Dance & Dancers

平山素子が執り行う"異種交配"とは!?

新国立劇場のリハーサル室へ出かけてきた。
目的は3月25日、26日、27日の平山素子新作公演の取材のため。
素子さんは、コンテンポラリーやバレエの公演会場でたびたびお目にかかる。
振付家・ダンサー、大学の准教授として活動中の多忙な身でありながら、
タフだな、勉強熱心だなと感心させられる。と言うのも、日本のダンサーや振付家は
その肩書だけで生計を立てていくのはなかなか難しい状況にあることが多いので
ダンスのクラスレッスンなどをたくさんこなさないとやっていけない
という実情があるからだ、ああ芸術家っていつの時代もタイヘン......。

そんなスーパーウーマン素子さんにふさわしく、3月の新作のタイトルは『Hybrid-Rhythm &Dance』。
素子さん自身が選出した、異なるタイプの5人のダンサーを迎えて
作品作りが進行中だ。

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迎えるダンサーは、NDTやNoismを経てフリーになり、テクニックの高さ・表現力の面でも日本のコンテンポラリーダンサーとして今脂がのりに乗っている小㞍健太、イギリスのランバート・スクール留学、後にアクラム・カーン、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック他注目の現代振付家の作品に多数参加している鈴木竜、ブロードウェイミュージカルからマシューボーン、近藤良平作品まで幅広い作品でキャリアを積む皆川まゆむ、筑波大学で平山素子に師事、現在山田うんをはじめ多彩な振付家の作品に参加しながら、平山作品には欠かせない一員にもなっている西山友貴、そして国内外数々のダンスバトルで優勝してきたストリートダンサー、OBA。

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左から、小㞍健太、鈴木竜、皆川まゆむ、西山友貴、OBA

さらには、スペイン・バスク地方の伝統打楽器『チャラパルタ』とアイヌ民族の唄『ウポポ』の生演奏に導かれるように、ダンサーたちは"道"をイメージしたステージ上で動きの連鎖をつなげていくのだそう。

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左:『チャラパルタ』の演奏風景。右:アイヌ民謡歌手、床絵美。

つまり、
異なるキャリアを持つダンサーたちと、日本のアイヌ民族、スペイン・バスク地方の文化、
多彩なスキルが交配され誕生するのがこの作品、というわけだ。
平山素子、といえばかつてHRカオスで活躍し、柔軟かつ強靭な身体性とまるで鋭利な刃物を思わせる高いテクニックでセンセーショナルな作品を創ってきた人。
その彼女が、こう言うのである。
「踊りのうまい人はたくさんいる。でも、なぜか踊り心が備わっている人は少ない気がしています。すごいテクニックを披露されても、いまひとつドラマや感情が見えない。私にもかつて、"すごい"テクニックを目に見える形で優先させていた時期があった。けれども今はテクニックより踊り心を醸し出したいと思うようになってきたんです」
まるで乾いた空気をしずくにしてリズム演奏しているようなチャラパルタの音が
ポコポコポロポロ、と広がっている。乾いた南欧の空気を思わせるそんなリズムの中、
ダンサーたちは汗を流している。

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リハーサル風景。

「今回、土着的な音楽と生演奏でコラボレーションしようと思ったのも、彼らの音楽が非常にシンプルでありながら、演奏する彼らの存在感、人間の底力のようなものを感じさせるものだったから。その演奏から5人の個性を魅力的に際立たせて見せたいと思っています」
と言う素子氏、なんかちょっとこれまでと違う境地に近づいているみたい。
「今までは、ダンスって非日常、特別なものを見せなければならない、と思ってきました。もちろん、観客の目がある以上、洗練度の高いものを達成しなければなりませんが、チャラパルタのユニット・オレカTXや、ウポポの床絵美さんと接していたら日常から切り離すのではなく、日常に寄り添っているものを大きな奇跡にまで深化させる、そんなことを共有できる作品を創ってみたくなりました」

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リハーサルは、素子さんが提案したことを各人が自分のやり方で返し、
それを受け取った素子さんがさらなる提案を返す、という問答形式で進められていく。
作品には素子さん自身も出演するので、男女6人が相手を変えながらパートナリングを展開したり、ソロの場面もある。
「特に役付けがあるわけではなく、個性が巡っていく感じです。バラバラな身体性の散らかりっぷりや、それが組み合わさったときの万華鏡のような見え方などを楽しんでほしいです」

この日は、西山友貴、OBAにはスケジュールの都合で会えなかったのだが、
実際異なるスキルのダンサー同士がパートナリングを組むと、
面白いリアクション、ムーブメントの連続なのだという。
「(小㞍)健太君と(鈴木)竜君の二人が、初めてOBA君と組んだ時はものすごく面白かった。ふたりともバレエ、コンテンポラリーダンスのスキルの人だから、ストリートダンスのOBA君とは筋肉の使い方や身体の感覚がそもそも違うんです。普通だったら肩のあたりを押したら、上半身か腕が反応して動くところをOBA君はまったく動かないか、身体をひとつの塊にしてバーンとまるごと倒れちゃうとか、ふたりには全く予想もしていなかった反応で返してくる。だからこの3人、最初は大丈夫かな? ってくらい互いに受け入れられていなかったんですけれど、ここへきてようやく、互いを受け入れ合えるようになり、身体での会話が成立するようになってきましたね」

公演は3月25日(金)、26日(土)、27日(日) 、
新国立劇場中劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150109_006136.html
Hybrid-Rhythm &Dance
シンプルな民族音楽と異なる個性のコラボレーション。
空気が緩み始める春、心を解放するために劇場へ足を運ぶのもいいかも知れない。

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