フランス人間国宝展へ
デコラトリスの多賀谷洋子です。
気づいたら、今年もあと二か月。そろそろ、今年一年間をふり返る時期になりましたね。
「下半期で最も印象的なアート展は?」と聞かれたら、迷わず「フランス人間国宝展」と答えるほど、この秋、マイブームとなったアートについてお書きしたいと思います。
テーブルウエアや家具はもちろんのこと、布、紙などの素材フェチな私の心を大きく捉え、琴線を揺さぶり続けたこちらの展示は間もなく終了。名残を惜しみながら綴ります。
こちらの展示は、上野・東京国立博物館 表慶館で、9月から開始し、今月26日(日)までとなっていますが、私は期間中二度出向き、それでもまだ飽き足らず再び伺いたいと思っているほど。
華麗な美と、アルチザン魂とでもいうのでしょうか、その卓越した技術力に深い感銘を受けたので、まだいらしたことのない方の為に、少しですがご紹介させて頂きたいと思います。
さて、フランス人間国宝(メートル・ダール/Maître d' Art)は、日本のいわゆる「人間国宝」(正式名称 重要無形文化財の保持者)認定にならい、伝統工芸の保存・伝承・革新を旨として、フランス文化省により1994年に創設されました。(公式サイトより抜粋)
今回の展示は、この「メートル・ダール」の認定を受けた13名の作家と、まだ認定はされていないものの、素晴らしい作品を制作している2名、合計15名の作家を紹介する世界初の展覧会で、私は光栄なことに、オープン前日のプレヴューで、作家の方々によるガイドツアーに参加させて頂くという、大変贅沢な機会を頂戴しました。
さて、下の展示室いっぱいに並べられているのは、陶芸家ジャン・ジレル氏の陶器。
暗闇に、マットな輝きを放つ無数の曜変天目は、まるで天空に浮かぶようでなんともいえず幻想的
特に入り浸りたいほど好きだったのは、傘と扇の展示室。
下は、ミシェル・ウルトー氏の傘。
元コスチュームデザイナーだそうで納得。彼が生み出す傘は、洗練された素材の「遊び」が印象的で、且つ限りなくエレガント。
エルメス、イヴ・サンローランなどのハイブランドはもちろんのこと、映画界や王族の顧客を多く持つだけに、ディテールもとても凝っていて美しい。
この世界感、どちらを見ても私のテイストで、一つずつじっくり見ると、この部屋だけでも数時間費やしてしまうほど。
こちら、何だと思います?
ネリーソニエ氏の羽根細工です。花びらや金魚のうろこなどのパーツを全て羽根で見立てているとは、こちらも気の遠くなるような細かい作業。
フランスでは、羽根細工という分野が古くから確立されており、彼女の元には、現在でもジュエリー、ファッションなど世界の高級メゾンからのオーダーが後を絶たないのだとか。
上は、イヴ・サンローラン、コルビュジェ等の著名人に愛されてきたクリスティアン・ボネ氏の鼈甲眼鏡。
現在、入手困難となっている鼈甲を贅沢に使い、その滑らかな質感に吸い込まれそうです。
他にも革、扇、壁紙など、幅広いジャンルの工芸品が集い、それらはどれもフランスらしい気品とエレガンスに溢れていて、建築家リナ・ゴットメ氏が手掛けた展示空間のセノグラフィーも素晴らしい。
フランス工芸品の今をパノラマティックに体感、まさに「洗練」という名の温泉にでも浸かり続けているような心地よい刺激に包まれる時間でした。
素材やファッションがお好きな方は特に楽しんで頂けるのでは?百聞は一見に如かず、是非ともお出かけを!
【会期】2017年11月26日(日)まで
【会場】東京国立博物館 表慶館
【公式ウェブサイト】http://www.fr-treasures.jp/
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