Dance & Dancers

Dance & Dancers/浦野芳子

熊川哲也はじめ、Kバレエのスターたちで綴る『トリプル・ビル』

 

 

Kバレエ カンパニーが、この7月16・17日に2日間の特別公演を行うことが決定!

演目は、ローラン・プティ振付『アルルの女』、フレデリック・アシュトン振付『ラプソディ』。いずれも20世紀の巨匠が生んだ、洗練された作品だ。

しかも『アルルの女』では、久しぶりに熊川氏自身が踊るのだそう。

そして三作品目は熊川哲也振付『シンプル・シンフォニー』。2013年に日本で初演された作品。

つまりこのトリプル・ビルは、「熊川氏自身の踊り」と「熊川氏の作品」を同時に楽しめるまたとない機会でもあるのだ。

 

 

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↑熊川哲也氏

 

まずは熊川哲也氏本人からのメッセージ。

「いずれも、一度は見ておきたい素晴らしい傑作です。それらを、Kバレエが誇るプリンシパル6名を筆頭とする精鋭ダンサーたちの共演、そして古典バレエとはまた違った

魅力の詰まったこのプログラムを通し、現代バレエの奥深さや可能性を余すところなく感じていただけることでしょう」

順番は、『ラプソディ』⇒『シンプル・シンフォニー』⇒『アルルの女』(抜粋)。

「振付家も個性も違う作品をひとつのステージに乗せるのは、レストランがディナーのフルコースを組み立てるのに似ている。組み立て方を誤ると、それぞれの作品の魅力が

うまく伝わらないからね」

 

まずは、『ラプソディ』。そのアブストラクト(抽象的)な世界からは、バレエのピュアな輝きを感じてもらえるはず。

この作品は、熊川氏がプリンシパルとして踊っていた英国ロイヤル・バレエ団が、エリザベス皇太后80歳の誕生日の祝宴で披露されたガラ公演のために、

創作された作品。初演はレスリー・コリアとミハイル・バリシニコフが踊っている!

「この作品は当時西に亡命してきたミハイル・バリシニコフをオリジナルキャストとして振付られた作品です。難しい作品であるため、その後は上演される機会も少なかったと

聞きますが、それを僕が21歳の時に踊り、翌日の"イヴニング・スタンダード"の一面を飾ったという今でも思い入れのある作品です」(熊川)

 

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  『ラプソディ』(C)Jin Kimoto

 

今回この作品に初めて挑むのは、注目の新人矢内千夏&山本雅也。

この5月、『白鳥の湖』で鮮烈な表現力を披露した矢内千夏に、作品への取り組みを尋ねた。

「アシュトン作品は未知の世界でした。最初、『ラプソディ』の速い音楽や細かなステップはついていくことで精いっぱいでしたが、一旦それらが体に入ると不思議と音楽に乗れて動き易い!

と感じられるようになったんです」(矢内)

矢内さんは19歳という若さだが、周囲を驚かせずにはいられないのはその吸収力の高さ!

「『白鳥の湖』のような全幕作品とは異なり、物語や役柄がないため"自分"のまま踊らなければならない、その一方で、パ・ド・ドゥではしっとりと愛や喜びを表現する場面もあります。

ディレクター(熊川)からのアドバイスが今とても後押しをしてくれています。」(矢内)

 

 矢内千夏に指導する熊川哲也、リハーサル中↓

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ディレクター(熊川氏)からの指導を受けると、すっと踊りやすくなるとか。吸収力の高いこの若い時代に、一流から教育を受けるということは大切だ。

抽象的な作品に取り組むのは初めてというから、学ぶことも多いだろう。

「『白鳥の湖』では、音楽を聴いてイメージすることができるようになり、真面目一辺倒だった自分が少し変わりました。『ラプソディ』はの曲自体が明るいので、

楽しんで踊ることができそうです。山本雅也さんとはお互い新人同士!日々ディスカッションを重ね、本番まで踊りを磨いて、爽やかで小粋な、『ラプソディ』を

お見せできればと思います」(矢内)

