みとなる見通しだそうです（日本は 1.5%増しの見通し）*。

茨の道が待っていますけど、若い頃にはThe SmithsやOrange Juiceのファンだったと言うスターマー首相のご健闘を祈って。

*参照BBCニュース