
焼きマシュマロとスモア
寒いというよりも暗い日々が続行中のロンドン郊外。
こんな季節の楽しみは読書と、暖炉の火に焚べて作る焼きマシュマロとスモア(S'more )に限る。
『Some more(もっとちょうだい!)』が縮まった呼び名のスモアは、焼いたマシュマロとチョコレートをグラハムクラッカーで挟んで食べる素朴なお菓子。1920年代に初めてアメリカのガール・スカウトの本に紹介された、キャンプ飯ならぬキャンプスイーツ的な存在だ。
『マシュマロは焼いて食べるもの』のコンセプトを知らずに育った私は、アメリカで初めて焼き立てのマシュマロを食して「なるほど、これがマシュマロの本来の楽しみ方だったって訳ね・・・」と目から鱗が落ちた。
その感動をアメリカ人の友人に伝えたところ、「焼いたマシュマロを知らない幼少時代なんて悲惨すぎる。セラピー受けた方がいいかもね」と真剣に同情されたことを今でも鮮明に覚えている。
生の乾燥芋と焼いた乾燥芋の違い以上に劇的に美味しくなること請け合い(茨城県民談)
ちなみに、「Some more」という言葉を聞いてイギリス人が真っ先に思い浮かぶであろうものはディケンズの『オリバー・ツイスト』でオリバーが発する
『Please sir, I want some more』(すみません、もっとおかわりをください)の有名な一節。
薄汚れた孤児院で(間違いなく美味ではない)お粥を求めるオリバーの切実なこのセリフと、焚き火で楽しむアメリカの高カロリーおやつの名前、対照的すぎてなんとも味わい深い。
我が家の子供達はグラハムクラッカーと板チョコのコンボを省いて、マクビティのチョコビスケットに挟んだ即席スモアをよく作るのだけど、見ているだけで歯磨きしたくなるヴィジュアル。
ウェットティッシュ必須案件
娘の好きなローストマシュマロの食べ方は、焦げ目を付けたマシュマロの外側の皮をすすすーっと外して食べる方法。


『マシュマロの殻』と呼んでいる
熱々の皮がカリカリ、中はトロッとしていてその食感の違いを楽しむのが醍醐味らしい。
失われた幼少時代を取り戻すためにも、ぜひマシュマロを焼いてその魔法のようなテクスチャーの変化を体験してみてはいかがでしょうか。
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