 

『シンプル・シンフォニー』では6人の気鋭のダンサーが、スピーディにフォーメーションを変えながら、多彩なテクニックを披露。

 

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『シンプル・シンフォニー』(C)Hidemi Seto

 

「音符が動き出したらこうなるのだろうな、と考えながら、一音も取り逃すまいと、振付けに取り込んだつもりです。経験豊かなダンサーを揃え、超絶技巧をたっぷり盛り込んだ、

密度の濃い作品にしています」(熊川)

この作品の中心で踊るのは、昨年ヨーロッパより日本に拠点を移し、Kバレエ カンパニーでゲスト・プリンシパルとして活動している中村祥子さんと、遅沢佑介さんだ。

「シンプル・シンフォニー」は熊川スタイルの"いい味"が出ている作品だと思います。

振付家によって様々な踊りのスタイルがあり、初めて踊る際にはそのスタイルを体にいれることから始まりますが、これまで熊川版の全幕バレエを踊ってきていますから、

自分の中に熊川スタイルはすでにあると思います。それでもバランシン作品のように、ダンサー泣かせというか、全然シンプルじゃない!きつい!と思いつつも(笑)

自分の限界を乗り越える、という気持ちで踊っています。乗り越えることがダンサーを成長させますから。それは、振付家の思いに応えたい、振付家の思う作品にしたい

というダンサーの喜びでもあるんですね」(中村)

あの祥子さんが言うのだから、相当にきついのは間違いない。

「初演(オリジナル)上演の時からこの作品に関わっていたかったな、と思いました。そのほうがたっぷりと振付家と時間を共有できますし。振付家へのリスペクトを忘れずに、

作品を生かすべく精一杯踊ろうと思っています」(中村)

 

 

『アルルの女』は、ゴッホの絵画を背景に、婚約者がありながら魔性の女に魅かれていく青年の苦悩と葛藤を描いた作品。

狂気を含んだ若さの暴走を、熊川氏がどんなふうに表現して見せてくれるのか、とても楽しみ! 

しかも、多くの観客が熊川氏が舞台に立つ日を待ちわびていたはずである。

「コースメニューのしめくくり、甘くてビターな余韻を、皆さんに味わっていただきましょう」

さすが、スター・熊川哲也!!

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↑アルルの女』舞台写真 (C)Hidemi Seto / DANCE MAGAZINE

 

熊川氏の相手役を務めるのは久しぶりです、という相手役の浅川紫織さんは、次のようなコメントを寄せてくれた。

「ディレクター(熊川)と組んで踊る機会は少ないので、すごく新鮮に感じています。

何年も前に初めて一緒に踊った時には、まだ教えてもらっているという感覚が強かったのですが、今は年齢や経験を重ねたぶん、アーティスト同士、良いものを求め合って

リハーサルに臨んでいるように思います。ディレクターが放つオーラや仕草には圧倒するものがありますから、それに応えられるものを、出し尽くしたいですね」(浅川)

浅川さんの、きりりとした存在感が、どのような魔性の女として表現され、熊川氏を狂わせるのか、楽しみである。

「プティの作品には慣れないステップもたくさん。とても感情重視で演じることの大切な作品だと思います。一旦ステップが体に入ってしまった今は、"今、踊ること"に意味を

感じます。今だからこう踊りたいと思えるというか・・・・・・やりがいもありますし、勉強になります。とても新鮮な気持ちで踊っています」(浅川)

 

色彩感覚豊かな演出とともに味わう、熊川哲也氏の審美眼が光る三作品。

2日間の贅沢である。

●7月16日(土)17:00、17日(日)14:00

Bunkamuraオーチャードホール

http://K-ballet.co.Jp

 

 

 

 

 

 

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