Butterdrop Diary 『ロンドン郊外のカントリーライフ』

イギリスのおうちNo.8 『築100年の日本庭園がある家』

深い森の中を蛇行する道を通り抜けて着いた、静寂に包まれた場所。そこには懐かしい母国の風景が、息をひそめて待っていた・・・!

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8年前、香港に駐在中だったキースが、英国に戻ってから家族で住む家を探していた際にネットで見つけたこの物件。

果樹園オーナーが所有する土地の一角にある、「1920年頃造られた1/2エーカーの日本庭園付きの家。」

その謳い文句に魅せられ、初見で一目惚れして購入を決断した。

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しかし、30年間忘れ去られていた家と庭は荒れ放題で、 最初の9ヶ月はキャンピングセットを使って家族4人で暮らしていたと教えてくれた。

「キッチンもお湯も暖房もなかったので、まるでキャンプ場のような状態だったんだよ。子供達二人は楽しんでいたけどね(笑)」。

荒れ果てていた庭は、これまたネットで探し出した日本人の庭師さんを雇って修復作業を開始。1970年代に建てられた時代遅れの家は骨組みだけを残して解体し、大規模な改築を行ったのだそう。

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当時の庭師一家が住んでいた家。改築時、日本家屋に近づけたくて屋根のシルエットにこだわった。

聞いてみれば、庭石から石橋、灯籠、ブロンズの鶴、そしてこちらの見事な茶室に至るまで、すべてはるばる日本から船に乗ってイギリスまで送られて来た特別な逸品!

しかも、当時最寄りの駅は20キロも離れているのに、山奥にあるこの庭園までわざわざ仮設の線路を敷設して資材や品々を運び込んだって言うじゃないですか。当時の技術や労力を考えると、まさに驚愕。

その際の運搬作業や建設には、第一世界大戦から復員した兵士たちが雇われていたという背景も、また興味深い。

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井戸もある!
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茶室から庭を臨んで。

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初夏には見事なアヤメも見れる。後ろには立派な太鼓橋も。

30年間忘れ去られていたこの庭に再び命を吹き込み、森の中のサンクチュアリへと蘇らせたキースの努力と情熱には頭が下がるばかり。ほとんど毎日を庭のメンテナンスに没頭している彼の取り組みは、単なる趣味にとどまるものではないみたい。

「この庭は、100年分の労力と歴史が詰まった特別な場所。私は所有者というよりも、遺産を引き継ぐ者として、この庭と共に年を重ねて行けたら幸せです。」

ギャンブル五月

ニューヨーク州立大学卒業後、ウェストヴィレッジのマグノリア・ベーカリー本店にて6年間腕を磨く。ロックバンドのメンバーとして2度の全米ツアー後、渡英。現在は、田園風景が広がるロンドン郊外はケント地方、『Garden of England(イギリスの庭)』に暮らす。著書に『ニューヨーク仕込みのカップケーキデコレーション』『イギリスから届いたカップケーキデコレーション』(SHC)。日本カップケーキアカデミー代表。
Instagram:@satskigamble

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