エールフランスでナントへ
長すぎる残暑に辟易しているうちに、あっという間に一年が終わろうとしています。
海外が解禁となり、2024年は3度ヨーロッパに行きましたので、今年のレビューとして振り返りたいと思います。
今回は、初夏のロワール編。もちろん、今回もエールフランスです。
それにしても、ロシアの影響でフライトルートが変更となり、ヨーロッパが一層遠く感じますね。
長距離フライトは睡眠補給の時間と、かつては、ひたすら眠り続けていたのですが、最近は、あまりの長さにさすが眠り続けることができなくなり、以前はほとんど見なかった機内オーディオにも手を伸ばすようになってきました。
そして、気づいたのが、エールフランスのオーディオプログラムの充実ぶり。
世界遺産などの旅関連が充実しているのはもちろんのこと、有名メゾンのバックストーリーなど、歴史フリーク&パリ好きな私の心をゆさぶるテーマを扱ったドキュメンタリーが多数ラインナップ。
「惜しいことをしていた。なぜ今まで気づかなかったのでしょう!」
これまで、寝るだけだったフライト時間を取り戻すかのように、飛行機に乗り込むやいなや、プログラムを確認しているほど。
前回は、「ゲランのアベイユとナポレオン三世妃ウジェニーの関係」を題材にしたものを食い入るように鑑賞。
ゲラン創業当時、香水をナポレオン三世妃ユージェニー皇后に献上、これをきっかけにナポレオン家の紋章であった蜜蜂を香水瓶に刻み、現在に至りますが、この1850年代はパリ万博が開催され、そこでグランプリを受賞したことを契機に、多くのブランド「メゾン」が誕生します。
有名なのは、バカラ、ルイヴィトン、エルメス等々。。というように、この激動のパリ近代化をテーマにしたものはとても興味深くて、録画として永久保存したいほどでした。
さて、今回は?
まあ!嬉しいことに敬愛するピエール・ガニエール様のドキュメンタリーではありませんか!
ヘッドフォンを付けたまま食事をすると、味覚が鈍るような気がするのですが、ガニエール様を眺めながらは格別。いつものポメリーも、一層エレガントな味わいに感じます。
ファッションセンスのよいシェフは、それがお料理にも反映すると、個人的に勝手なセオリーを私は持っているのですが、彼を知る人に聞くと誰もが口をそろえて言うように、彼は本当におしゃれなキュイジニエ。
以前、パリで偶然見かけたことがありますが、こなれたジーンズやブーツの履きこなしに、ラルフローレンの広告かと思ったほど!
世界的なスターシェフの中で、彼の料理は華やかなビジュアルと、奥深く複雑で官能的な味わいが特徴で、私はこれの大ファンなのですが、彼の言葉の中に、やはりそれを裏付けるような、L' émotion という言葉が何度も出てきたのが印象的。
"料理は美味しくなければならない。
そして 「美味しい 」ということは、感動のフィールドを広げること。"
"私は自分の料理に感情と知性を表現したい。
人はポエティックで感性を刺激するものを求めているのだから。"
シャンパーニュ、そして彼の料理哲学にも酔いしれつつも、その一方で画面を凝視しカメラに収め、真剣にメモを取り続ける私を見て、担当の乗務員の方は、
「マダムは食のジャーナリストなのですか」と。
ワインリストを見ると、他のエアラインに比べて、さすがエールフランスはラインナップが秀逸。
通路の向こうのムッシュは、食後酒を数種類、真剣な顔でテイスティングしていたり、美食家の国らしい光景が。
でも、私はデゼールのオペラに至るまで、今回もシャンパーニュだけで通します。
ガニエール様の余韻に浸りながら、映画鑑賞に続き、いつの間にか爆睡。
あとどのくらい?
気づいたら、迂回ルートを飛行しているようです。
吸い込まれそうなほど白銀の世界。
真下に広がるグリーンランドはため息が出るほど美しくて圧巻。ですが、この景色を見なくてすむような日が一日でも早く訪れてほしいし、そうあるべきですね。
この日は、最終便のナント行に乗り継ぎ、ホテル到着は深夜になる予定。
到着前のリフレッシュメントはパスし寝ていたいので、再びシャンパーニュタイム♡
「シャンパーニュがお好きですね。他の日本の方はワインも召し上がりますが、マダムのような方は初めてです。」
「もう少しいかがですか、きれいなグラスでお持ちしましょう。」
「マリアージュも楽しんでくださいね!」
熟したパパイヤも添えて持ってきてくれました。先ほどよりグラスも冷えています。
私がエールフランスが好きな理由の一つは、美食家の国ゆえ、食のタイミングや道理が本能的に身についているから。
それらは訓練で得たものではなく、DNAにある自然なホスピタリティなのだと、乗るたびにそれを実感します。
もちろん、日本の会社のようなディティルでポライトなサービスは素晴らしく世界に誇れる財産。もっと年をとったら、痒いところに手が届くような懇切丁寧な対応を、この上なくありがたく思うことでしょう。
ヨーロッパのエアはラフで抜けも少なくないけれど、私も外資系出身ということもあり、なんとなく波長が合うような気がするのです。
この先の国内線でも、そんな楽しいエピソードが続き、心地よい旅のスタートとなりました。
次回もお付き合いください!
ARCHIVE
MONTHLY